劇場公開日 2023年4月7日

  • 予告編を見る

「意欲は応援したいが・・・」世界の終わりから Jongoさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0意欲は応援したいが・・・

2023年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1か月前に『SSSS.GRIDMAN』を見た身からすれば、
「これは新条アカネを主人公にした、暗黒版グリッドマンだ!」
と思わずにはいられない。

映画のほとんどが彼女の主観によって語られることから、
ほぼこれは彼女の心の中で行われている話と解釈できる。

17歳の彼女にはあまりにもむごすぎる運命。
やっと自分の味方を見つけても、一人また一人と奪われていく。
紀里谷監督が世間から受けてきた批判が投影されているであろうことは、想像に難くない。

そのような心情で作られた作品だと理解はするが、やはり手放しに称賛することはできない。

まず、説明台詞が多すぎる。
夏木マリの老婆はいくら何でも喋りすぎだし、伊東蒼も「つまり〇〇ってことですか?」と毎回重ねて確認するため非常にくどい。おそらくここをもっとタイトにすれば120分以内に収まったのではないだろうか。

演出や撮影も上手いとは言えない。
例えば冒頭、女の子が茂みの中で侍をやり過ごすシーン。侍と女の子を一度も同じカット内に入れていないので、彼女がどれくらいの距離感で侍をやり過ごしたのかがわからず、緊迫感がない。この冒頭から一事が万事、このような惜しい画が続く。

結果として技術的な部分には苦言を呈する形となったが、紀里谷監督が非常に稀有な人材であることは疑いようがない。独特なルックを持っているだけでも日本では珍しいのに、しっかり作家性も持ち合わせている。あとはその作家性を一緒に実現してくれる優秀なスタッフが十分に存在すれば、まだまだクリエイティブな作品を生み出す余地はあると感じた作品だった。
今回で引退とは、非常に残念である。

Jongo