「【”禁じられた色彩。そして自分に嘘をつくな。”今作は1970年代、旧ソ連占領下のエストニアでの二人の男性兵士の恋と、その後の哀しき結末を描いた事実の映像化作品である。】」Firebird ファイアバード NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”禁じられた色彩。そして自分に嘘をつくな。”今作は1970年代、旧ソ連占領下のエストニアでの二人の男性兵士の恋と、その後の哀しき結末を描いた事実の映像化作品である。】
■1970年代後期、ソ連占領下のエストニアが舞台。
モスクワで役者になることを夢見る兵役末期の若き二等兵のセルゲイ(トム・プライヤー)はある日、同じ基地に配属されてきたパイロット将校のロマン・マトヴィエフ大尉(オレグ・ザゴロドニー)と出会う。
セルゲイはロマンの凛々しい姿と優しい目に心を奪われるが、二人は又、女性将校ルイーザ(ディアーナ・ポジャールスカヤ)にも惹かれるのであった。
だが、そんな彼らをクズネツォフ大佐(ニコラス・ウッドソン)は、密かに調査し始めるのであった。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・エンドロールでも流れるが、今作が実在したセルゲイにより書かれた”ロマンについての物語”の映像化と知って驚いたモノである。
何故なら、劇中でも描かれるように、旧ソ連では同性同士の恋愛はご法度であったからである。
・だが、セルゲイは兵役を終え、劇団員になって時からもロマンを思い、ロマンもルイーザと結婚し、可愛い男の子に恵まれながらも、セルゲイへの思いが捨てきれずに共に周囲には偽りつつ、自分の気持ちには嘘をつかずに共に短い旅行に出るのである。
・だが、その行為の代償は大きく、クズネツォフ大佐の調査によりロマン・マトヴィエフ大尉は、危険なアフガニスタンに飛ばされ、命を落とすのである。
■印象的なシーンは幾つかあるが、私は写真好きのロマン・マトヴィエフ大尉が撮影したルイーザと、その後方に立つセルゲイの写真を見つけた時のルイーザの表情がアップになるシーンである。その写真ではフォーカスされているのはルイーザではなく、セルゲイであるからである。ピンボケ気味に映る自分の写真を見つけてしまったルイーザの苦悩は計り知れない。だが、彼女はその写真を夫ロマン・マトヴィエフ大尉が戦死しても、箪笥に取って置き、慰めに訪れたセルゲイに激しい怒りと共に、叩きつけるのである。
・レビュータイトルに書いた”禁じられた色彩”という言葉は、映画「戦場のメリークリスマス」の坂本龍一氏による余りにも有名で美しいメインテーマを、”ジャパン”のコレマタ美しいボーカルで坂本氏の友人でもあったデヴィッド・シルビアンが自ら詩を書き歌った曲の曲名である。デヴィッド・シルビアンの独特の美しい声に乗せられて歌われたこの曲は、ジャパンファンだけではなく、広く愛されヒットしたのである。今では、余り知る人はいないのかもしれないが・・。
故に、この映画を少し前に見た際に、この曲が思い浮かんだのである。名作映画「戦場のメリークリスマス」を想起したからである。
<今作は、1970年代、旧ソ連占領下のエストニアでの二人の男性兵士の恋と、その後の哀しき結末を描いた事実の映像化作品なのである。
そして、エンドロールのテロップでロシアで同性愛に対する処罰が軽減されたと出るが、プーチン独裁が続く現在、ロシアでは再び同性愛者に対し、厳しい規制が引かれるようになってしまったのである・・。歴史は繰り返すのである・・。>