Firebird ファイアバードのレビュー・感想・評価
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愛よ不死鳥の如く
2月初旬の日本公開当初に映画館で観たのだが、レビューがずいぶんと遅れてしまった。
今でも印象に残っているのは、やはり、海の岩場に隠れてロマン大佐がセルゲイを抱く、ポスターのあのシーン。情熱的でありながら煽情的になりすぎない、バランスの取れた美しい描写だった。
ある日、芸術を愛する二人が出会って、惹かれ合い、愛し合う。普通のことだ。でもそれは厳しく禁じられており、疑いがあれば監視の対象になる、悪魔の取り仕切る場所でのこと。
ブロークバックマウンテンの主人公もそうだったが、軍から離れモスクワに行って二人で暮らそうとセルゲイに誘われても、国を守る使命感、軍人としてのアイデンティティを捨て切れず二重の人生を送り、その責を負うかのようにひとり国のために散った大佐。セルゲイに向けて自分の気持ちを吐露した手紙と、隠し持っていたたくさんのセルゲイの写真には泣いたT T。
悲劇だわーと思っていたが、タイトルにもなっているストラビンスキーのファイアーバードというバレエ作品についてググってみたところ、人さらいの手強い魔王を滅ぼした時、石にされていた人々は元の姿に戻り、王子と王女は結ばれるという、という力強い再生の物語だった。
監督のインタビュー読むと、こんなに抑圧されたところでも生き延びた愛がある、どうか皆諦めずに勇気を持って、と訴えたかったとのことで、それでこのタイトルなんだ、と納得した。
主演の二人、よかったです〜(拍手)
これが実話とは……。時代とはいえかくも非情。
広くLGBTQが浸透したとはいえ、今もって『カミングアウト』なる言葉があり、自然な受け入れとは言い難い。ただ、罪にはならない。ちょいちょい『ブロークバック・マウンテン』と重なる涙涙の作品でした。
余韻
同性愛に対する嫌悪感や偏見、当時の法律が生んだ切ないラブストーリー。
最初は愛し合って、なんだかんだ世間体から別れることになり、
偽装結婚や距離をおいたりするけど、結局は忘れられない、
これと同じような同性愛の物語はよくある
そうなんだけど、セルゲイ、ロマン、ルイーザの心情が伝わり、
感情移入してしまい、中盤から胸のドキドキ、バクバクがとまらなかった
みんなそれぞれの愛に向き合ってるだけに、つらい…
ただ最後にセルゲイの少しの笑みがあってよかった
観終わってからこのレビュー書くまでの数時間、
ずっとこの映画のこと考えるなんて思わなかった
切ないけど、観てよかったと思える映画だった。
愛することの難しさ
セルゲイもロマンも愛し合った事により
苦しみ合わずに上官と下官の
関係だけで終わってしまっていたのかも
お互いの趣味が写真というのも
興ずる点が多かった為に惹かれ合うのは
自然の流れだったのかもしれない
時代が時代だけに
お互い好きで惹かれ合う気持ちがあっても
社会がカミングアウトをすることを許さず
セルゲイは念願の役者の道へ
進むためにエストニアを離れロシアへ
一方のロマンはセルゲイの同僚で
女性将校のルイーザと親密な関係になり
二人は結婚
エストニアからロシアへやって来た
ルイーザからの報告にセルゲイは
複雑な心境を抱えつつも式に出席するため
エストニアへ戻る
久しぶりに会ったロマンと
再燃してはならなかった愛の炎が蘇ると
家族がいる立場でありながらも
ロマンはセルゲイとの関係を
断ち切ることが出来ずに
再び関係を持ってしまうことになる
最後はセルゲイがロマンから送られた
手紙の内容を見て慌てて基地へ連絡するも
聞かされた内容は"戦死した"
そこでセルゲイは最期の挨拶をすべく
ロマンの住む家を訪ねるのだが
待っていたのはルイーザが事の顛末を知り
相手が同僚だという複雑な心境を抱えつつも
裏切られた気持ちもあったために
セルゲイに怒りの感情を爆発させるのだが
セルゲイは反論することなく
ルイーザの意見を聞き入れると
二人はそっと抱き寄りエンディング
色々考えさせられる映画でした
そりゃないぜ
セルゲイそりゃないぜと最後に思いました(笑)なぜ家に来たのか?理解出来なかった ルイーザにそれを言う?
男女愛でなくても不倫です、ピュアな愛なら2人で完結させなさいと思った
二人にとってのファイアバードは、心の中でだけ翔ける隠匿の存在だった
2024.2.12 字幕 MOVIX京都
2021年のイギリス&エストニアの映画(107分、R18+)
原作はセルゲイ・フェティソフの自叙伝「ローマンについての物語』
ソ連領エストニアにて、パイロットと恋仲になった二等兵の苦悩を描いた恋愛映画
監督はペーテル・レバネ
脚本はペーテル・レバネ&トム・プライアー&セルゲイ・フェティエフ
原題の『Firebird』は、劇中で主人公たちが感激するイーゴリ・ストラヴィンスキーのオペラ『The Firebird』のこと
物語の舞台は、1900年代前半のソ連領エストニアのとある基地
そこで二等兵として従軍しているセルゲイ(トム・プライヤー)は、友人のヴィロージャ(ジェイク・ヘンダーソン)、ルイーザ(Diana Pozharkaya)とともにハメを外して遊ぶのが日課になっていた
国境が近いこともあり、司令官のクズネツォフ大佐(ニコラス・ウッドソン)やズベレフ少佐(Margus Prangel)はピリピリしていて、規律を重んじる基地としての機能を重要視していた
セルゲイは任期が終えたら地元に帰ろうと考えていて、大佐はそれを惜しんでいる
少佐はKGBとのつながりがあり、常に全隊員を監視していて、ルイーザは軍の通信を記録する係として赴任していた
物語は、その基地にパイロットのローマン・マトヴィエフ大尉(オレグ・ザゴロドニー)が赴任するところから動き出す
彼はセルゲイを気に入り、ルイーザは彼に首ったけになっていく
ヴィロージャは「セルゲイがルイーザのことを想っている」と感じていたが、実はセルゲイは同性愛者で、二人の接近を違う角度で見ていた
ある日、ローマンに指名されて出向したセルゲイは、そこでオペラ「ファイアバード」を一緒に観劇する事になった
セルゲイは劇に魅了され、任期が終えた後にモスクワの演劇学校に進むことを決める
そして彼は、ローマンにモスクワに来た時には尋ねてほしいと懇願する
ローマンはその言葉を受け取ったものの、二人の仲はKGBの標的になっていたのである
物語は、セルゲイとローマンの悲恋を描き、これが主人公セルゲイが後に記した自叙伝として世に残る事になった
それを映像化したのが本作であり、脚本にもセルゲイ本人、セルゲイ役を演じたトム・プライヤーが参加している
実に生々しい描写が多く、かなり美化されているように思えるのは、その思い出が記憶に定着している過程と似ているからだろう
本作にはパンフレットが発行されているのだが、これがまた規格外的な大きさになっている
サイズで言えばB4くらいの大きさになっていて、ぬいぐるみを入れる用の袋を購入することになった
なので、パンフレットの購入を検討している人は、かなり大きめのカバンなどを持参した方が良いのではないだろうか
いずれにせよ、禁じられた愛の中でせめぎ合う三角関係が描かれ、それが悲劇的な結末の中で向かう先を見失ってしまう物語になっていた
ルイーザとローマンの結婚は「愛はある」とは言うものの、彼女がそれを信じられるとも思えない
また、KGBへの密告が親友というところも罪深く、それを公言することもできない時代性が伝わってくる内容だったと言える
軍隊は規律を重んじる場所で、それが異性間でも許されないものもあるが、そんな中で、死と隣り合わせにある者たちの素直な衝動はこれぐらい激烈なものだったということだろう
濃厚なシーンは多いものの、R15+ぐらいだと思われるので、抵抗のない方は鑑賞しても良いのではないだろうか
興味深いソ連時代
18禁というから覚悟して観に行ったのに、私的には18禁でもなかった。
物語自体はこれまでにも何度も描かれてきたような感じである。
男同士で禁じられた恋に落ち、周囲に気取られて片方が保身に走って女性と結婚し、もう片方は若いだけに情熱的で割り切れずに苦悩しつつも、数年後ふたたび姿を現した妻子を持った男に惑わされて不倫の泥沼にはまり、破局を迎える——。
ただこれは同性愛が法律的に取り締まりされていた冷戦下のソ連時代の実話なのだ。しかも軍属。軍なんてただでさえ厳しい規律に縛られて窮屈なものだけど、それがソ連軍だなんてめったに見られるものではなく、冷戦時代の緊張感とか狂気のように厳しい軍隊内のあれやこれやが興味深かった。
ルイーザはセルゲイが好きだったんだと思う。でも少しも前に進まない関係に見切りをつけて、ロマーノに恋して結婚したのだろう。なんの罪もない彼女の悲嘆がつらい。
ロマーノは妻子を持ったことで同性愛疑惑が晴れたとでも勘違いしたんだろうな……。
ずるずると続いたロマーノとセルゲイの関係は思わぬ形で裁かれる。
KGBが暗躍していたようなソ連時代おそろしあ。
想いを秘めて、それぞれの愛の形
たしかにLGBTの話ではあるのだけど、それだけじゃない奥深さがある。
それぞれが、相手を想うあまりに人生をかけて、嘘を(嘘なのか?)真実のように見せかけて生き抜く。
切ない。
相手がだれであろうと、同じように心が震えるのに、自分を否定される心ない言葉にどれだけ傷いたことか。
それは昔だから?
今は違う?
大佐はなぜ、執拗に2人を追いかけたのだろう?
もしかして?
そんな疑問がわいてしまう。
Firebird。
舞台挨拶があるとのことで、そちらのチケットを取って鑑賞へ。
実話に基づいた、冷戦時代のラブストーリー。
というくらいの情報量で鑑賞したんですが、個人的には結構カロリーを持っていかれる作品でした。
セルゲイ、ロマン、ルイーザ
誰の視点で見ても、あの当時何が正解であったのか……答えるのは非常に難しいなと感じました。
私は序盤からセルゲイの目線で見ていたので、正直ロマンの態度に「嘘やん!!」と何度も思ってしまったんですが(苦笑)、もちろんあれはセルゲイの事を思っての行動でもあったわけだよな…と、理解はしています。
でも、セルゲイ目線で見てしまっていたので、正直つらかった。
小さなあの部屋で、膝を抱えて声を押し殺しながら泣くセルゲイが、あまりにも悲しすぎて。
後半になるにつれて、ストーリーの展開っぷりに何度溜息ついたか分りません。
心がしんどかった。
ロマンの気持ちは、あの手紙の文章と、あの写真が全てかなと思いました。
ルイーザと子供に対する気持ちはあったでしょうけど、何よりも大事だったのはセルゲイだったんじゃないかな。
エンドロール前のラストシーン、涙を堪えられませんでした。
そこまで耐えていたけど、あれはダメだった。
あの時、セルゲイはどんな気持ちだったんだろう。
そして、エンドロール後、ですね。
あの1カット。
声出してOKだったら、多分「このクソが!!!!!!」って言ってたと思います(笑)
正直、あの1カット必要だったのか??と思うんですが、「そういう時代であった」ということなんですかね。
俳優陣が本当に綺麗で美しく、もちろんあんなシーン、こんなシーンも含まれていますので、そういったところが見たい!!という方にもおすすめです(笑)
主演のお2人の肉体美たるや。
風景や音楽も素晴らしいと思いましたし、本当に見て良かったなと思う映画でした。
タイトルでもある、Firebird。
このバレエのお話し、あらすじ等を頭の片隅に置いて見ると、色んな捉え方が出来るのではないかと思います。
自分としては、Firebird=ロマン。
ですね。
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