「型破り刑事vs連続殺人犯 THEシンプル!」刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5型破り刑事vs連続殺人犯 THEシンプル!

2023年3月19日
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鑑賞方法:VOD

怖い

単純

興奮

人気TVドラマの劇場版…と言うと日本映画みたいだが、イギリスの作品。
イドリス・エルバ主演。彼演じる敏腕だが型破りな刑事の活躍を描いたもの。
私がエルバをしかと認知したのは2013年の『パシフィック・リム』だが、このドラマが始まったのは2010年。
時期的にもキャリアの大きな飛躍となり、エルバはこのドラマでエミー賞やゴールデン・グローブ賞を受賞。現在の映画界での活躍に至った、当たり役と言えよう。
しかしながらドラマはシーズン5まで製作されているようだが、見た事は無く…。タイトルだけは聞いた事あるような…。
ただただ、エルバ主演と、面白そうな刑事サスペンス映画の2点に興味惹かれ、鑑賞。

ドラマシリーズを見てないし、そもそもほとんど知らないので、この映画だけ見ても話分かるかな?…と躊躇はするが、心配無用。
昨今の刑事モノはハイテクや斬新さを出そうとするが、その点も問題ナシ。
犯人が犯行にハイテクを使用はするが、まるで90年代のサイコ・スリラーのような感じ。
話も設定も超シンプル。ズバリ、
刑事vs連続殺人犯。

一人の青年が失踪し、ジョン・ルーサー刑事が担当。青年の母親に見つけ出す事を約束する。
が、犯人によってルーサーの過去の違法行為が暴露され、投獄されてしまう…。
収監中の彼の元に、犯人から挑戦状が。青年はすでに殺され、尚も犯行を続ける犯人にルーサーは怒りに燃え、脱獄。
かつて捕らえ損ねた犯人を、今度こそこの手で捕まえる…!

主人公がいきなり投獄されるというショッキングな幕開け。
しかも脱獄するという“ダーティ刑事”。それほどこの事件に対して、後悔と怒り。
このドラマの魅力は、ルーサーの活躍っぷりだとか。確かに常人離れの洞察力、勘、タフさ。
それら醍醐味でありツッコミ所でもあるが、イドリス・エルバの重厚な演技といぶし銀の存在感で魅せ切ってしまう。

数々の難事件を解決してきた敏腕刑事とは言え、脱獄した身。
だから当然、警察から追われる。
事件捜査の責任者となった女性警部補。犯人とルーサーを追う。しかしある時、犯人の魔の手が…。
ルーサーの元上司。ルーサー逮捕に助言しつつ、密かにルーサーとも連絡を取り合い、サポート。
さらに、警察内部に犯人の内通者が…?

ルーサーや警察を嘲笑うかのように翻弄し、残忍な犯行を愉しんですらいる犯人。
その犯人は一体…?
いや、犯人は見る側にはもう分かっているのだ。
富裕層のトレーダーで、デヴィッド・ロビーという男。
ネットなどでターゲットを徹底的に調べ上げ、弱味を握る。人は時に死以上に、誰にも知られたくない汚点や恥点がある。それで脅迫し、ターゲットを意のままにする。
さらに何食わぬ善人面で、遺族に接近。
何とずる賢く、悪質卑劣!
アンディ・サーキスが怪演。

すでに分かっている犯人の犯行。
犯人とルーサー逮捕に奔走する警察。
追われ、追うルーサー。
追い詰められ、追い詰め、三者の攻防劇。
刑事モノでこんなにシンプルなものは久々ってくらい、本当に見易く分かり易い。

一部ではそれが平凡過ぎるという声もある。
人気TVドラマの劇場版だからスケールアップしたアクションやサスペンス!…が本来売りなのだろうが、ド派手な見せ場は無い。
主人公のルーサーがそうであるように、アナログ的で硬派。じっくりタイプ。
しかし、被害者遺体の集団遺棄現場や街中の集団飛び降りなどは震撼。
クライマックスのルーサーと犯人の遂にの対峙など、スリリングさは充分。

なかなか面白かったので、TVシリーズも気になってくる。
本作だけでも充分見れ、サスペンス好きなら見て損はナシ。
昨今流行りのリアルな刑事モノと言うより、シンプルなサスペンスを楽しみ、何よりイドリス・エルバを見る作品と言えよう。

近大