劇場公開日 2023年4月7日

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「意外な展開じゃなくても泣けるってこと」パリタクシー kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0意外な展開じゃなくても泣けるってこと

2023年4月27日
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鑑賞方法:映画館

人生の終わらせ方というものをたまに考えるようになった。年をとってきたということなんだろう。
家を引き払って施設に向かうおばあさんと、彼女を乗せることになったタクシー運転手の話。最初は会話もぎこちなかったのが、お互いのことを話しながら徐々に心の距離が縮まっていくという、ちょっとしたロードムービーの様式をとっている。予告編を見たときから、あんなトラブルあるんでしょとか、最後はこうなるんだろうなーとかイメージしていたが、そこから大きく外れることはなかった。意外だったのは、おばあさんの過去が思ったよりも壮絶だったことくらいか。
90分くらいだしあまり詰め込めないのもわかる。でも、おばあさんのお母さんのくだりとか、運転手の家族のくだりとか、運転手の抱えている問題とか、ふくらませる要素はたくさんあったはず。でも潔いくらいにコンパクトにまとめたんだな。
正直、後半は驚くような展開はない。こちらの想定通りと言ってもいい。でも、泣けてしまった。泣くか泣かないかは、意外性で決まるわけではないってことか。たぶん年をとってきたからこんな映画が心に刺さってしまうんだ。それなりに席が埋まった映画館は私よりも年上のお兄さんお姉さんで溢れていたが、後半鼻をすする音があちこちで聞こえた。そうですよね、刺さりますよねと共感した平日の午後だった。

kenshuchu