「人生を精一杯生きてきた老婦人からタクシーの運転手へと、希望という名のバトンが繋がりました。人と人との繋がりの大事な事と、人生の儚さとを考えさせられるお話です。」パリタクシー もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
人生を精一杯生きてきた老婦人からタクシーの運転手へと、希望という名のバトンが繋がりました。人と人との繋がりの大事な事と、人生の儚さとを考えさせられるお話です。
予告を観てどことなく気になっていた作品です。
タクシーの中という閉ざされた空間で描かれる
一人の老婦人の半生の物語。やはり気になる…
というわけで鑑賞です。
毎日乗客を乗せてパリ市内を走るタクシーの運転手。
老人ホームに入所する老婦人を乗せることに。
まっすぐに向かうのかと思えば
老婦人はあちらこちらへと、寄り道したいと口にする。
行き先は、遠かったりパリの反対側だったり。
最初は渋々応じていた運転手なのだが、
老婦人にとって、尋ねておきたい場所ばかりだった。
尋ねた先々で、老婦人は自分の過去を口にする。
その内容は、壮絶な人生の物語。
老婦人の名はマドレーヌ。現在92才。身寄り無し。
運転手の名はシャルル。現在46才。嫁と娘。…そして借金。
マドレーヌが語る。
#第2次世界大戦で父をナチスに殺され
#パリを開放したアメリカの兵隊と恋に落ちる
#米兵はアメリカに帰ってしまうもお腹には子供が…。
#後に消息を辿るも彼は結婚し親になっていた。
息子との二人暮らしは、忌中から溶接工の男との同居に。
事実上の夫婦となるが、この男は息子を邪魔にし虐待した。
子供に手をあげる事は許せない!
彼女の男に対する行動は、とにかく過激。
男を睡眠薬で眠らせ、股間をバーナーの炎で …ひぃ
男は死亡には至らず、裁判。 ですよねぇ。…その結果
彼女には「禁固25年の刑」が言い渡される。 そして服役。
13年後に釈放。
母親と子供の元にようやく戻れたのだが
男の暴力から守ったハズの息子は、
センセーショナルな事件を起こした母を恨み
良い感情を持っていなかった…。 う~ん
大学には進まず、報道カメラマンとして生きていた息子。
アメリカが戦争中のベトナムに行くという。
引き止める術のないマーガレット。
そして半年後 息子が死亡したとの報せが…。
とまあ
このおばあさん 実は
とんでもなく激動の人生を送っていた事が
徐々に分かってくるわけで…。
この作品、場所を移動しながら過去へと時間も遡り
「一生を振り返るロードムービー」
とでも言えばよい作品なのでしょうか。
◇
夜遅くに老人ホームに到着し
タクシー料金の支払いが未だと気付くマドレーヌに
”後日でいい また来るから” と
その日は代金を貰わずに帰ったシャルル。
一日中タクシーに乗っていたら、
タクシー料金は一体いくらになってしまうのか
見当つかないのですが(日本なら数万エン?)
シャルルはきっと、
目的地まで真っ直ぐ走った程度の金額しか
受け取ろうとしなかったのではないかなぁ と
そんな風に想像しています。
そしてまた、「後日で」 と言ったのも
身寄りの無いマドレーヌにまた会いに来るため
口実を作っておきたかったから。
そういう事なのではないかな と、
これもまた勝手に想像しています。
鑑賞中よりも鑑賞後に、じわじわと
心に沁みてくる作品でした。
◇最後に
原題 ”Une belle course” 「素晴らしいレース」
マーガレットの人生のことを指しているのか
最後にパリの町を見て回った道行のことなのか…
考えさせるタイトルですね。
原題のほうが作品のイメージに近い気がします。
邦題の”パリタクシー” も、間違いではないですが…
※そのまんまやん と思ったり。
◇余談(下世話です)
それにしても101万ユーロですかぁ。。
余り知らない相手から貰うにはコワイ金額な気もしますが…。
それと、シャルルと奥さんが小切手を手に抱擁するシーン
小切手が風に飛ばされないか、気になって気になって…
そんな変なオチは要らないよ~ と心配してました。
杞憂で終わって良かった。 ほっ。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
おばあちゃんの劇的な人生が、私の予想の斜め上を行き、びっくりしました。
途中で最後の流れは予測できてしまい、それが残念とはいえ、逆に安心して見れた原因になっているのかもしれません。
コメントパックありがとうございます。ドライバーも最後はお金ではなく、それ以上の大きな人生訓を貰ったみたいで、とってもほっこりする映画でした。上映館が少ないようですが、人生に疲れた人には是非見て頂きたい映画でした。
なっくんjjjさん、コメント有り難うございます。
※レビューを書かれていないようですので、
私のレビューに返信をぶら下げますね。
>最後のメーターは291ユーロくらい
日本円でおよそ5万円ですか。はあ。
高いんだか安いんだか。
もちろん個人的には「高い」としか言えないのですが…
ほぼ一日ドライバーを拘束した対価として、5万は
適正な金額なのかなぁ と気になったもので。
タクシーの最後のメーターは291ユーロくらいでしたね。日本円だと4.5万円、チップ込みで、5万円といったところでしょか。私もタクシーメーターが気になってしょうが無かったです。