アンダーカレントのレビュー・感想・評価
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役者陣の妙と独特の空気感で観る者を惹きつけるミステリー
人が一日の体の疲れや汗や汚れを洗い落とす銭湯という場所。ここで働く主人公の女性は、かつて蒸発した夫への「なぜ?」という思いを抱えたまま生きている。また、臨時で雇った従業員の男もここで働きたいのか理由を明かさぬまま、ただ寡黙に仕事に打ち込む。お互いに深くは語らないし、聞かない。だからこそ二人はどこか居心地がよく、互いにとって程良い温度の「お湯」のような存在になり得ていくのかもしれない。本作は彼らの関係性を軸に、常連客たちや同級生や私立探偵らが入り乱れ、飄々とした人間ドラマを奏でる。不在や記憶をめぐるミステリーも顔を覗かせるが、「なぜ?」を深追いしないところが本作の特徴か。主演の二人はセリフの少ない場面に言葉未満の「想い」がそこはかとなく漂う様子をナチュラルに作り出す。決して急がず焦らず醸成されゆくその空気が心地良い。不思議な透明感に吸い寄せられつつ、思いがけない感情へ誘われていく一作である。
人間関係において真実を話すということの重要さ
真実を、自分の気持ちを話すことは怖い。
相手を傷つけてしまうかもしれないし、否定されるかもしれない。
だけどそれをせずに逃げていると、相手との関係性は、未来は築けない。
逃げずに相手と向き合うこと。自分と向き合い、相手に本当の気持ちを伝えること。これが生きていく上でとても大切なものなんだなと感じました。
ミステリーかと思いきや
理由しょうもな。人間てわからないものですね。知ってると思ってたら全然知らない一面を持っていた。そして自分にも明かせない、というか記憶から抹消されていた過去が。そーゆー潜んでいる部分をアンダーカレントというのだろう。ラストシーンはホッとしました。。
心の底流とは
原作は月刊アフタヌーン誌で2004年に掲載された豊田徹也氏の漫画だそうです。
『ほんとうはすべて知っていた。心の底流(undercurrent)が導く結末を。
夫が失踪し、家業の銭湯も手につかず、途方に暮れる女。
やがて銭湯を再開した女を、目立たず語らずひっそりと支える男。
穏やかな日々の底で悲劇と喜劇が交差し、出会って離れる人間の、充実感と喪失感が深く流れる。
映画一本よりなお深い、至福の漫画体験を約束します。
「今、最も読まれるべき漫画はこれだ! すでに四季賞受賞作で確信していたその物語性と演出力に驚く。豊田徹也は心の底流に潜む、なにかの正体を求めるように静かに語る。」──(谷口ジロー)』
(アフタヌーン公式アンダーカレントより)
もともと映画のようだと評された漫画で、BookliveにもAmazonにも、雰囲気で乗り切ることなく、リリシズムを支える芯のような何かがある──といったレビューが並んでいました。
逆に映画は雰囲気で乗り切っていました。
雰囲気で乗り切ったように見えるのは「人をわかるってどういうことですか?」という命題に、話も気分も達していないからです。とうていそんな哲学を掲げる映画にはなっていません。
かなえは銭湯を経営するただのおばさんですし、探偵はたんに怪しいだけで、堀さんは何を哀しがっているのか解らず、失踪したかなえ旦那はたんなる統失にしか見えません。
もしそう見えないのであれば、よく見る俳優たちなので、善意でイメージ補完したのだと思います。ただしさいきん(2024年)かなえ役女優に炎上さわぎがあり、併せてアンダーカレントの評価点も下がった気がします。イメージだけの映画なのでイメージが大事なわけです。
映画のようだ──と評された漫画を映画化するのは、果敢でもありますが、絵コンテが出来上がっているようなものですから手っ取り早いとも言えるはずです。原作漫画の完成度に依存した映画だと思いました。でも魂はありません。
韓国映画のはちどり(2018)で14歳のウニは中国語塾に通っています。あるとき塾で大慧語録の相識満天下/知心能幾人を習いました。『この世に知っている人は大勢います。だけどほんとに理解しあっている人はいますか』という意味だそうです。そのくだりは切実で心にしみました。が、この映画の命題「人をわかるってどういうことですか?」は愚かなポエムにしか聞こえません。
漫画の世界観を映像化したことで、ごっそり魂が抜け落ちたという感じでした。
朝食が旅館のような焼き鮭と卵焼きがきれいに並んで正座してご飯味噌汁おかずを三角食べしていました。傍らに炊飯器があっておかわりはどうですかとかぬかしてました。揃いの食器で箸置きを使うようなごく丁寧な食事風景を日本映画でひんぱんに見かけますが、個人的には不自然だと思います。
そこにテーマがあるんじゃない
個人評価:3.8
人はいとも容易くいなくなる。
嘘と本当が交差する人生。それをゆっくりとしたトーンで描いていたと感じる。
ただ原作未読だが、最後のそのシーンを逃げるかね。原作もそうなら、そこにテーマがあるんじゃない!?
黄色い風船
原作未読であるが、実写においてその世界観に違和感を感じる点も多い。下町感が強いおじちゃん・おばちゃん。その肉体と軽装備で男の住み込みを認める真木よう子に首を傾げる。終盤の瑛太の論は取り上げるに足りるとも思えず、ラストまで入りこめなかったところ。
人間再生の素晴らしさ
人は嘘をついてしまうことがあります。しかし、人はその嘘を明かさなければいけない時があるように思います。そしてその嘘を明かすことによって、人間は再生すると思っています。この映画は、人間再生がテーマの素晴らしい映画だと思いました。
真木よう子さんの演技は、情感にあふれていました。リリーフランキーさんの柔らかくユーモラスな演技が光っていました。カラオケボックスのシーンでは爆笑させられました。井浦さんが最後に自分のことを話してくれて嬉しかったです。サスペンスの要素もしっかり入っていますので謎が好きな方にもお薦めします。この映画を製作した今泉監督及びスタッフの方々に深く感謝申し上げます。
井浦さんが印象深かったです
見逃していた『アンダーカレント』がレンタルになっていたので鑑賞しました。
大変良くて映画館で観ればよかったと思いました。近くでは私の苦手な新宿バルト9でしかやっていなかったので、次からは別の街にも足を伸ばします。
バルト9…行きつけの美容院の人も嫌いだと言っていたっけ…何かあるな。
行間を味わう文学的な作品。人をわかるってどういうこと?
原作漫画は読んでいて、映画向きの話、と思っていましたが、原作と同様に行間から滲み出るものを掬うように味わう文学的な作品。個人的にはとても好みでした。
どういう話?と聞かれて、あらすじを説明しても主題が伝わる類の映画ではないのは確か。
人をわかるってどういうことですか?
これはとても深い問いで、私もすぐには答えられません。
また、わからないことはわからないし、わかることはそのうちわかる、それでいいんだと思います。
それにしてもリリーフランキーが最高です。カラオケのシーンはいま思い出しても笑えてきます。
井浦新もこういう役がハマりますね。
ちょっとひなびた銭湯や常連客の雰囲気がたまらなく懐かしく、どこかへ帰りたい気持ちになりました。
「でも、何で?」と理由を聞きたくなるような感覚
劇場鑑賞するかどうかの判断基準について、最も重要な要素と言って過言でないのが「監督」です。これは通を気取っているわけでなく、自分にとっての作品に対する好き嫌いが予想しやすく、特にご自身で脚本を書かれる監督ならなおさらです。そんな「見過ごすことができない」監督の一人が今泉力哉監督です。
ただ、候補にまで上がっていても、最終的に無視できないのが作品が掛かっている劇場と、その上映時間によっては気にはなっても諦めることがあります。また、年間100作品以上は劇場鑑賞する私にとって、やはりコストは無視できません。例えば、新宿バルト9は自宅からも職場からも距離があり、さらに安く鑑賞できる方法が基本平日のサービスデイとなると、結果的に「配信待ち」してしまう作品も少なくありません。そしてこの『アンダーカレント』もバルトか、、と思っていたら、今回角川シネマ有楽町で掛かると知り、喜び勇んで参戦です。
で、感想なのですが、、、正直まとまらないんですけど、うなりましたね。当然良い意味で。「なんか、すげーな」の一言です。
後半に明かされていく登場人物たちにまつわる謎は、観ている段階で「ひょっとしたら」と想像ができて特に意外性はありません。それはミステリーでありながら、流行りの「伏線回収」を狙ったようなものでなく、登場人物に自分を重ねつつ「でも、何で?」と理由を聞きたくなるような感覚。
人は他人のことを解らないばかりか、自分のとった言動に戸惑ったり、説明がつかなかったりすることがあるように、自分自身のことだって解ってはいないと気づくことがあります。今作『アンダーカレント』はまさにそういう部分の興味深さに、ついつい「あの場面って」と他の人の意見を聞いてでも、理由を確かめ合いたくなる作品な気がします。何なら正解なんて一択な結論はなく、観る人によって作品や登場人物に自分を重ねるからこそ、それぞれ解釈が異なるような複雑で面白いと思える構造に思わず感嘆するのです。
そして、そのストーリーをいつしか「リアリティー」と錯覚して見えてくる演出と、役者たちの演技がまた素晴らしいですね。それぞれのキャラクター性に明確な役割を感じ、この人しかありえないと思えるキャスティングの気持ちよさがあります。中でも、キーマンは「サブ爺(じい)」こと田島三郎を演じる康すおんさんですね。なお、私は今回も原作未読なので、もし原作ファンに異論があればご容赦いただきたいのですが、少なくとも、この映画の中ではいろんなものが「見えている」老人であり、若者たちの拠り所ととして聖職者のような存在感に観ているこちらも救われます。
さて、今まで敢えて聴かずにとっておいた某ラジオ番組の映画評論と、ネタバレありの番外編を楽しもうかな。そして、時間をおいてもう一度観て、その時々の見え方や想い方を比べて楽しむような「しゃぶりつくせる」旨味を感じる一作です。感嘆。
青色、水がずっと頭から離れない
美しいポスター、真木さんの表情 このポスターやチラシだけでも引き寄せられる さらに今泉監督となれば、緊張感を持って劇場に向かいました かなり以前の原作があって、それだけに皆さんの評価も様々でありましたが、現実的であってもなくても、このテーマは常に私たちにはあります 最も近くてわかっているはずの夫婦が実は最も遠くてわからない関係・存在であることに気づいてしまうこと、知りたくない気づきたくなかった「事実」
に直面すること、こうしてスクリーンで観ると、改めて「真実に蓋をしている」観る者に突きつけられるものを感じます 井浦さんは常に安定、言葉が少なくてもその思いが感じられます 最初の日にあれだけ吠えていた犬が穏やかになるのも、犬にすら彼の思いが伝わっているかのような場面でありました ラストをどう解釈するか、「希望」を感じずには、祈りたい、願いたいと思いました 随所に出てくる「水」、彼女にとってしまい込んでいた記憶が呼び起こされたのも水、しかしこれからの生活も水に向き合っていかなくてはならない 井浦さんのバッグ、真木さんの鮮やかなお出かけ着は鮮やかな赤色でありましたが、アンダーカレントは青色そのものです (11月2日 イオンシネマ茨木にて鑑賞)
静かに流れてゆくもの。
とても淡々とした静かなストーリー。声を荒げそうな場面でも登場人物たちはそっと現状に向き合い、現実を受け入れてゆく。突然夫が失踪したかなえ。何故?どこへ?その気持ちを引きずりながら夫婦で経営していた銭湯をなんとか再開する。
そこへ働き手としてやって来た謎の男、堀。まるで湯船にお湯がはられるように時間が流れてゆく。堀の正体とは。かなえが封印した過去を巡るミスリードの要素もあり、大人の会話劇でもあり、実に今泉監督らしい時間の使い方だなと思いました。
正直真木よう子は作品によって波がある印象ですが、今作はとても良かったです。リリーフランキーのちょっと下品だけど的確な探偵も良い味出してました。夫の行動の真意がよく分からなくてその辺もう少し説明してほしかったです。
リリーさんは有能(役柄)
この間見た「福田村事件」の二人がまた同じ映画に出ている!と鑑賞。
「湯道」や「ブギウギ」などお風呂屋さんが舞台の映画・ドラマを今年はよく見る。スタイリッシュな感じなのかなとチラシなどのパッと見の印象で思っていたら。。
だいぶヘビーな思いを抱えた人たちの話だった。。だから心に蓋をしてしまったんだろうかと。真木よう子演じる主人公の過去はショックだった。
筋とあまり関係ないけど、リリーさんは歌上手い。そして、赤ちゃんが可愛かったわ。
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