「歴史の語り部」パリタクシー コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
歴史の語り部
観てよかった。
2021年、見かけは綺麗だが、コロナ禍後で景気は悪く、人との繋がりは薄れ、自分さえよければと誰しも皆ギスギスしている、フランス・パリ。
この国でも、40代半ばは特に煽りを受けてまともな仕事もなく、非正規待遇で高リスクな仕事を受けている人が多く。
92歳のマダムを、タクシードライバーが介護付き老人ホームへ連れていく道中、思い出の土地を回りながら過去を語る形態で映画は進む。
ナチスによるフランス占領、ナチスの虐殺被害にあった父、連合軍によるフランス解放、米兵との恋と別れ、予期せぬ妊娠、結婚相手のDV、女性にまともな人権のなかった時代の不当な裁判……
パリの美しい観光名所を巡りながら、その街で過去に何があったのかという歴史の語り部としての老婦人・マドレーヌ。
彼女の過酷な人生を知り、今が最低だと思って苛々していた自分を恥じ、優しさを持って、改めて人生をやり直したいと感じた46歳のタクシー運転手シャルル。
今の時代に翻弄される人々に、いろいろな気づきを与える二人の、小さな街の中のロードムービーに拍手。
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