「今泉力哉監督からの挑戦状」アンダーカレント Lhowonさんの映画レビュー(感想・評価)
今泉力哉監督からの挑戦状
Bill EvansのCDは何十枚と持っているが、名作といわれるUndercurrentは苦手だったりする。Scott LaFaroよりPaul Motianの方が重要だと思っているくらいなので、水圧にリズムが抑制された状態がいやなのかも知れない。
今泉力哉監督作は止めておこうと思うのに、ヒトの評価が良いと見逃すのが悔しくて、チケットを買ってしまう。協業もしている城定秀夫監督作はエロ要素がなくても好きなのに、辛い評価をしてしまう。
今作は演技力が高いキャストを配した上に、演技を殺した芝居をさせているように思えた。劇伴はほとんどなく、彩度の高いものは写らないし、終わり方も、そもそも映画自体が水の中にあるような。これが江戸川区か?こういった作品は他にもあり、成功もしているが、今泉監督がやらなくてもいい気がするし、進化の過程とすれば不十分。
とういった順序で撮影しているか不明であるが、序盤は普通の会話をしているし、かなえが泣き崩れるところはつながり悪いし、悟の語りは長すぎて単調だ。映太が少しせりふを咬んだのをそのまま使ったのは良かったのに。深いプールのそこなのに、一部は波がアリ、一部は海流があるような感じ。
そして、たばこがやっぱり登場する。今までは、喫煙所から話がころがる映画だったのに、今回はたばこが全く出てこなくても問題なし。隆之の喫煙するタイミングは、キツイ銘柄をすっているワリには、ニコチン中毒者のそれではなく、井浦新はちゃんと肺には入れてない。たばこシーンを批判する、僕に対する挑発じゃなかろうか(自意識過剰)。原作ではどうなんだろう。
物語としては好きな分野なので、原作は楽しく読めるかも知れないが、今作は何かが欠落しているのだ。沈んでいくのは、池や風呂くらいで、1mもない。僕が見たいのは、Get Outでダニエル・カルーヤがかけられる呪いみたいな、底が知れない静さ、暗闇、孤独なのだ。