「主人公には共感出来ませんでしたが、出演していた男性陣には強く共感しました。」パスト ライブス 再会 オニオンスープさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公には共感出来ませんでしたが、出演していた男性陣には強く共感しました。
この映画の第一印象は、主に男が読むラブコメ(出てくる女子がみんな自分の事を好きになったり、Hなハプニングが起こる)を極めて現実に即して、上品に仕上げ、非常に女性的な物語という印象です。
以下、自分語りが多くキモいと思いますがそれでもという方のみ、お読み下さると幸いです。
また、男の視点からしかこの映画を捉えられていないので、ノラへの言及は少ないです。
小心者で自信が無い自分には、男性陣の一挙手一投足に共感してすごい刺さりました。
僕は中学から男子校でして、彼女はもちろん、女友達もいない状況です。
なので恋愛が小学生止まりです。
ただ数年ぶりに、地元の夏祭りで初恋の相手と再会し奇しくも本作と同様にLINEなどで話し合う仲になるのですが、もちろん彼女をデートに誘う勇気なんてなく、もうそれきりです。
だから、前半はもろにヘソンと同じ様な体験をして(スケールと年数は全く違いますが)12年間も探したのに、会いに行けないのもすごく分かるんです。
自分に自信が無いんです。彼女はNYでバリバリ働いてて自分はただの学生とを比べての劣等感なのか、淡い恋だったモノへの変化の不安なのか、微妙で絶妙な距離感が崩れることへの恐れなのか、もしかしたら本当に都合が合わなかっただけなのか、様々な解釈ができると思います。
また、男だけの空間に放り込まれると(ヘソンは兵役)もっぱら思い出す女性は自分の初恋などの大切な人、もしくはAV女優とかその場限りの人、ぐらいしかいないんですよ。
だから、会いたくなる気持ちも分かるんです。
それを恋と呼ぶか、性欲と呼ぶか、賢者タイムと呼ぶか、純愛と呼ぶかは分かりませんが、いずれにせよ前半のヘソンに対しては割と解像度高く共感して見れました。
ただ、後半はヒロインの旦那アーサーに感情移入というか、同情というか、ある種の尊敬みたいな気持ちになりました。
「これはデート(僕は下心と捉えました)の映画ではなく愛を描いた映画」とパンフの中で監督は仰っていましたが、僕は「その愛は純粋で、下心は本当に無いんですか?」と強く問いたい!!!
問題は2回目の再会です。
そもそも、12年も音沙汰なく、自分と彼女がうまくいっていないからという理由で会いに行くのは「それは完全に下心じゃないんですか?」とヘソンに言いたくなります。
友達でも、幼馴染でも、大切な人でも、なんでもいいんですが、もし上記に当てはまるなら、電車の中であの立ち位置は絶対考えられないです。お互い向き合って、目線も合わせて(もしかしたら地下鉄の構造上仕方ないのかも知れませんが)バチバチに異性として意識してると言わざるを得ません。
普通は横並びで吊り革か、気を使いながら座るかですよ。向き合うなんてカップルしかしませんよ。
また、周りはカップルや夫婦しかいない、川沿いやメリーゴーランド辺りを歩きます。
また夫婦では乗ったことない遊覧船(もれなく乗ってる客は夫婦ばかり)にまで乗って、気持ち悪い表現かも知れませんが肉体的なデート(手を繋ぐ、くっ付いて写真を撮ったり、イチャついたり)はしていませんが、精神的なデートは完全に楽しんでいる様に見えました。
そして、初恋の相手、ヒロイン、旦那の3人でバーで話し合うデートのクライマックスですよ。
ここはこの映画に割と批判的な方々と同じになるので割愛します。
ただ、「あなたたち、結構エグいことしてるけど大丈夫?」とヘソンとノラには言いたくなりました。
少し脱線しますが、僕の好きな映画の一つ「星の王子ニューヨークへ行く」の劇中のセリフで「愛とは尊敬なんだよ」というセリフが、個人的には愛を端的に表現していると思い大変気に入ってるのですが、今回のバーでの2人は旦那を差し置いてあんな話をするなんて尊敬の欠片もなかったと感じざるを得ません。
そしてさんざん「デート」を楽しんだ後、最後は完全な別れを悟ってか旦那の胸を借りて泣くという所業。
僕はノラという女性が怖くなりました。
終始、優しさと寛容さで包み込んでくれるアーサーにはただただ尊敬しかないです。
寝言の件だったりラストシーンには大変悲しく辛くなってしまいましたね。
「泣きたいのは絶対に旦那の方だろ」と思ってしまいました。
本作において、純粋な愛を貫いていた人物はアーサーしか居ないように見えました。
ただこの映画はすごい芸術的(というと思考停止みたいで嫌なんですが、それぐらいしか思いつかず)でずーっと綺麗なんです。
ロケーション然り、人物描写からセリフ、俳優陣の表情まで、また主な登場人物も3人と、フォーカスする人物を絞り内情奥深くまで知れた映画で大変楽しむことが出来、監督の手腕には感服しかありません。(ただ共感出来たのは、男性陣だけでしたが)
また、冒頭のバーでの3人への憶測もある意味の伏線になって後のアーサーの寂しさを際立たせる、非常に上手い演出だなとも思いました。
余談ですが、僕はてっきり物語前半の様な事が起こり、そこから発想を飛ばしこの映画を作ったのかなと思いましたが、パンフを読んでみるとバーでの件を体験しこの映画を作ったそうです。なんか監督の度胸と傲慢さには天晴れです。(すいません決して悪気はなく、褒めてます)
恐らくというか、確実に監督が意図しない男性陣に自分と重ね合わせるという形で、自分には大変深く突き刺ささる映画になったので、結果は高評価です。
高評価をつけておられるオニオン・スープさんに対して、作品と監督を貶すような書き方でコメントをしてしまい、申し訳ありませんでした。言葉が強く押し付けがましく、反省しています。
高評価をつけておられるオニオン・スープさんに対して、作品と監督を貶すような不快な書き方をしてしまい、言葉が強く押し付けがましいと反省しました。申し訳ありません。
素晴らしいレビュー、ありがとうございます。ヘソンの心理が理解できました。
同性ですが36歳パートのノラには嫌悪感があります
この映画はいい年の男女のしょーもない下心と駆け引きを美しい雰囲気で煙に巻いて香り高く仕上げた映画と思いました。監督の実体験がもとであるなら、堂々と世間に訴えてしまえる心理が理解し難い。度胸と傲慢さが天晴と私も思います。(多分褒めてません)