「旅立ちを抽象的に描いた作品」夏の終わりに願うこと 雨雲模様さんの映画レビュー(感想・評価)
旅立ちを抽象的に描いた作品
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あらすじにも記載されているように、主人公のソルが病気療養中の父親トナの誕生日パーティーに参加するために祖父の家へ母ルシアと共に向かっている道中に橋に差し掛かると、渡っている間に息を止めていたら願いが叶うというゲームをやり始める。橋を渡りきりソルがルシアに願ったことを打ち明ける。
パパが死にませんように。
7歳のソルには、父親が今どんな状況におかれているのかも、祖母の死ですら何で亡くなったのかがわかっていない。つまり、人の死という概念がないから理解が出来ない。
わかっていなくて当然だと思う。
だから、父親といつになってもあえず苛立ちを募らせ落ち着いていられない心情が伝わってきた。
その一方で大人たちが話す、トナの治療費をどうすべきか、父親ではもう金銭面で工面が出来なくなっている、延命治療を受けるべきか否かって話も、治療する期間が長くなればなるほどお金が消えてしまう。そんな会話のやりとりで次第に答えが見えてきた。今まさにあの世への階段を上ろうとしている最中なのだ。
そして迎える誕生日パーティーの際に、トナが立つのも支えがないぐらいの弱った身体を、来てもらった招待客に決して弱っている様子もみせずかたやトナが来年の誕生日にはもう祝えないことを重々わかっているから精一杯祝ってあげる。
パーティーが終わり、トナが寝ていたベッドは綺麗に整っていた。たくさんの方々に祝ってもらい旅立ったということだろう。
生きていてほしかったというソルの願いは叶わなかったが、トナがソルに生前に話した"いつもそばにいる"という言葉は間違いないだろう。
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