劇場公開日 2024年8月9日

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「正直言うと、ちょっと嫌っていた私。。」夏の終わりに願うこと TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5正直言うと、ちょっと嫌っていた私。。

2024年8月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

感覚として、盆や正月は自分の好みの映画があまり劇場にかかりにくい印象があります。今週は何も観ずに見送ることも考えましたが、以前、ヒューマントラストシネマ有楽町で『WALK UP』を観に来た際に気になったトレーラー、子供がメインの映画3作『SCRAPPER スクラッパー』『クレオの夏休み』と本作『夏の終わりに願うこと』。結局のところ、全部劇場で観たことになりますが、中でも本作はIMDbやRotten Tomatoesの評価も高く鑑賞前から期待がやや高めでした。なお、初日第1回目(12時50分~)の客入りはそこそこです。
と言うことで、鑑賞前にまず気になっていたのが原題『Tótem』。ちょっと調べてみると恐らくは信仰の対象のようなものであり、確かに本作でもそれを思わせるシーンや表現などが多く出てきます。とは言え、直接的にスピリチュアルなことは少なく、それぞれが生きていくための指針であったり、或いは生活そのものであったりとむしろ日常的。そして、そここそが本作の主人公である7歳の少女ソルにとっての「通過儀礼」に深く関わります。逃れようのない悲しい現実に対して複雑な心境で向き合い、そして彼女なりの折り合いをつけていく言動、或いはその様子の一つ一つに切なさを感じます。からの終盤、とあるものを強い眼差しで見つめ、そして何かを念じていると思わせるシーンはとても印象的。ソルを演じるナイマ・センティエス、とても素晴らしいです。
ただその一方、ソルに感情移入すればするほどマイナス要素も思ってしまう私。国民性もあるのかもしれませんが、もう少し病人への労りと父娘の残り少ない時間を優先してあげて欲しいと思ってしまったり。。「自分はこれだけあなたを愛しています」の表明(合戦)は尊いのですが、1時間延長してやっとこさの娘(with妻)によるメーンイベントなど、バースデイパーティー全般についついイライラを感じてしまって本末転倒に。まぁ、言い換えればそれだけ心を持っていかれているのですが、、、
とは言え、そんなクサクサすら一気に反転、ついつい微笑まずにいられないのがソルの従妹、エステル(サオリ・グルサ)。母や猫、そして祖父との絡みに思わず笑わされてしまいます。まさに無邪気とはこのことで、だからこその大人に気を使ったソルが見せる「無邪気な振る舞い」との対比としても秀逸な演出になっています。
と、レビューの途中にも「好き嫌いの範疇」にて逡巡はしたものの、結局のところキャスティングや演出諸々が素晴らしく、監督、脚本そして製作にも加わったリラ・アビレス監督、今後も注目せざるを得ないと感じました。感服。

TWDera