THE WITCH 魔女 増殖 : 映画評論・批評
2023年5月22日更新
2023年5月26日より新宿ピカデリーほかにてロードショー
新たな魔女の戦いはもっと高く、もっと速く、もっと強く 殺しのテク“全部乗せ”大乱闘が痛快
キム・ダミ(「梨泰院クラス」)が怪物級の存在感を放っていた「The Witch 魔女」をユニバース化するという意欲的な試み。女子高生、青春、サイキック・パワー、血みどろアクション……等々、第1作時点でたっぷりすぎるほどのトッピング。“魔女ユニバース”第2弾となる本作では「器を拡張しまくる→トッピングをさらに鬼増し」というハイカロリーな手法をとっているのだが……結果?
混沌としているが、美味いに決まってるだろう!
前作に続いて監督・脚本を手がけたパク・フンジョンは、まずは主人公を交代させることで、ストーリーに新たな風を呼び込む。第1作の主人公ジャユン(キム・ダミ)からバトンを引き継いだのは、名も無き“少女”(シン・シア)。序盤、秘密研究所から解き放たれた彼女は、鮮血をまとった状態で雪原を進んでいく。雪道に残る血の足跡――白紙に新たな物語が記されていくかのような、非常に印象的なシーンだ。
第1作のジャユンの魅力といえば、素朴な少女なのに最強。いや、最恐。もしくは最凶だったと言える。あんなにも素朴な少女が、狡猾なやり方で敵を駆逐していく。サスペンス調の語り口も相まって、かなりのギャップが効いていたのだ。ところが、続編の“少女”に関しては、そのギャップはもとより“ピュアすぎる”という点が際立っている。まるで子どものような純粋さと暴力性を併せ持つ存在となっているのだ。
そんな“少女”が担っていくのは、学び&成長という“陽”の部分。疑似家族を形成した者たちとのドラマは、澱んだ世界の光にもなっている。では“陰”を受け持つのは?“少女”たちを取り囲む面々だ。地元のヤクザにはじまり、組織本社の工作員コンビ、上海からやってきた能力者集団「土偶」と個性派ぞろい(それぞれ良いキャラしているんですよ、これが……)。受動的な“少女”に比べて、かなりアグレッシブな輩だらけなので、それぞれで“少女”包囲網を狭めていく。
すると何が起きるのか? “少女”を中心に据えた大乱闘の勃発である。前作は屋内がメインだったが、今回は野外戦。戦場が格段に拡張されており“より高く、より速く、はるかに強く”という言葉を基にした壮絶アクションが展開する。飛んで跳ねてぶっ飛ばしてもみくちゃになって、しかも致命傷以外は死なず……スピーディな銃撃、斬り合い、殴り合いを経て描かれる、圧巻のゴリ押し超能力。これはコミック的戦闘描写の理想形か!? 爽快感すら入り混じる、痛快超人バトルとなっている。次作に向けた布石も含め“続編エンタメ”としては十分すぎるほど楽しめる仕上がりだろう。
(岡田寛司)