「国際結婚の身として共感した」パスト ライブス 再会 emmeさんの映画レビュー(感想・評価)
国際結婚の身として共感した
ずっと観たいと思っていた作品をやっと観ることができた。
この作品は正直、今わたしがこの境遇に在るからこそ感じられる苦しさや迷いや懐かしさがあると感じた。
ナヨン、ヘソン、アーサー、
それぞれの登場人物に想いと記憶を重ねながら観ていました。
わたしの夫は英語圏では無い国の人。英語もピカイチに上手な国だけど、第一言語は英語では無い。
その点で、わたしが最も感情移入できたのはナヨンの夫でユダヤ人のアーサーだった。
ナヨンとヘソンが韓国語で話す中、日頃ナヨンと英語で話すアーサーが蚊帳の外になっていたバーのシーンは、アーサーの気持ちが痛いほどわかった。
母語を話すふたりに罪はない。
言葉はわからないけど、話題のムードやニュアンスは感じ取れてしまう。
'ナヨンの韓国語をわかりたい'と、韓国語を学び始めるところや、「僕が入れない世界がある」と不安になっていた気持ち、とてもとてもわかる。と感じた。
ナヨンとヘソンの縁についても、
12年ぶりにネットで再会できたのにすぐに会えない距離にいて、さらに月日は流れた。
その一方で、約束をしたわけでもない赤の他人だったナヨンとアーサーは偶然出会い、長い時間はかけずに夫婦に。
「因縁」がキーポイントになっている今作で、
ナヨンを中心としたこの3人の人生が交わる様をリアルに描いていた。
エンドロールの手前では、
まだなにかすっきりとしないものが見えるヘソン。
「縁とは何なのか」…?
想い続けていた期間よりもずっと短い、ニューヨークでの3日間。
再会した今、彼女には夫がいるという事実や、彼女らしく生きる様を見て、
ただ過去を振り返るだとか、来世に思いを馳せるというような、漠然とした想いだけを抱えて韓国への帰路に立つというのは、夢物語のようだったのではと感じる。
そして、韓国人であるという記憶と事実は理解出来ているのに、幼少期に移り住んだニューヨークで大人になったことでアイデンティティがここにあることや、
アーサーという紛れなく愛する夫がいること、
それらに葛藤するナヨンが涙を流すシーンにはぐっと心を持っていかれた。
最後の最後まで何か決定的な言葉や、大きな展開があるわけではないが、
なにか、わたし自身が日本人でありながら外国人の夫がいて、外国に住んでいる日々を過ごす中で、
感じたことのある一部分を切り取ってスクリーンに映し出されたような気持ち。
言葉の壁、国境の壁、アイデンティティ、自分軸がぶれるような想い、
とても言葉にできない複雑な心境を
こんなふうに映像にできていることに感動しました。
余韻の残り方がまるで自分の記憶かのような。見覚えのあるそれらが紡がれた作品でした。
