「考察して完成する作品」aftersun アフターサン ポールさんの映画レビュー(感想・評価)
考察して完成する作品
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終始浮き沈みのある鬱気味な父。腕の怪我も未遂の後かもしれない。
おそらくこの世を自ら絶ったであろう不穏な伏線。
可愛い娘の存在すらも、すでに彼にはプレッシャーだったようにも思う。
大人になったソフィは少なからずトラウマを抱えながらパートナーと子供を育てている。
そしてソフィ自身も産後うつかもしくは、養子で育児ノイローゼ気味じゃないかと思う不調な様子。
もしかしたら父が亡くなってから精神的な病を患っていたかもしれない。
そんな中でギリギリ状態の父との思い出を振り返る。
自殺してしまった父をどうすることもできないけれど
単純じゃない世界を知り大人になった今、より父の気持ちに寄り添えるタイミングで、ギリギリ状態で向き合ってくれた父との思い出に浸っていたのかなと思う。
鬱というおそろしい病の最中に、彼の心にある僅かな他者への愛で数日間耐えて。
映像で見るより遥かに壮大で勇気ある愛だったと思う。
バカンス中での不穏な音楽も父の心のなかと思うとまた苦しい。
余白を与えて削ぎ落としまくり、演出だけで観客に考察させて完成される作品はやはりすごいですね。
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