パリタクシーのレビュー・感想・評価
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タイトルなし(ネタバレ)
予告編から受ける印象と随分違う。
話が上手くまとまりすぎている。
最後ご都合主義ではあるが、劇伴も相まって後味よく劇場を後にできる。
余韻たなびく、いい映画。
回想がザリガニの鳴くところぽい。
過ぎ去り日々を巡る
住んでいた家を出て施設に入ることに
なったマドレーヌ92歳
そんな中タクシーのなかで自分の
若い頃の恋愛を話はじめる
これまでの波乱万丈の人生など…
少しずつ。
タクシー運転手のシャルル
シャルルも借金、今度違反したら
商売できなくなる一歩手前で崖っぷち
でイライラが隠せない
マドレーヌの人生を聞いているうちに
自分の妻や娘のことを思いやる
…いつの間にか
ふたりは会話を楽しむ様に
パリの街並みと夜景の素晴らしいさ
観光した様な気分です
マドレーヌは
誰かと話したかった
…自分の話を聞いて欲しかったのかも
二人にとって最高の一日になった
乗り越えた人の言葉
これぞロードムービーなのだろうか?
舞台はパリのタクシーの中だし、内容は人生を生きてきた女性の話だ。
日々の生活に困窮する運転手と、見るからに上品な92歳の女性。彼は彼女との旅を通して解放されていくようだった。
彼の境遇を見ながらどこの国もドン詰まりで、金に縛られながら生きてんだなぁなんて思う。冒頭のBGMもギスギスした感じだし。
彼は終日イライラしているようにも見えてた。
そこにかかってくる配車のインフォ。
事態は何も好転しないのだけど、BGMがポップな感じに変わり、空の絵になる。
…案外、俺の気分も良くなった感じがした。
乗せた客は92歳の女性。
自宅を離れ老人ホームに入るらしい。よく喋る。
自由を手放す状況は、2度目の収監にも通ずるのだろうか?
彼女は自身の半生を語りだす。
ファーストキスから始まるのだが…今の風貌からは想像もつかないような人生が語られる。
始まりのキスからして、兵隊に遊ばれたんだろうって思ってしまうのだが、生きて行く中で美化もされているのだろう。
16歳で妊娠、シングルマザーになり、子供は私生児として誕生する。中絶が禁止されてる時代でもあったのだろう。結婚した夫がDVで、裁判起こしたら男尊女卑の社会だから25年の禁固形。
13年経って出てきた息子は、犯罪者の息子として辛い青春のようだし、再会して2週間後に向かったベトナムで、戦火に巻き込まれて死亡。
…なぜ、今、貴女はそんなに楽しそうに笑っていられるの?そんな世界を名残惜しそうに見つめるの?
思い出ってのは、愛した人との時間っていうのは、そんなにも人生を強く豊かにしてくれるのだろうか。
運転手も、楽な人生ではないのだけれど、そんな人生を経て尚、笑顔を絶やさぬ老婆に勇気づけられていくようだ。
「たいした事ないわよ。大丈夫。」
そんな風にも思えたのだろうか?冒頭険しかった表情は、次第に柔らかくなっていく。
目的地につき、施設に入っていく老婆はとてもとても寂しそうだった。思えば、タクシーの運転手とはいえ、ここまで彼女の話に耳を傾けた人はいなかったのではなかろうか?どこか、自分の生立ちを残していきたかったんだろうかと、ふと思う。
とても地味な映画であったけれど、人生を歩き続ける上で色んな教訓が詰まった作品だったと思う。
92歳の言葉は分厚かった。
運転手のように自分も励まされていたように感じる。
さすがはフランス映画。赴きがあり深い。
いい映画
ピンチのタクシーの運転手が、おばあさんを乗せました。
今からホームにいく92歳の方 ちょい寄り道してよから、2人の人生の旅が。波乱の人生なんや。びっくり‼️でも最後は、良かった。フランス映画にしては
ハッピーエンドだね。
une belle course
施設の自動ドアを挟んで別れを惜しむ2人が、昨年、またいつか会えると思っていた父ともう亡くなった自分の経験とリンクし涙が溢れて止まらなかった。
人生最後の日に自分の父は何を想っていたのだろう。
私のことは過ったのだろうか。
自分が人生最後の日には何を考えるのだろう。
今いる自分の大切な人たちを大事にしよう。
パリ版道との遭遇
今年11本目はMOVIX三好で鑑賞
主人公含めてみんな運転マナーがよろしく無い感じだが、見慣れた名古屋走りと変わらない為、怖いと思うのは右側通行のために起こる感覚の違いのみ。
ヒロインは92歳のおばあちゃんだが若い頃のシーンが多いので艶もある映画、特に道がフォーカスされている訳では無いがパリの街並みを昼夜眺めながらあちこちに行くので、ちょっとした旅行気分が楽しめ、パリ版道との遭遇の様だと思いながら観てました。
観終わった時点で思ったのは、おばあちゃん男運悪過ぎだけど最後に主人公に会えたのが救いだったか。主人公からすれば蜘蛛の糸の様なオチとも思えた。
遅刻厳禁(自分にね)
引っ越して遠くなった有楽町、移動時間を読み違えて多分数分遅れで入場。エレベーターのタイミングも悪くイライラして入場したら買ってた席に荷物が置かれていて、仕方なく前方横の空いてたところに着席。タイトルが出る前だったからまだいいかな~。
全体に流れるムードは評判通りでいいお話だったが、あの事件はちょっと…。たしかに酷い旦那だとは思うが、連れ子第一の奥さんに苛立つ気持ちもちょっとは分かり、あんなに本格的に焼こうとしては流石にアカンという気持ちが強く、も少しマシな手段にしてほしかった。
実年齢の役柄を演じたリーヌ・ルノーに脱帽
ダニー・ブーン演じるシャルルは、低賃金・長時間労働で家族と過ごす時間も取れないタクシードライバー。この辺りの事情は、フランスも日本とも変わらないようで、彼はかなりやさぐれていている。そんなシャルルが乗せたのは、リーヌ・ルノー演じる御年92歳のマドレーヌ。彼女は身体の自由が利かなくなってきたことから、自宅の一軒家を引き払ってパリの反対側に位置する老人ホームに入るためにタクシーに乗る。そんなシャルルとマドレーヌのお話でした。
シーンの多くはタクシー車内での2人の会話と、マドレーヌの回想シーンで構成されていました。彼女の驚くべき体験は、子供時代から順を追って語られていき、所縁のある場所にタクシーが立ち寄ることで、過去と現代が立体的に繋がるように仕上がっていたのは見事でした。
戦争でナチに父を殺されたこと、解放軍たるアメリカ軍の軍人とひと時の恋に落ちたこと、アメリカ軍人との間に出来た子供を連れてDV男と結婚してしまったこと、その男のシンボルをバーナーで焼いたこと、そしてその罪で禁固25年に処されたこと(模範囚だったことで13年で釈放)など、まさに激動の人生を語るマドレーヌの話を聞き、やさぐれていたシャルルも我々観客も彼女に魅せられていく。そしてドライブの最後は高級レストランでのディナー。ここまで来ると2人はもはや恋人同士以上の関係になっているようでした。そしてラストは突然のマドレーヌの死とともに、シャルルはプレゼントを受け取るというもの。この辺りはお話の途中から薄々予想出来る展開でしたが、それですら久々に号泣してしまいました。それくらい、わずか1日のドライブで出来た2人の絆に感情移入できる作品でした。
ストーリーの本筋と離れて強調されていたことは、マドレーヌが夫からDVを受けていた1950年代は、女性の権利が大幅に制限されていたということ。一例として挙げられていたのは、銀行預金を作るのですら、夫の許可が必要だったというのだから、いくら何でもという感じでした。そういえば昨年上映された同じフランス映画「あのこと」でも、1960年代になってすら人工妊娠中絶が認められていなかったことが描かれていました。戦後を回想する現代フランス映画において、かつて女性の権利が大幅に制限されていたことがいろいろな角度から描かれてるところを観ると、実は現代においてもそうした問題が残っているんじゃないかと想像を巡らせたところでした。(G7参加国で唯一夫婦別姓を認めていない日本も他人事ではないでしょうが。。。)
あと驚いたのが、マドレーヌを演じたリーヌ・ルノーの年齢。劇中92歳という設定でしたが、調べてみると1928年生まれなので、当年取って94歳。つまり劇中の年齢は実年齢だったという訳です。いや~、あの貫禄ある演技は、本物の年輪から来るものだったのかと、舌を巻きました。
そんな訳で、涙を誘うお決まりのストーリーというベタな展開ではありましたが、それをフランスらしい軽妙洒脱なユーモアを交え、そして何よりリーヌ・ルノーの愛すべき演技にやられてしまったので、評価は文句なしの★5とします!
最強のふたり
90分と短い映画なのでさくっと見ることができ、いい感じのタクシー運転手とマダムのコンビを味わうことができる映画です。
ふたりが同世代で出会っていたら恋人同士になってたんだろうなと想像してしまいました。
俳優さんのふたりは、役とマッチしていて超適任でした。
凄絶な人生も平穏な人生も束の間の夢みたいなものなのかも
独り暮らしの92歳の老婦人マドレーヌが介護老人施設に引っ越す。そのためにタクシーが呼ばれる。やって来たのは風采の上がらない中年男シャルル。移る施設は同じパリ市内、おそらく数十分で着ける距離なのかもしれないが、老婦人マドレーヌの願いで想い出の場所に寄り道を繰り返す。そして思い出話が語られる。途中、マドレーヌの突然の自然現象(尿意?)やら、信号無視で警察に止められたり(過去の違反の累積でシャルルは免停か?)、こうしたエピソードでの二人の対応がくすっと笑える。始めは無愛想だった運転手シャルルも次第に心を開き、マドレーヌの話に熱心に耳を傾けるようになる。二人はまるで祖母と孫?親子?友達?気が付けば夜になり、二人はレストランでディナーを共にする。食事の後にセーヌ川沿いの街灯に照らされた夜の道を二人は腕を組んで歩く。まるで恋人みたいに。
マドレーヌの口から語られる過去は驚くほどに壮絶なもの。なのに幸福そうに語られる。シャルルはいつの間にか、自分の不遇な今も何とかできる、何とかしてみせると考えるようになっている。
予定よりも何時間も遅れてマドレーヌは介護老人施設に送り届けられる。そして最後にサプライズが。それはとても悲しい結末だけれど、とても幸せなサプライズでもあった。
92歳のパリジェンヌ
高齢マダムが主人公のフランス作品はハズレがない!(ねもちゃん調べ)
主人公マドレーヌを演じるはシャンソン歌手としても有名なマダム・リーヌ・ルノー
マドレーヌが歩んできた
波乱万丈な数奇な人生の悲壮感を感じさせないのは彼女の抜群のオーラとチャーミングで凛とした演技力のせいかもしれない
崖っぷちのタクシードライバー、シャルルが乗せた老婦人マドレーヌ…彼女の秘密が寄り道の度に明かされて行くうちシャルルも徐々に心を開き自身事を語り出したった1日の交流の中で
いつしか熱く深い友情が芽生える
シャルルはマドレーヌが目指した目的地…
悔いなき終活経由〜愛する人達が待つ天国へ
キチンと送り届けたからこそ彼の妻曰く「こ、こんなに…」な感謝と愛を込めた料金を
マドレーヌもキチンと支払ったのでしょう
時間と共に変わりゆくパリの風景を私もタクシーに乗って旅している気分にもなれ
91分という決して長くは無い尺の中で見心地良き時間を過ごせました
「語る」事の大切さ深さを改めて感じましたね
泣けて笑えて心から幸せな気持ちになれました
いやぁ忘れられないフランス作品がまた一つ増えましたね!
GW、誰にでもおすすめしたい作品です!
が…上映館が少ないのが唯一の不満です💧
生きざま
自分の生き方を貫いてきた(見た目も話し方も雰囲気もとっても素敵な)老婦人と、人生は上手くいってないけど自分の本質は揺らいでないタクシードライバーが、美しいパリの街並みを舞台に繰り広げる人生模様。ストーリーは気持ち作りすぎの感じもするけど、最後はハッピーエンドで最高!。最後はこうこなくちゃ!。車椅子を拒否する姿、一度も乗ったことが無いから、最後の最後まで自分の意思で生き抜くって‥カッコ良すぎる。
人生を精一杯生きてきた老婦人からタクシーの運転手へと、希望という名のバトンが繋がりました。人と人との繋がりの大事な事と、人生の儚さとを考えさせられるお話です。
予告を観てどことなく気になっていた作品です。
タクシーの中という閉ざされた空間で描かれる
一人の老婦人の半生の物語。やはり気になる…
というわけで鑑賞です。
毎日乗客を乗せてパリ市内を走るタクシーの運転手。
老人ホームに入所する老婦人を乗せることに。
まっすぐに向かうのかと思えば
老婦人はあちらこちらへと、寄り道したいと口にする。
行き先は、遠かったりパリの反対側だったり。
最初は渋々応じていた運転手なのだが、
老婦人にとって、尋ねておきたい場所ばかりだった。
尋ねた先々で、老婦人は自分の過去を口にする。
その内容は、壮絶な人生の物語。
老婦人の名はマドレーヌ。現在92才。身寄り無し。
運転手の名はシャルル。現在46才。嫁と娘。…そして借金。
マドレーヌが語る。
#第2次世界大戦で父をナチスに殺され
#パリを開放したアメリカの兵隊と恋に落ちる
#米兵はアメリカに帰ってしまうもお腹には子供が…。
#後に消息を辿るも彼は結婚し親になっていた。
息子との二人暮らしは、忌中から溶接工の男との同居に。
事実上の夫婦となるが、この男は息子を邪魔にし虐待した。
子供に手をあげる事は許せない!
彼女の男に対する行動は、とにかく過激。
男を睡眠薬で眠らせ、股間をバーナーの炎で …ひぃ
男は死亡には至らず、裁判。 ですよねぇ。…その結果
彼女には「禁固25年の刑」が言い渡される。 そして服役。
13年後に釈放。
母親と子供の元にようやく戻れたのだが
男の暴力から守ったハズの息子は、
センセーショナルな事件を起こした母を恨み
良い感情を持っていなかった…。 う~ん
大学には進まず、報道カメラマンとして生きていた息子。
アメリカが戦争中のベトナムに行くという。
引き止める術のないマーガレット。
そして半年後 息子が死亡したとの報せが…。
とまあ
このおばあさん 実は
とんでもなく激動の人生を送っていた事が
徐々に分かってくるわけで…。
この作品、場所を移動しながら過去へと時間も遡り
「一生を振り返るロードムービー」
とでも言えばよい作品なのでしょうか。
◇
夜遅くに老人ホームに到着し
タクシー料金の支払いが未だと気付くマドレーヌに
”後日でいい また来るから” と
その日は代金を貰わずに帰ったシャルル。
一日中タクシーに乗っていたら、
タクシー料金は一体いくらになってしまうのか
見当つかないのですが(日本なら数万エン?)
シャルルはきっと、
目的地まで真っ直ぐ走った程度の金額しか
受け取ろうとしなかったのではないかなぁ と
そんな風に想像しています。
そしてまた、「後日で」 と言ったのも
身寄りの無いマドレーヌにまた会いに来るため
口実を作っておきたかったから。
そういう事なのではないかな と、
これもまた勝手に想像しています。
鑑賞中よりも鑑賞後に、じわじわと
心に沁みてくる作品でした。
◇最後に
原題 ”Une belle course” 「素晴らしいレース」
マーガレットの人生のことを指しているのか
最後にパリの町を見て回った道行のことなのか…
考えさせるタイトルですね。
原題のほうが作品のイメージに近い気がします。
邦題の”パリタクシー” も、間違いではないですが…
※そのまんまやん と思ったり。
◇余談(下世話です)
それにしても101万ユーロですかぁ。。
余り知らない相手から貰うにはコワイ金額な気もしますが…。
それと、シャルルと奥さんが小切手を手に抱擁するシーン
小切手が風に飛ばされないか、気になって気になって…
そんな変なオチは要らないよ~ と心配してました。
杞憂で終わって良かった。 ほっ。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
淡々と
フランス映画らしく
淡々と進みますが
淡々のなかに
グッとくるところがあります
怒るとひとつ歳を取り
笑うとひとつ若返る
というセリフが
心に残りました
最後の
101万ユーロは
わかっていても
その額の多さに
涙が出ました
一期一会
旅は道連れ世は情け
木曜日の昼間なんですが、めちゃくちゃ人が入ってました。公開規模が小さいのもありますが、ここまで惹きつけるものがあるんだろうなと思いワクワクしながら鑑賞。
小さいけれど、とても中身の詰まったロードムービーでした。タクシー運転手と92歳のおばあちゃん、たまたま交わった2人のそれぞれの思いを吐露して、互いを分かり合っていく様子がとても微笑ましい作品でした。
老人ホームへ向かうためにタクシーを呼んだマドレーヌおばあちゃん。92歳とは思えないくらい生き生きしていてかわいらしいです。演じたリーヌ・ルノーさんも御年94歳と、なんともたくましいおばあちゃんです。そこにやってきたタクシー運転手のシャルル、かなりイライラしていて、最初の出会いは互いに好感触では無さそうでした。
マドレーヌが遠回りを提案して、パリの街をぐるぐる回る中で、マドレーヌの辛い過去がだんだん明かされていきます。子供を産んだあと、再婚した旦那は今で言うDV夫、だけれど1950年代は離婚はほぼ無いもので、亭主関白が当たり前の様な時代だったため、中々逆らう事ができなかったそうです。
子供にまで暴力を振るったので、怒り心頭のマドレーヌは睡眠薬で旦那を眠らせたあと、バーナーっぽいもので男性器を焼くという、まぁ何とも痛い描写がありました。そうしたくなるほど胸糞な旦那だったので、ちょっとスッキリしました。その後の裁判はどうにも納得できないまま禁錮判決を受けてしまいましたが、現代ならこんなのは許されないよなとマドレーヌに同情するばかりです。
禁錮明けで帰ってきたあと、空白の時間に息子が苦労していた事、ベトナムに戦場カメラマンとして行くも、巻き込まれ死んでしまい悲しみに暮れてしまう、とやはり辛い事は続いていました。
そんなマドレーヌの話を聞きながら、会話をどんどん楽しむシャルルの表情はどんどん明るくなっていきますし、一緒にアイスを食べたり、ディナーを共にしたり、運転免許が取り締まられそうになった時に助けてもらったりと、関係性が深まっていく様子がとても微笑ましかったです。
幸せな短い旅の後、老人ホームに入りましたが、その後すぐに心臓病で亡くなってしまい、恩人と家族を合わせる事が出来ずに悔しそうなシャルルでしたが、その想いをしっかりと受け止めていたマドレーヌが、自分の遺産をシャルル一家に渡すと言う、見返りを求めていなかったシャルルに最大限の恩が返ってくるという気持ちのいい終わり方で物語は幕を閉じました。
90分と短くコンパクトにまとめられていて、役者陣の演技もしっかりと堪能できる。公開規模が小さいのが残念ですが、とても面白いロードムービーでした。こういう人生の終活が出来たら良いのになぁ。
鑑賞日 4/13
鑑賞時間 12:25〜14:05
座席 B-13
タイトルなし(ネタバレ)
不愛想な中年タクシー運転手シャルル(ダニー・ブーン)。
家族を愛しているので、タクシー運転手を続けているが、借金も多く、違反点数も多く、免許停止寸前。
そんな折、会社から送迎の連絡を受ける。
場所はパリの反対側。
乗客は上品な老婦人(リーヌ・ルノー)。
彼女はマドレーヌと名乗り、歳は92、住み慣れた家を引き払い、キャリーバッグひとつで介護施設へ入居するという。
彼女の口から過去の思い出が語られ、シャルルは彼女の思い出旅行に付き合うことになる・・・
といったところから始まる物語で、はじめに語られるのは第二次大戦終結間近の頃、ひとりの米兵と知り合い、甘美なファーストキスをしたこと。
その米兵は故郷に戻り、彼女のお腹には米兵の子どもを宿していたこと。
スウィートな思い出話と、かつてとは様変わりしたパリの風景。
その対比を愉しむ映画・・・と思いきや、うわ、ビックリ。
マドレーヌの過去は壮絶だった。
ひとり息子を産み、しばらくした後、知り合って結婚した相手は暴力夫。
「むかしは、暴力が原因で離婚する女なんていなかったわ・・・」と語るマドレーヌ。
フランスも女性蔑視は凄かったのだ。
しかし、マドレーヌは黙って耐え忍ぶ女ではなかった・・・
と、この後は書かない。
が、『フライド・グリーン・トマト』『ザリガニの鳴くところ』『ビリーブ 未来への大逆転』の諸作を思い出しました。
終盤の展開は、悪くはないが劇作としては安易かなぁ。
特に、幕切れは米兵とのダンスのシーンなので、「なんだかんだいっても、女はいい男と知り合わないとダメなのよねぇ」とフェミニズム女史が言っているようにも見えて、妙にくすぐったい感じがしました。
スウィート&メロウなジャズも聞きどころ。
フランスタイトルは「UNE BELLE COURSE」、美しき旅路。
シャルルとの短いタクシー旅を指しているのですが、マドレーヌの人生の意でもあるでしょう。
英語タイトルは「DRIVING MADELEINE」、こちらは『ドライビング Missデイジー』を思い出させますね。
一年に地球を3周する仕事
シンプルなロードムービーですが、景色と会話のセンスで軽妙な仕上がりでした。
マドレーヌの過去は予想外。
現代ならマチューと逃げるなり裁判を起こすなり出来るのでしょうが、時代が許さない。
DV男に天罰が下らないところや、結局マチューも辛い青春を送るところなど、哀しくもリアルです。
フィクションながら、あの過去が現在をつくったというのは説得力がある。
オチに捻りはないが、安っぽくはない。
シャルルが徐々に打ち解けていく様が、流れとしても演技としても非常に自然で微笑ましい。
特にトワレ渋滞の後に子供のように笑い合う2人が印象的でした。
マドレーヌは、日本で言えば京都っぽいというか、上品で可愛らしく、でも強かさやユーモアもあり魅力的。
語られなかった、自殺未遂から先の半生も知りたくなってしまった。
作品はよかったが、車線変更でウインカーを出す車がほぼおらず、絶対にパリでは運転したくないと思いました。笑
フェノバルビタール
フランスは世界に冠たる個人主義の国だが、一方でこういう(寅さん的なのとは少し違う)人情噺の伝統もちゃんと受け継がれていて面白いなあ。
マドレーヌは想像を絶する人生(ちょっと盛りすぎか)を送ったのだけれど、幸福追求のためのバトンを然るべき人に渡して去った。本当に強靭な人だ。
評者は信心と無縁だが、次走者のシャルル一家に神の御加護を、と祈らずにはいられない。
素敵な映画を観ながら一足早いパリ観光。如何にもフランス映画らしい人情噺の良作。
①予告編を観て全く予定調和的な話だろうと思ったし、ラストも全く予想通りだったのに嗚咽を抑えきれなくて、マスクの上から口を押さえてしまった。
巧い(私が泣き上戸なだけかも知れないけど)。
②さすが映画を生んだ国フランス。難解な映画も多いけど、昔から人情噺を作らせても上手い。
③但し、単なる泣き笑いのcomedieではなくて、マドレーヌの人生の断片を聞いている中で、シャルルは自分が生まれる前のフランス人(特に女性)が経験した哀しく厳しい近代史に触れるという苦味もある。
④“人は一回笑うと一年若くなる、一回怒ると一年歳を取る”という素敵な言葉を教えてくれた父親は、パリが解放される数日前にナチスによって銃殺される。
マドレーヌの人生で一番幸せな時間を与えてくれた進駐軍のアメリカ兵マットは帰国して向こうで家庭を持った(日本の戦後でもよくあった話)。
マットはそれでもマドレーヌにとって何よりも大事な息子を残してくれたが、それが新しい悲劇の元となる皮肉。
⑤それにしてもマドレーヌも思いきったことをしたものだ。私はてっきり息子を殴った手を焼いたものと思ったが、レイの息子を焼いたとは。同じ男としてはちょっとレイが可哀相に思ったが、1950年代のフランスの妻の社会的地位の低さとDVの実態を暴露するには、これくらいの劇的インパクトは必要だったのだろう。
私も“男”は“女”に手を上げた時点で“男”ではなくなると思うくらいDVは許せません。
私はフランスはてっきり“女”の国だと思っていたので、1950年代のフランスでは女性(妻)の社会的地位が低かったと知って驚いた(勉強不足ですね)。
それに現代に至るまでフランスを含むヨーロッパではDVの問題は深刻だということも映画鑑賞後まで知らなかった(更に勉強不足)。
映画を観ているときは、マドレーヌが後半生をDV撲滅運動に身を投じたのも自分が当事者であると共に過去の行動から闘士としての代表に祭り上げられたのだろう、くらいに思っていたのだか、現代でも充分に深刻な問題なのだ。
それでシャルルが「25年は長すぎるなぁ」と言ったのも理解できる。
⑥それにマドレーヌも結局充分な償いをすることになった。女盛りを牢獄の中で過ごすことになったし、大事な息子の成長を間近で見られなかった。刑務所に入っている間に息子は学生運動に飛び込み(5月革命?)、結句報道カメラマンになってベトナムで戦死する。
身を呈して守った息子だったのに短い間しか一緒に居れず、過去の事件のせいで肩身の狭い生き方をさせてしまった…
⑦さて、暗い話はこれくらいにして、人生で一番幸せだったというマットと過ごした日々の中で共に歌った(という印象があるのだけれど)『on the sunny side of the street』。去年の朝ドラの『カム・カム・エプリバディ』を思い出してしまった。
⑦来年はパリオリンピックに行くつもり。その時にパリに住むフランス人の友達にパリ案内をしてもらおうと思っているけれども、一足先にパリ観光の予行演習をした感じ。
それくらいシャルルが運転しマドレーヌが乗り込んだタクシーから眺めたパリの街は美しかった。
⑧フランス語原題“Une Belle Course”。ピッタリです。
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