「イミテーション化石みたいな映画」SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる ひろゆるみさんの映画レビュー(感想・評価)
イミテーション化石みたいな映画
『日本人が演じる韓国映画』という表現を良く見かけますが、もっと正確に言うと『日本人が演じる2000年代の韓国映画』だと思います。映像美やミジャンセンは確かに2020年代のものですが、登場人物やセリフ、仕草などなどほぼすべてのものが古くてダサい感じでした。
『こんな日本人いないだろう』と仰る方もいましたが、『こんな韓国人』も2000年代を引きずってるかその時からあんまり変わってない人でなければもはや存在しないでしょう。特に2020年の時点の韓国人の20-30代前半だったらこんな人間達はほぼ全滅の筈です。監督は2004年のヒット作「私の頭の中の消しゴム」の感性そのまま今作を作ったのではないかと。
無性に走るヒロインなんかも2000年代の韓国映画ならあるあるの要素ですよね。「ザ・クラシック」とか(笑)。作中の菅原さんが『先生、ファイトです!』というセリフを発するシーンでは苦笑いしました。『선생님, 화이팅입니다!』と、両方の拳を上げて主人公を励ますキャラ、あんときの韓国映画、特に泣ける系でなら必ずと言っても過言じゃないくらいいましたね。
そんな母国の映画を、20代の私はものすごく好きで何度も映画館で観たりしましたが、今40代に、しかも韓国を離れ長年日本で暮らしている「昨今」の私からすると、この映画は現実とあまりにも乖離した挙げ句不気味でさえ感じてしまう怪作にしか思えません。こんな懐かしさのむき出しが監督の意図であれば、恐らくターゲット層は、冬ソナを筆頭とする「あんときの韓国映画・ドラマ」が今でも好きでやまないマニアの方々かもしれません。感性そのまま、キャラクターそのままで画像はもっときれいになり、しかもセリフは日本語。
全体的になんというか…このレビューの件名どおり、良い意味でも悪い意味でも化石みたいな、しかも2023年に20年も前の感性を再現しようとしたイミテーションのような映画な気がします。「2020年代に作った2000年代韓国映画」もしくは「令和の昭和映画」かな?(確か、あんときの韓国ドラマや映画は特定世代の日本人に平成の昭和作品みたいな感じでしたよね)
まあ散々文句言いましたが、それでも両国間に様々な交流があってこうやって韓国人監督が作る日本映画や是枝裕和監督の韓国映画みたいなものが出てくる自体は良いことだと思います。今度は既にレジェンドになった監督だけではなく、目下活躍中の韓国監督の日本語作品も見てみたいですね。