「テレビドラマ同様の安定のおもしろさ」岸辺露伴 ルーヴルへ行く おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
テレビドラマ同様の安定のおもしろさ
人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフ作品として描かれたテレビドラマ「岸辺露伴は動かない」の劇場版。ドラマがとてもおもしろかったので、本作も楽しみにしていました。
ストーリーは、新作執筆にあたって、青年時代に淡い思いを寄せていた女性・奈々瀬から聞いた「この世で最も邪悪な『最も黒い絵』」のことを思い出した岸辺露伴が、オークションで落札したモリス・ルグランの絵を手がかりに、お目当ての絵がフランスのルーヴル美術館にあると考え、担当編集者・泉京香とともに取材のためにルーヴル美術館を訪れ、その絵の秘密に迫るというもの。
もともとドラマでも独特の世界観がしっかり構築されていたのですが,本作でもきちんと踏襲されていて、劇場でそこに浸れるだけでも楽しかったです。話の運びもスムーズで、いつのまにか怪しく耽美な露伴の世界に引き込まれる感じが心地よかったです。
内容も、劇場版の尺を生かし、「黒い絵」とそれにこだわる露伴、そして彼の過去やさらには家系にまつわるエピソードを絡み合わせて描き、見応えのあるものでした。特に、ごく普通の人間として描かれる若き日の露伴が、新鮮で興味深かったです。それらをフランスや会津のロケを交えてミステリアスに描くので、最後までしっかり楽しめました。
ただ、終盤への大事な伏線とはいえ、青年期の露伴がちょっと長くてテンポが落ちた印象を受けました。そこをもう少しテンポよくまとめ、その分をフランスの街角やルーヴル美術館でのシーンにあててもっとたくさん観せてほしかったです。また、「ヘブンズ・ドアー」の能力がもう少し生きる展開だとさらによかったかなと感じます。あと、意味深な蜘蛛の描写がよくわからなかったので、そのあたりもわかりやすく描かれるとよかったです。
主演は高橋一生さんで、彼のもつ雰囲気が露伴にぴったりです。というか、露伴というキャラを自分に引き寄せている感じが秀逸です。共演の飯豊まりえさんも、露伴との凸凹コンビが心地よい泉京香役を好演しています。脇を固めるのは、木村文乃さん、美波さん、長尾謙杜くん、安藤政信さんら。中でも、木村文乃さんの妖艶さに目を奪われます。
今回は舞台挨拶中継付き上映で、キャストや監督の貴重な話を聞くことができました。印象的だったのは、ルーヴル美術館のロケの話で、休館日と閉館後の時間を貸し切って2日間で撮り終えたそうです。仁左右衛門の庵のロケ地も最終日に偶然見つかったらしいです。機会があれば、どちらも訪れてみたいです。
劇場版で初めて見た作品でした。その後、アマプラにてドラマ放送していた8話全部見ました。
ようやくストーリーを理解して高橋一生さんが演じていた漫画家は荒木飛呂彦先生がモデルだったこと、舞台挨拶にて荒木先生から色紙に絵を描いたサプライズがあったことを見ました。喜ぶ姿を見られて良かったと思いました。