Firebird ファイアバードのレビュー・感想・評価
全28件中、1~20件目を表示
同性愛=厳罰の時代に起きた実話
最近は同性間での恋愛にも理解がある人が増え、
だからこそ当事者は以前よりも
それを公表しやすい社会という印象がある。
ただ、この同性間での恋愛への理解度が増したのは
10年も満たないくらい最近の話のように思う。
作品は約47年前の実話を元にしており、
時代が違えば…と思わざるを得ない作品。
あらすじ
1977年、エストニアで兵役中のセルゲイと
その上官 ロマンは互いに惹かれ合う。
同性愛が禁忌とされるこの時代、
誰にも関係を打ち明けられずに
隠れて逢瀬を続ける彼らは、
月日が流れても互いへの愛を捨てられない。
徐々に関係が気づかれ始めた彼らの選択は?
同性間での恋愛作品はよく見かけるが、
この時代の作品は未知だったので、
正直 この時代にも同性同士で惹かれ合うこともあることに驚いた。
セルゲイとロマンは一目惚れのような
ところから始まり、
互いの趣味や好きなものを通じて
より一層愛を深めていくが
それが普通なら友情となるのでは?と思うので、
恋愛としての“好き”になるのか…と驚嘆。
同性愛は厳罰だし、
奇異の目を向けられることは知っているから
自然と“愛”という感情は避けそうだけど、
禁忌だと知っていても、それでも好きなんだ!
ということが伝わってきて、苦しくなる。
セルゲイの友人でありロマンの妻であるルイーザは
とても難しい立ち位置にいたと思うが、
彼女も含めて誰の選択も間違っていないと思う。
実在するセルゲイが
「一目惚れなんだ!」という説得力があるくらい
見た目が綺麗な俳優のキャスティングと(もちろん演技も良い!)
素晴らしい景色、そこに交わる時代背景含めて
観てよかった作品。
性別に関係なく、好きな人と居られることが
受け入れられる世界になりつつあるが、
より一層、息がしやすい社会になってほしい。
これが実話とは……。時代とはいえかくも非情。
広くLGBTQが浸透したとはいえ、今もって『カミングアウト』なる言葉があり、自然な受け入れとは言い難い。ただ、罪にはならない。ちょいちょい『ブロークバック・マウンテン』と重なる涙涙の作品でした。
冷戦時代のソ連占領下のエストニアを舞台に、2人の青年の秘められた愛...
冷戦時代のソ連占領下のエストニアを舞台に、2人の青年の秘められた愛を実話に基づいて描いたラブストーリー。
1970年代後半、ソ連占領下のエストニア。役者を夢見る若き二等兵セルゲイは、間も無く兵役を終えようとしていた。ある日、セルゲイと同じ基地にパイロット将校のロマンが配属される。写真という共通の趣味を持つ2人はすぐにひかれ合い恋に落ちるが、当時のソ連では同性愛は法的に固く禁じられており、発覚すれば厳しく処罰されていた。一方、同僚の女性将校ルイーザもロマンに恋心を抱いていた。そんな中、セルゲイとロマンの関係を疑うクズネツォフ大佐は、2人の身辺調査に乗り出す。
ロシアの無名の俳優セルゲイ・フェティソフによる回顧録「ロマンについての物語」をもとに、ペット・ショップ・ボーイズ「Together」などのMV監督として知られるエストニア出身のペーテル・レバネ監督が映画化。セルゲイ本人とレバネ監督、劇中でセルゲイを演じるイギリスの俳優トム・プライアーが共同で脚本を手がけた。
12 F-8
愛することは苦しい
間隔をあけながら逢瀬を重ねたセルゲイとロマンの蜜月期は切なすぎて苦しい。二人の愛し合うシーンはとても美しかったです。
後半にルイーザは友人だと思っていたセルゲイに裏切られた、というようなことを言っていたけれど、最初に裏切られたのはセルゲイの方だと思った。でも彼は言い訳はしなかった。
シェイクスピアの言葉を引用したり古典舞台を演じていたりと、人が人を愛することの永遠の問いかけを与えられているようだった。なんせ辛い。昨今の邦画のBLをイメージしていくと心にズシンのくる重さなのでご覚悟を。
ロマン役の俳優さんすごいハンサムで格好良かったなぁ。軍服似合い過ぎる。
最後、誰に感情移入していたか気づく
主役の俳優さん、いいですね。詩的な表情。ジミーの瞳です。
いつも作られるのが遅すぎたラブストーリーに出会う時、私はタイムマシーンに乗って逆リメイクをしたくなるのです。
ブロークバック・マウンテンはジェームス・ディーンとモンゴメリー・クリフトでリメイク済みですが、本作ならアンソニー・パーキンスとロック・ハドソンでどうでしょ?
そう、もう遅すぎますね。自分がもっと若ければ、若い日にこんな映画に出会えていれば、心の奥の火の鳥が飛び立って、温かい涙を流せたのかも。
燻り続ける情熱の炎に浮ぶ、憎むべき男の顔は、どうしようもなく自分に似ていました。
余韻
同性愛に対する嫌悪感や偏見、当時の法律が生んだ切ないラブストーリー。
最初は愛し合って、なんだかんだ世間体から別れることになり、
偽装結婚や距離をおいたりするけど、結局は忘れられない、
これと同じような同性愛の物語はよくある
そうなんだけど、セルゲイ、ロマン、ルイーザの心情が伝わり、
感情移入してしまい、中盤から胸のドキドキ、バクバクがとまらなかった
みんなそれぞれの愛に向き合ってるだけに、つらい…
ただ最後にセルゲイの少しの笑みがあってよかった
観終わってからこのレビュー書くまでの数時間、
ずっとこの映画のこと考えるなんて思わなかった
切ないけど、観てよかったと思える映画だった。
ノンフィクション
先ず2人がとても俳優として容姿に魅力がある所に驚いた。
セルゲイは少し幼なくキュートな顔立ちながら服の上からもわかるマッチョ具合だ。
対するロマンはすらっと背が高く端正な顔立ちで軍服からパイロットスーツ、カジュアルやスーツまでモデルの様に着こなすスタイリッシュさ、
内容はありがちなドイツの同性愛禁止法なのだが、その部分はあくまでもスパイスの様に添えられており、
それを上回る同性愛のすれ違いや愛を上手く織りなしている。
ブローバックマウンテンを少し総仏させるが、あの時代よりは少し進んだ1977年代の実話をもとにしている。
映像的にも舞台はドイツ以外広く躍動感があって美しく作られている。
LGBT映画の残念なところは世界観が狭い所だったのだけど、そこも上手に解放されていて見終わった後に苦しすぎない様に作られている様に感じた。
愛の選び方は人それぞれで、
愛している事が必ず実るわけでもない。
真っ直ぐに愛するセルゲイとロマンなりに立場を守りながら人を愛する人もいる、2人の愛し方に良し悪しはない。
とてもいい作品だった。
期待度◎鑑賞後の満足度◎ エストニア版『君の名前で僕を呼んで』と思ったが、ほぼ同時代なのに雰囲気がガラリと違う。甘美さの変わりに緊張があり、演出力の差で詩情は少ないが、人権抑圧が招いた結末が切ない。
※2024.02.19. 2回目の鑑賞【MOVIX堺】
1回目の鑑賞時はロマンを演じるウクライナ人俳優のオレグ・ザグロドニーのあまりの男前ぶりとカッコ良さばかりに目が行ってしまったが、2回目を観てルイーザを含む主要人物三人の気持ちの揺れと流れとがよくわかりより感激した。
1回目もそう思ったけれどもルイーザ役のロシア人女優ダイアナ・ボザルスカヤもなかなか魅力的な女優さん。
①冒頭はまるで『愛と青春の旅立ち』か『トップガン』かと思う描き出し。
日本も西側諸国ゆえ約40年前の話とはいえソ連邦の軍事装備を見るのは興味深い。
②エストニアが舞台とはいえ旧ソ連邦時代が背景の映画なのに台詞が英語なのに最初は違和感があり戸惑う。イギリス資本が入っているし世界的な公開を考えてのことかな、と一応自分なりに納得。
鑑賞後にエストニアについてお勉強(映画を観た後色々とお勉強出来るから映画って好き)。
何と世界でもIT先進国の現代のエストニア。NATOに加盟してEUにも加盟して嫌露意識から英語の普及率も高いとのこと。別に英語の台詞でも自然だったわけだ。
③
①映画単体としては秀作とは言い難い。けれど1映画ファンとしては映画の持つ力を少しでも示してくれたことはとても嬉しい(エストニアの家族法を改正して同性婚も認められることを後押しした)。再び同性愛を禁じ様とするロシアとどちらが大人の国だろうか。
②
愛することの難しさ
セルゲイもロマンも愛し合った事により
苦しみ合わずに上官と下官の
関係だけで終わってしまっていたのかも
お互いの趣味が写真というのも
興ずる点が多かった為に惹かれ合うのは
自然の流れだったのかもしれない
時代が時代だけに
お互い好きで惹かれ合う気持ちがあっても
社会がカミングアウトをすることを許さず
セルゲイは念願の役者の道へ
進むためにエストニアを離れロシアへ
一方のロマンはセルゲイの同僚で
女性将校のルイーザと親密な関係になり
二人は結婚
エストニアからロシアへやって来た
ルイーザからの報告にセルゲイは
複雑な心境を抱えつつも式に出席するため
エストニアへ戻る
久しぶりに会ったロマンと
再燃してはならなかった愛の炎が蘇ると
家族がいる立場でありながらも
ロマンはセルゲイとの関係を
断ち切ることが出来ずに
再び関係を持ってしまうことになる
最後はセルゲイがロマンから送られた
手紙の内容を見て慌てて基地へ連絡するも
聞かされた内容は"戦死した"
そこでセルゲイは最期の挨拶をすべく
ロマンの住む家を訪ねるのだが
待っていたのはルイーザが事の顛末を知り
相手が同僚だという複雑な心境を抱えつつも
裏切られた気持ちもあったために
セルゲイに怒りの感情を爆発させるのだが
セルゲイは反論することなく
ルイーザの意見を聞き入れると
二人はそっと抱き寄りエンディング
色々考えさせられる映画でした
兵士の同性愛を描いた作品。 バレたら罪になる時代にバレずに関係を続...
兵士の同性愛を描いた作品。
バレたら罪になる時代にバレずに関係を続けようとするが…
ロミオとジュリエットについて触れていたが、こっそりと生きるのではなく、堂々と自由に生きられないのか…他の同性愛物と話は違えど感じる思いは変わらない。
外ではずっと演技を続けなければならない…主人公たちが報われないのが辛い。
エンドロール後、油断していた…引き締まる。
興味深い作品でした
心をかき乱されるような愛憎劇、というわけではありませんでしたが、とても興味深く拝見しました。
ソ連占領下のエストニアが舞台で、軍モノということと、実話に基づいているところが注目点。
しかし、観ながら…何か見たことがあるような気がしていて、なんだろうなんだろう?と思っていました。
家に帰ってから分かりました。ちょっと「再現ドラマ」のようだったのです。
ただ、映画としてどうかというよりも、エストニアでの同性婚を認める法律が施行されるきっかけとなったということが凄いです。
製作の皆さんも誇りを持っていらっしゃるに違いありません。
そんなこともあり、映画の力を感じた作品でした。
ライトな三角関係になってしまった…
同性愛禁止法とか自由を謳歌できない偏見制度への警鐘と思うけど三角関係のいびつさが全面に出てしまいなんだか軽い痴話話に見れてしまった…。同性愛は全く良いと思うけど家族を犠牲にするのは身勝手でわがままではないかと…。微妙な展開に同調できず…。
こう言うのでよくある流れといえばそうでもあるけど、 シチュエーショ...
こう言うのでよくある流れといえばそうでもあるけど、
シチュエーションが新鮮
そして、実話というのが、
しかも本人が執筆したものがベースというのが、
なんとも切ない
イベント付き上映のインタビュー中,
どの人も少し訊かれただけでたくさん返すのが印象的だった
特に、脚本作成から加わったと言うセルゲイ役の俳優さんは、
司会者が困るくらいに話し続けていた
作り手にとっての大切さが伝わってきた
そりゃないぜ
セルゲイそりゃないぜと最後に思いました(笑)なぜ家に来たのか?理解出来なかった ルイーザにそれを言う?
男女愛でなくても不倫です、ピュアな愛なら2人で完結させなさいと思った
ほんの半世紀前のことだけど
ソビエト連邦が存在していた頃の占領下にあったエストニア。今ならば「多様性」で括られることが、固く否定されていた時代の3人の愛のストーリーだ。
誰も悪くない。
悪いのは、エンドロールが終わった後にスクリーンに映し出されたアイツた。
国をも変えた悲恋
このところ『蟻の王』『シチリアサマー』など同性愛が禁止されていた時代の映画が続いてるけれど、過酷な状況に毎度ギュッとなる。
今度はまたバレたら大変な軍人。
ロマンの気持ちは分からないでもないのだけど、いかんせん言葉足らずというか、相手への思いやりに欠けるなぁ、もっと言い方があるだろう。
時代や立場なんかを考えると、仕方ないっちゃ仕方ないのだろうけども。
抑えきれないのは分かるのだけれど、バレたら刑務所行きと分かっていながら2人とも大胆というか軽率というか、何度もハラハラした。
誰もが幸せになるべきはずなのに、離れざるを得ない、身を引かなくてはいけない、なんとも切ない。
そして3人の結末は呆気なくて、なんだか淋しいなぁ。
結局、大佐は何が目的だったのだろう?
執着が凄すぎて最後はちょっと怖!ってなった。
禁断
24本目。
時代背景考えれば禁断ではあるし、ましてや兵士となれば尚更。
3人とも傷ついてはいるんだろうけど、秘匿にしなきゃいけないし、難しいよね。
それが恋だよと思いはするけど、ルイーザが一番可哀想と勝手に思ってしまう。
二人にとってのファイアバードは、心の中でだけ翔ける隠匿の存在だった
2024.2.12 字幕 MOVIX京都
2021年のイギリス&エストニアの映画(107分、R18+)
原作はセルゲイ・フェティソフの自叙伝「ローマンについての物語』
ソ連領エストニアにて、パイロットと恋仲になった二等兵の苦悩を描いた恋愛映画
監督はペーテル・レバネ
脚本はペーテル・レバネ&トム・プライアー&セルゲイ・フェティエフ
原題の『Firebird』は、劇中で主人公たちが感激するイーゴリ・ストラヴィンスキーのオペラ『The Firebird』のこと
物語の舞台は、1900年代前半のソ連領エストニアのとある基地
そこで二等兵として従軍しているセルゲイ(トム・プライヤー)は、友人のヴィロージャ(ジェイク・ヘンダーソン)、ルイーザ(Diana Pozharkaya)とともにハメを外して遊ぶのが日課になっていた
国境が近いこともあり、司令官のクズネツォフ大佐(ニコラス・ウッドソン)やズベレフ少佐(Margus Prangel)はピリピリしていて、規律を重んじる基地としての機能を重要視していた
セルゲイは任期が終えたら地元に帰ろうと考えていて、大佐はそれを惜しんでいる
少佐はKGBとのつながりがあり、常に全隊員を監視していて、ルイーザは軍の通信を記録する係として赴任していた
物語は、その基地にパイロットのローマン・マトヴィエフ大尉(オレグ・ザゴロドニー)が赴任するところから動き出す
彼はセルゲイを気に入り、ルイーザは彼に首ったけになっていく
ヴィロージャは「セルゲイがルイーザのことを想っている」と感じていたが、実はセルゲイは同性愛者で、二人の接近を違う角度で見ていた
ある日、ローマンに指名されて出向したセルゲイは、そこでオペラ「ファイアバード」を一緒に観劇する事になった
セルゲイは劇に魅了され、任期が終えた後にモスクワの演劇学校に進むことを決める
そして彼は、ローマンにモスクワに来た時には尋ねてほしいと懇願する
ローマンはその言葉を受け取ったものの、二人の仲はKGBの標的になっていたのである
物語は、セルゲイとローマンの悲恋を描き、これが主人公セルゲイが後に記した自叙伝として世に残る事になった
それを映像化したのが本作であり、脚本にもセルゲイ本人、セルゲイ役を演じたトム・プライヤーが参加している
実に生々しい描写が多く、かなり美化されているように思えるのは、その思い出が記憶に定着している過程と似ているからだろう
本作にはパンフレットが発行されているのだが、これがまた規格外的な大きさになっている
サイズで言えばB4くらいの大きさになっていて、ぬいぐるみを入れる用の袋を購入することになった
なので、パンフレットの購入を検討している人は、かなり大きめのカバンなどを持参した方が良いのではないだろうか
いずれにせよ、禁じられた愛の中でせめぎ合う三角関係が描かれ、それが悲劇的な結末の中で向かう先を見失ってしまう物語になっていた
ルイーザとローマンの結婚は「愛はある」とは言うものの、彼女がそれを信じられるとも思えない
また、KGBへの密告が親友というところも罪深く、それを公言することもできない時代性が伝わってくる内容だったと言える
軍隊は規律を重んじる場所で、それが異性間でも許されないものもあるが、そんな中で、死と隣り合わせにある者たちの素直な衝動はこれぐらい激烈なものだったということだろう
濃厚なシーンは多いものの、R15+ぐらいだと思われるので、抵抗のない方は鑑賞しても良いのではないだろうか
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