「赦し」赦し 山下達造さんの映画レビュー(感想・評価)
赦し
クリックして本文を読む
細かい部分、否、物語の根幹を成す部分に???な所はある。観る人によっては、そこが気になって仕方がない向きもあると思う。しかし、敢えて私はそこに目を瞑りたい。
決して交わることのない、加害者と被害者の目線。そこに真正面から挑もうとした姿勢は好ましい。驚くべきは、MEGUMI演じる被害者の母の心情の揺らぎ、振幅の激しさである。それをもれなく表現する彼女の卓越した演技には目を見張った。
正直言って、加害者へは「罰」のみを与えればよいのか「更生」に重きを置くべきか、私は答えを出せずにいる。カツは一度は加害者を刺し違えようと決意した。なにが更生だ!? しかし彼にはできなかった。ここで事を成し遂げて何になるのか? やりたらやり返す。加害者と同じではないか? 短い時間、加害者の謝罪の言葉は殆ど耳に入っていなかった筈だ。
刺し違えようとした、は私の解釈の間違いかもしれない。 カツは、ただ己の怒りを噛み殺す為にガラスの破片を握りしめたのだろうか?人を殺害する心と体の痛みを実感したかったのか?
それはタイトル通り「赦し」なのである。カツは加害者を赦す事で自らの心を晴らした。いや、いくら泣いても、悔やんでも娘は還って来ない。忘れる事しかない。カツにとり加害者を赦す、赦さないなど、どうでも良い事になったのだ。
コメントする