「パパとの最初で最後のバカンス」aftersun アフターサン 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
パパとの最初で最後のバカンス
笑顔のパパの心の奥の、傷や哀しみを繊細に映す。
11歳の娘のソフィと30歳の若きパパのカリムが、
過ごす海辺のバカンス。
ツインの部屋を頼んだのに何故かベッドはひとつ。
簡易ベッドに寝る優しい父親カリム。
あと2日で31歳だから、パパになったのは20歳の頃。
今は別居しているソフィとちょっと長いバカンス。
ハキハキして明るいソフィ。
バカンスなのに右手首を骨折してギブスのカリム。
それでも腕立て伏せや太極拳をしている。
パパは時に情緒不安定で肩を震わせてむせび泣いたり・・・
何ともなく“自殺でもしそう“で不安感が漂う。
20年後もパパは生きているのだろうか?
空と海やプールのブルーが溶けていて、境目が曖昧だ。
空だと見ていたら海の中に変わっている。
ハンディビデオカメラでお互いを写っこしてる。
ブレブレだし、
日焼け止めを塗ったりと、プールで泳いだり、
脈絡がなく時間はゆったり進む。
「今まで生きてきた中で一番楽しい日々」
ソフィは何度も言う。
パパと過ごすスキューバーダイビングは最高の最高。
同年代のマックスとも仲良くなるソフィ。
パパが帰った後も酒場に残り、お姉さんたちの夜遊びを
羨ましそうに見ている。
鍵を貰ってなかったっけ・・・
パパは寝ていて気づいてくれない。
バカンスも終わりに近づく。
パパの誕生日。
周りの観光客にも声をかけて、
「彼は良い人、みんなそう言う」の歌を大合唱。
その夜、パパは号泣する。
不甲斐ない・・・そう思ったんだろうか?
クィーンとデヴィッド・ボウイの
「アンダー・プレッシャー」がかかる。
愛・・愛・・愛
“もう一度チャンスを“
“これが最後のダンス“
この曲がパパの気持ちを代弁してくれるね、きっと。
パパにとってこの世は、生き難い・・・
そんなことが、20年後の今のソフィには、
よく分かる。
・・・の、かな?
監督の自伝的な内容らしいですね。写真の雰囲気から、同性間恋愛の方に私でも見受けられます。
そこからなのか、父カラムも同性愛の人でそのことに悩み‥‥というレビューがあります。20年前だとそれで悩み自○になるのか?
ちょっとわかりませんが。
共感いただきありがとうございました。
今のソフィがみつめる、むかしの父と自分。
その描き方があのビデオ画面から滲むような切なさを味わったのは鑑賞後少し後になってからでした。
誰しもが、帰れない過去の時間をもち、大人になりながらわかっていくものがある。
なんだか人生の美しさや儚さらやら望郷やらで胸がいっぱいになりました。余韻に浸る作品でした。