「この残酷な世界は救うに値するのか?」世界の終わりから シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)
この残酷な世界は救うに値するのか?
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文句なしに紀里谷監督の代表作になるSFファンタジーです。天涯孤独の17歳の少女が夢の中で見たことが世界の運命を変えると言う設定は、フツーならアニメ作品になりそうですが、あえてリアリティのある実写で撮っているのが挑戦的です。一見分かりにくそうな設定やストーリーをセリフだけで説明するのではなく、シャープで美しい映像と鮮やかな場面転換で、うまく映像世界に引き込む手腕は素晴らしいです。そして、差別、貧困、孤独など社会の負のスパイラルに加えて、世界を終末から救うミッションの重圧に主人公が、この世界は救うに値するのか、疑問を持つまでの心理描写は圧倒的です。結果として、世界が滅亡してしまうのも、当然の帰結と思えます。彼女の経験する過酷で理不尽な現実は、まさに現在世界中で発生している紛争や暴動の縮図であり、自分のことしか考えない非寛容な現状を痛烈に批判していると思います。役者では、終始苦しみ続ける、ある意味異様な役柄を演じ切った伊東蒼が断トツで、彼女なくして作品が成立しないくらいです。脇を支える夏木マリの芸達者ぶりや、出番が少ないけどインパクトのある冨永愛も良かったです。
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