劇場公開日 2023年5月26日

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「少女と怪物の狭間にある「ギャプ萌え」」THE WITCH 魔女 増殖 リオさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0少女と怪物の狭間にある「ギャプ萌え」

2023年5月31日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

前作とは違ったテイストながらも、本シリーズに共通するキーワードは、何と言っても「ギャプ萌え」でしょうw

本作も純粋に面白いし、非常に良く練られた構成に関心してしまう部分が多い。(韓国映画、恐るべし)

因みに前作では、主人公は猫被っていて、本当は完全無欠の最強キャラだったと言うオチ。(キム・ダミの演技に感服!)

一方本作では、無敵で無慈悲の殺人兵器(怪物)として生まれ育ちながらも、純粋さと素朴さを保ったまま、人間らしい感情に目覚めていく1人の少女として主人公が描かれている。

いずれも、圧倒的な「ギャップ萌え」なのだ!
もちろん、少女を主人公に据えたアイデアの勝利でもある。

それから、アクションシーンのスピード感とリズム感、特にノーモーションから来る破壊と殺戮のシーンには興奮せざるを得ない。こちらの想像を超えて来る場面の連続だ。

もう一つ、本作の主人公は感情を表に出さないし言葉数もほとんど無い。作中のセリフも数えるほどだ。それなのに、無表情の中に喜怒哀楽を演じ分けている。これは意外とすごい。惨殺シーンでさえも同様にだ。

それからストーリーについて、アーク、工作員、土偶、ヤクザ、そして主人公とそれぞれの立場と思惑が絡み合って、一見分かりづらくもあるのだが、逆に言えば一対一の単調な対立軸を避けて、ストーリーに立体性を持たせている。この辺りもまた、巧妙だなと感心してしまった。

最後に、印象的だったシーンを2つ。
まずは、冒頭のシーンがとても良い。本作に引き込まれるきっかけは、やはり冒頭の積雪シーンだろう。因みにこの積雪のシーンは、当初脚本には無かったそうな。60年ぶりに済州島に降った大雪が、赤と白の印象的なコントラストを演出している。このシーンがあるのと無いのとでは、本作の深みが全く違ったのではないだろうか(この印象的なシーンで、済州島の悲しい史実を想起したのは私だけだろうか)。偶然性をも味方につけて、災い転じて幸となるである。
もう一つは、エンディングの戦闘シーン。ポイントは、殺戮と花火のコントラスト。「緊張と緩和」の構図だ。

ひとひとつのシーンや設定、ストーリーへの徹底した拘りが、単なる「SF・アクション・ホラー」のエンタメ枠を超えて、本作を名作に押し上げている理由かも知れない。

リオ