「星はいつも三つです。」夏の終わりに願うこと フェルマーさんの映画レビュー(感想・評価)
星はいつも三つです。
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リラ・アビレス監督『夏の終わりに願うこと』
奇跡のような作品。
主人公は七歳の少女。闘病中の父の誕生パーティーに親戚や知人が大勢集まる。パーティーの一日を描く。
冒頭、少女と母親が公衆トイレで用を足す場面。少女が便器を空けないものだから母親は我慢できずに洗面台で用を足して
しまう。
また父はもう起居もひとりではできず、失禁してしまうのが厭だといってパーティーに出たがらない。
集まる親類たちの細やかな気遣いや、気遣う者同士であるがゆえのちょっとした諍いの場面がフラットに重ねられていきます。
夜になってパーティーが始まるが父はなかなか姿をあらわさ
ない。少女はいらだち、パーティーの参加者がふざけて操作するドローンに棒を投げつけたたき落とす。
ようやく父が登場。ひとりひとりと心のこもった交流。小さな気球があげられるが、炎が燃え移り気球は落ちる。炎に照らされた少女の表情の美しさ。息を呑みました。
父へのプレゼントとして母
親に肩車された少女がオペラ『ルチア』のアリアを口パクで歌う。見惚れるほどの少女の表情の豊かさ。
そしてバースデーケーキのロウソクに照らされた少女の顔。パーティーのざわめきがスニーフアウトしてなにやらわからぬノイズになる。一分間以上、少女の顔だけを押さえ続ける。目を伏せ、目をあげ、微妙に移り変わる少女の顔。スクリーンを凝視していると少女が急に大人になったようにも見えます。
このカットの演技、監督は少女にどういう指示を出したのか。どうすればこのような表情が可能なのか。ラスト近くの奇跡のカットでした。
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