「善なるワグネルの物語(原作の1980年代後半時点では超画期的)」沈黙の艦隊 テレビウォッチャーつばめさんの映画レビュー(感想・評価)
善なるワグネルの物語(原作の1980年代後半時点では超画期的)
原子力潜水艦を奪い取って独立国を宣言、日本を含む他国に対して核軍事サービスを提供することで、核抑止の力で平和を追求しようとするというストーリー。
国家に対して軍事サービスを提供するという意味ではロシアやアフリカでそのようなことをしているワグネルと類似ですが、戦闘を通じて帝国主義を実現するとか、金儲けをするとかいうような邪悪な哲学ではないところが大きな違い。
核抑止理論や、潜水艦の特徴、原子力潜水艦の特長を知らないと、映画内で語られることが分からないかもしれません。
原作漫画では、沈黙の艦隊と日本や国際社会がどのように向き合うかを描く場面もありますが、本作品ではその前段の部分が描かれています。
爽やかな顔で必要最低限しかしゃべらない不気味さを持つ館長の海江田四郎が、主演でプロデュースにも関わっている大沢たかおさんによりうまく表現されていると感じました。
世界平和までの道のりを描く壮大な創作であるとともに、単に戦争反対と言い続けるだけの平和追求とは一線を画すリアリズムが込められている良い作品だと思いました。
最後に流れる主題歌は女性が歌っていて、BzのALONEによく似てるなと思ったら、決してパクリではなくBz提供でadoさんが歌唱する作品でした。
・核抑止理論
対立する国々が、それぞれ核兵器を保有することで、互いに核兵器使用を躊躇する構造ができ、結果として武力紛争が起きにくくなるという考え。
・潜水艦の特徴
潜水艦が潜る海の中は光が届かない世界であり、ほぼ真っ暗なため、船外の状況を把握するためには音響装置を使って把握する。
受動的に受信している音を分析する方法と、
能動的に音を発信し、跳ね返りを分析する方法がある。
能動的に音を発信すると、自らの好きなタイミングで周辺を確認できる一方で、その音により周りから自らの位置を把握されてしまうというデメリットがある。
・原子力潜水艦の特長
動力源を船内での原子力発電としていることからエネルギー補給が不要(食料やゴミ出しなどは必要)なことから、世界の海のあらゆるところで長期間待機することが可能(神出鬼没に攻撃できる)
動力源を原子力にしていることと、搭載する武器を核ミサイルにしているかどうかは別の話。本作品では動力源を原子力とし、核ミサイルの搭載については「通常ならざる兵器」という表現で搭載を主張している。