「シリーズ最恐の駄作から一転、それなりに楽しいファンタジー映画へ」ワイルド・スピード ファイヤーブースト カガチさんの映画レビュー(感想・評価)
シリーズ最恐の駄作から一転、それなりに楽しいファンタジー映画へ
余りにも酷かった前作「ジェットブレイク」で流石にマズい…と感じたのか、本作はとても楽しめる映画となっている。
見どころとしては、Bとジェイコブのタッグや、回想をふんだんに使った過去作との繋がりなど様々だが、やはり一番はハンとデッカードの共闘だろう。
前作のお茶を濁しまくった復活を果たした「ハン」が、プロの戦闘員にも関わらず”人が乗ってすらいなかった”車を爆破し、満足げに東京からドムにどや顔コールしちゃったお茶目さん「デッカード」と再会し、敵組織と戦うシーンは見応えがあり、信用の無い信頼感を醸しだした戦い方が最高だった。
更に前述したBとジェイコブのタッグだが、この映画最大の魅力が詰まっている。
Bは過去にもデッカードとの共闘?シーンが最高にクールで、自分はシリーズで一番好きなシーンとして記憶しているが、それに並ぶとも劣らない、最高の組み合わせだ。
ドムを通して繋がりがある二人が、車と言うツールで仲を深める。
メッセージ性も強く、見ていて微笑ましくも楽しめる、そんな描写だった。
そしてここからネタバレだが、
気になるシーン
まず第一に、ジェイコブの死
これ必要か?
そもそも初登場が前作でありながら、ドムの血を分けた弟と言う重要ポジなのに、こんな使い捨てみたいなキャラにしたのは非常に勿体ない。
今回で退場した事で、シリーズそのものに必要だったかすら疑わしいレベルの扱いになってしまっている。
次に、ヘリのワイヤーシーンの矛盾
アイスブレイクで、ファミリー全員がドムの逃走を止めるために、ドムの車にワイヤーを挿して止めるシーン。
その際ドムは、ドアに刺さったワイヤーを「ドアを壊して外す事で」離脱した。
そして今作、二機のヘリにワイヤーを挿された箇所はドア。
なのに何故かヘリを振り回して撃墜し、ヘリが落ちた後は都合よくワイヤーだけが切れてヘリの残骸は奈落へ…
細かいかもしれないが、過去に似たシーンがある以上齟齬が生じる描写をしちゃ駄目でしょう。
最後に、ジゼルの復活
これはやっちゃダメ。
一番冷める。
確かに前作のレビューで「ハンの復活が許されて、オーウェンが生き残ってるならジゼルも可能性あるだろ」的な事言ったが、それをやるかね。
この映画はただでさえ、過去に3度死ぬ死ぬ詐欺をしている。
レティ、ドム(クライマックスの数分だが)、ハン。
もういいだろう。いい加減この使い古された古典的なサプライズは萎える。
そして相対的に、「ジゼル死んでないならジェイコブも…?」と感動の余韻が木端微塵に。
この映画シリーズにおける「死」そのものが軽すぎて信用できなくなっている。
何ていうか、やるなら一気にやって欲しかった。
まぁ潜水艦との兼ね合いでプロセスは違うだろうが、ハンとジゼルを同時に出すか同作に収めるか。
前作でハンが死んでなかった、その理由も曖昧…
と言う尾を引いてるのに、更にそれの上塗りをしちゃ駄目。
これじゃあスターウォーズの二の舞になっちゃう。
つーかこうなるといよいよファミリーで死んでるのエレナだけになっちゃったけど、これ結構酷い気がする。
レティに子供産ませたくないから、ぽっと出の新キャラをドムとくっつけたあげく子供産んだのにそれ取り上げられて用済みになったから殺されるって…
上記の気になる点に目を瞑れば、ジョン・シナのバトルシーンやステイサムのスマートなバトル、前作に比べるとまだ現実的なカーアクションなど、また見たいと思える良作。
個人的に気になったのは、仕方ないとは言え”復讐”の相手に当然の様にブライアンが含まれていないこと。
直接殺したホブスは当然、間接的に関わったドムやファミリーを執拗に狙っているくせに、ブライアンは良いんだ…って思っちゃった。
やっぱりブライアンは生きてる設定かなり辛い気がする。
だからって殺して欲しいわけじゃないが…