「1クールアニメ作品としては不満が残る」アイドルマスター ミリオンライブ! 第3幕 CIRROさんの映画レビュー(感想・評価)
1クールアニメ作品としては不満が残る
今回の3幕では未来達と765ASの先輩との交流、静香の父親との関係、そしてシアターのこけら落とし公演が描かれます。
その中でアイドル達がどのように活躍し、その中心となる未来とプロデューサーの物語がどんな形で描かれるのかによって評価が決まると考えていました。
結論から書くと、アイドル達の描写の弱さや1クールの物語として上手くまとまっていない部分が見受けられ低めの評価となりました。
以下がどうしても気になってしまい評価を落とした点です。
・キャラクターの動きの省略
9話で未来達は765ASのバックダンサーを務めるべくレッスンに臨みますが、先輩達のレベルの高さに付いていく事が難しいという壁にぶつかりました。
ですが肝心のダンスレッスンの描写は省かれレッスン後にへたり込む未来達が描かれるのみでした。
過去の劇場版のアニメでもバックダンサーの研修生がレッスンに付いていけないという状況がありました。そこでは実際にダンスシーンが映り、足がもつれて倒れるなど具体的な描写がされていました。
最終話のライブシーンにリソースを集中させるために思い切って描写をカットした、と納得できなくもありません。ですが劇場版とテレビシリーズの差はあれど約10年前のアニメから表現が後退してしまった印象を受け残念に思いました。
アイドルの動きを省くという点では2幕での記者会見のシーンでフラッシュがたかれていて明らかに止め絵でないシーンにもかかわらず、アイドル達がまばたきすらなく微動だにしないシーンが悪い意味で印象に残っていました。
そのため「動きを省略する」事に対してネガティブなイメージを抱きやすい下地が出来ていた事も評価を落とした要因としてあります。
・未来とプロデューサーの物語の弱さ
こけら落とし公演中に機材トラブルで音楽や照明が止まってしまうトラブルがありました。
これは実際のライブでの出来事の再現という事でした。こうした事故をアニメのエビソードとして取り入れる事の是非については置いておくとして、クライマックスの演出としてうまく機能していなかったのではないかと思いました。
このトラブルの発生後、未来とプロデューサーはライブを止めたくないという気持ちを吐露します。
しかし具体的な行動を起こす事なく、観客のクラップによる場つなぎからの機材復旧でトラブルは解消してしまいます。
未来が「ライブを止めたくない」という思いでスタッフルームに向かうシーンでは、彼女がどのようにクライマックスを乗り越えるのかと期待して見ていましたが運良く機材が復旧して終わりという決着に拍子抜けしてしまいました。
プロデューサーについても何か手を打ってくれるのかと思いましたが、ライブを中止させたくないと言うばかりで何かアクションを起こす間もなくトラブルが解決してしまいました。
3幕で未来がどのように壁を乗り越え成長するのかを期待していましたが、そうした描写は見られず2クール作品の1クール目程度の進行度に留まってしまった印象です。
・プロデューサーの役割の少なさ
前述のシーンだけでなく、今作のプロデューサーはアイドルを導くという役割を果たす場面が少ない印象です。静香の家庭問題においては静香の父親をリサイタルに呼ぶきっかけを果たしましたが、未来・翼に関してはそれが稀薄です。
今作で翼が成長するきっかけを作ったのは美希からの言葉であり、そこからこけら落とし公演でソロのトップバッターを志願するまでプロデューサーが翼に何か働きかける描写は見られませんでした。
アニマスの美希との差別化を図ったのかも知れませんが、アイドルとプロデューサーの物語としては描写が物足りないと感じました。
また未来に対してもプロデューサーが成長を促すような描写も見られないまま最終話のライブを迎えてしまった点が気になりました。
・39人の中での出番格差
チーム1stから8thの中でライブシーンの扱いに大きな差が見られました。チーム8thは最終話でしっかり描かれた一方、チーム7thは合宿中の余興でのジュリアの弾き語り+他のメンバーが後ろで踊るという形で消化されてしまいました。
物語を動かすうえで登場人物の出番に濃淡が付くのは仕方のない事ですが、アイドルのライブシーンが肝となる本作ではちゃんとした舞台での描写が欲しかった所です。
2期が予定されていてそこでアイドルの活躍が補完される可能性もありますが、上記の点を踏まえ1クールのアニメとして見ると不満の残るものでした。
また、以前のレビューではファンにはおすすめと書きましたが、出番格差をどこまで許容できるかによってファンの評価も異なると思われます。
1幕の際も書きましたが、値引きの効かない特別料金であること、間を置かずに地上波や配信で視聴出来る事を考慮すると積極的にお勧めしづらい作品という評価です。