「THIS IS OUR LAST DANCE!!」aftersun アフターサン 冥土幽太楼さんの映画レビュー(感想・評価)
THIS IS OUR LAST DANCE!!
本作の予告や前半を見た感じでは、ソフィアコッポラのSOMEWHEREを彷彿とさせ、父と娘が過ごす短く淡い夏のひとときを切り取ったような作品かと思っていたが、とんでもない。
まさに日焼け跡に塗るオイルのようにヒリヒリとしていて、優しいようで痛い作品である。
ひとまず、淡くノスタルジックでヴァカンス気分にさせるカメラワークが見事で、
ゆったりとした緩慢な旅行の休日の、
その一つ一つの細部が粒のように際立つ感覚を我々に与える。
それは、照りつける太陽、他人の肌の産毛や艶やかさ、くっきりとした日焼け跡や汗で肌に張り付いたTシャツ、プールの匂い、旅先で浮かれ気分の人々の残像、これらは極めて個人的な思い出であるにも関わらず、誰もが体験してきた長く退屈なあの頃の夏休みの感覚を
追体験させる。
それはホームビデオというよりは、それらを通して一つ一つの記憶をなんとか思い出そうとしているかのような作りだ、
つまりホームビデオを通した11歳の瞳を通した現在(31歳)の瞳があの頃の父をみつめているのだ。
おそらく彼女にとって父とは、
永遠にあの頃の姿のまま暗闇に消えていってしまったのだ、それが度々現れる不穏な映像やラストシーンで明らかになる。
度々暗闇に消えては浮かぶ父の姿。
その背中の孤独感。
また、度々挿入されるクラブシーンが忘れられない。
大人になった彼女の声は父には届かない。
愛していると何度も何度も泣き叫ぼうとも、
全て混沌と騒音の中に掻き消され、抱き合おうとしても引き剥がされる。
おそらく彼女は父との記憶を心の奥深くに封印しながら長い間過ごし、ようやくあの頃の父と同じ歳になり、親になったタイミングで意を決心してビデオを再生したことが伺える。
そしてそこまでしなければならなかったようなことが、この映像の後で二人の間に起きたことも、なんとなーくでわかるのだ。
そういうことを、何一つ説明することなく
描ける脚本や演出の手腕が際立つ。
昨今の説明過多な作風とは真逆で、
処女作にして極めて洗練された出来である。
また、鬱の人間の感情の機微をちゃんと描けていたのがよかった、私も個人的に似たようなことがあったような感じなので、この欝の人間のリアリズムには感心した。
そして問答無用で名シーンの、アンダー・プレッシャーで踊るシーンと、ラストのカメラのパン。、この2つのシーンだけでも名作であることは確定した。
フレディが give love!!give love!!と叫び、ボウイがTHIS is our last dance、this is ourselfと締めくくる、ここまで歌詞がシンクロすることがあるのかと。
映像、音楽、脚本、俳優、まさに
奇跡のマッチングです。
二度視聴することで理解が深まると思います。
余韻が繰り返すせつない物語でした。その時の親子の気持ち、今のソフィが記憶を辿りながら理解する父への気持ちがひしひしと伝わります。そしてそんな父をソフィがそっと抱きしめるような作品だと感じました。
観ながらどこか懐かしい気持ちになるのは、私も人生の時を経た大人だからなのだとおもいつつ、昔を少しふりかえりました。
ラストダンスにもっていく構成と
空港のラスト 父親がドアの向こうがフラッシュしていてダンスフロアへ向かうとか ラストはマジでヤバイ
今年は対峙 ター 怪物 アフターサンが完成度が高い作品て思っていて 来週ウーマントーキング見に行く予定です!
もう一度見に行こうと思っているうちに、終わってしまいました。
「Under Pressure」は元々知ってはいましたが、こんなに心に刺さるとは思いませんでした。
今年はこの「アフターサン」と「ウーマントーキング」の2つの作品がとても心に残っています。