セールス・ガールの考現学のレビュー・感想・評価
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ワンダーウーマン、カティア!
冒頭、ゴミ箱に入りそこなったバナナの皮に胸がときめいた。バナナの皮ギャグから始まるんだ、この映画は!バナナの皮ギャグほど単純で笑えるものはない。そのあと何が起こるの?どうなるの?とワクワクした。そうしたら!なるほど!サロールがセックスショップでバイトせざるを得なくなる状況への導入なのでした!それがバナナ!人生、何が起こるかわからない。
表情が暗くて幼くて地味で口数少ない女の子サロールが、年上の海千山千のお節介で感性豊かなインテリ女性カティアに出会った。セックスショップのアルバイトとオーナーという立場で。咳き込んでいた自分に気がつき薬を持ってきたサロールに見込みあり!とカティアは思ったのか。この鈍くさい女子学生に伝えたいことが山ほどある!と思ったのか。何かとカティアはサロールを誘う。食事したりドライブしたりキノコを山ほど買ったりダンスをしたり釣りをしたり地面に穴を掘って嫌なこと埋めたり。そのあいだの二人の会話はすれ違ったり、ぶっきらぼうだったり思い込み激し過ぎだったり人生の真実だったり。苦しみを知ってるからこそ幸せが何なのかわかる、と、女同士の会話は困る、男との会話のが気楽でいい、この二つのカティアの言葉に私は共感した。
ゲジゲジ眉毛のサロールはだんだん変わる。重苦しい髪型が軽やかになり、少しメイクするようになり、おでこもちゃんと出す。そして自分が一番好きで勉強したかった絵画に進んでから表情豊かになり自分に似合う色とスタイルを見つけてカッコ良くなる。何より笑顔が素晴らしかった。
台詞は少なく映像や表情になるべく語らせている。音楽の入れ方もシュールで面白い。都会ばかりのシーンの中で、広くてずーっと平らな草原の地平線や釣り糸を垂れる流れが速い川と木々に美味しい空気を吸ったような気持ちになった。
モンゴルのお家に呼び鈴はなくてドアをノックするのかー。どっしりした木製ドアを叩き続けるのは手が痛くなりそうだし家の中の人にちゃんと聞こえるのかなあ。原子工学の先生も美術学校の先生もカティアもサロールのママも、中年の女性はみんなぽっちゃり体型。地に足がついていて辛さも幸せも知ってる感じで頼りになるあったかさを感じた。サロールもそうなるのかな。いろんな経験を経てサロールの未来に幸がありますように!
モンゴルロックって良い
猫が被れない店を通して自分らしさを学んだ
漫画『情熱のアレ』(花津ハナヨ作)も主人公の可愛い女の子が親の経営するポルノショップを手伝いながら心身ともに変化していく話なので、そんな感じかなと思ってたら、ちょっと違った。
今を生きる若者と昔の時代を愛するマダムとの価値観の違いと、にもかかわらず同じ時間を楽しめる気の合う感覚が2人にはあったのだと思う。
人が入りにくい場所は、人間の本性みたいものがすごく露わになる気がするけど、主人公は顔色ひとつ変えずどんな客が来ても超冷静に対応するのも面白かった。
みんな場所に合わせて色んな猫飼い慣らして人前出る時はどれか被って生きてるけど、本能の前では被れる猫がいないのよね。
アフタートークをお聞きすると、この映画は社会主義国から民主主義国へと変化したモンゴルの社会的思想が色濃く反映した話だったようだ。
社会主義時代はロシア語が第二外国語だったため、エリート層はロシアに留学をすることも多く、つまりロシア語ができるということはある意味とても教養があるということを示唆しているらしい。
それを知ってこの映画をみるとまた違うものが見えてくるのも面白い。
クソ真面目地味女子がどんどん垢抜けてキレイになっていく様も見所の一つ。
「苦しみを知って幸せを知る、幸せだけというのはない」というカティアの言葉が心に残った。
モンゴルで使われている文字がどんなのかも知らないで観た映画だけど、どちらかというと中国なのかなと思っていた国への偏見が変わった。
大人のおもちゃ
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