劇場公開日 2023年4月7日

「理不尽とそれに負けない(浸りきらない)美しさ」パリタクシー くーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5理不尽とそれに負けない(浸りきらない)美しさ

2023年4月13日
iPhoneアプリから投稿

パリが好きで、パリの景色たくさん見れたらいいなと思い鑑賞。

マドレーヌの過去が想像を超えて壮絶すぎて、え…ってなったけど、
現在の彼女の様子を見てると、とてもそんな理不尽とか不幸な目に遭ったとは思えないような素敵なエレガントな女性で。

家を離れる日(自由な人生の終焉)に身に付けてた水色のスカーフが、舞台で仕事してた彼女をレイが迎えにきたときに身に付けてたスカーフに思えて、幸せなころの大切な記憶なのかな…

マットとマチューと幸せになれれば良かったのになぁ…

でも、家庭を持っていたマットへの恨み節もなく、手紙もすっぱり送るのやめたと言うから、
粘着質でなく、幸せを見いだす資質に富んだ人なのかも。

父から教わったという言葉ー怒れば老い、笑えば若くー
物事のポジティブな面に目を向ける性質を、親から得られた人は幸せだと思う。

そんな素晴らしい父の命を証するプレートの周りが、今や落書きやホームレスのテント?が張ってある場所になっているとは…
哀しかった。

でも、マドレーヌの不幸は、あんな方法を取ってしまった彼女にも因があるけど、
父はおらず、母からも離れ、幼い頃から社会に居場所を作れなかったマチューが可哀想で。
彼が自分で見出した道で、人生を断ち切られてしまったのが、彼に幸せと思える瞬間やそれを感じさせてくれる人がいただろうかと考えてしまって…

シャルルは、不安やストレスから普段は粗野な感じなのに、マドレーヌと話すうちに本来の優しい性質が戻って、観ていてうれしくなった。

彼のような、環境が良ければ穏やかに健やかに過ごせるであろう人が、仕事や環境に恵まれず、性格まで歪められるの、本当にどうにかならないのか…

最期はできすぎにも思えたけど、体調を崩して引き取ってくれる家族はなく、施設まで送ってくれる誰かもいないマドレーヌが、
人生の最期を素敵に過ごさせて良い思い出をくれたシャルルに自らの財を与えるのは理にかなっていると思った。

二人が再会できていたら。
マドレーヌがどれだけ喜んだだろうか。

人生は非情。

孤独な闘いの人生、最期にあんな素敵な出会いがあるならいいのにね。

最後、涙が流れました。

くー