劇場公開日 2023年4月21日

  • 予告編を見る

「切ないなかいろいろ考えました!」高速道路家族 mamikoさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0切ないなかいろいろ考えました!

2023年5月16日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

どうして幼い子どももいる家族がこんな生活をすることになったのか?とまず思いました。その背景には主人公のギウが濡れ衣を着せられ、働くことさえできなくなっているという社会的抹殺の状況、トラウマになるような酷い仕打ちなどの理不尽な状況があるようで、こんな現実があってはいけないと思うと同時に、社会のありようや公の役割・システムなどを考えさせらました。
公の介入・福祉の介入や支援はいったいどうなっているのか。映画に出てくる行政の人は取り締まる・罰するだけの役割しか果たしていなかったよう..ですよね。行政のお粗末さは、この生活がもたらす2人の子どもへの悪影響からも言えること。トラウマと対峙する父と施設育ちの母親には、この生活しかなかったのだと思われましたが、少なくとも父親が詐欺で拘束された時にそのような家族の状況を把握したならば、行政としては当然福祉部門と連携して公的支援に繋ぐべき、そうなるはずなのに...と思ってしまいました。映画はこのようなセーフティネットの不十分さや行政の意識の低さも訴えているのかもしれないと思いました。
また、母親と子どもたちを助けたヨンソン夫婦の存在から、周りの人たちの関心や助け合う行動の重要性も痛感しました。ヨンソン夫婦にもこうしてくれれば..と望んでしまう思いもありますが、彼らは子どもを亡くした悲しみの渦中だったわけだからそれは難しいことですね。私たち自身が見て見ぬふりをしたり見過ごすことがないように..相互扶助の意識やとったら良い具体的な対応についてもっと啓発していくことも必要だと思いました。
一方、心身ともに追い込まれた状況のなかでもギウ家族が助け合い寄り添っている姿に、”人と人の繋がり""家族の繋がり"も感じることができました。人と人との繋がりや信頼、愛が持つ力を感じるとともに、その脆さも感じました。脆さは妻ジスクが夫ギウを突き放す気持ちや、ヨンソン夫婦が同じ苦しみえを背負っているのに気持ちがすれ違い、責め合ってしまう姿からです。両夫婦が分かり合って苦難を乗り越えていくには何が必要なのかも考えさせられました。
そんなこんなのことが集約されたのが結末なのかなと。結末がいろいろにとれるのは、答えは私たち観客に投げかけられているということで、それもいいなぁと思いました。

mamiko