「失われた30年とコロナ禍を経た現在の新宿に果たして冴羽獠の居場所はあるのか」シティーハンター えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)
失われた30年とコロナ禍を経た現在の新宿に果たして冴羽獠の居場所はあるのか
射撃スキルは抜群、仕事もナンパもさらっとこなす超一流のスイーパー、冴羽獠。亡き相棒の妹に懇願され、しかたなくふたりでその死をめぐる真実を追い始める(Netflix公式サイトより)。
例えばナウシカがある種の女性の理想像となったように、特定の世代における冴羽獠はある種の男性の理想像である。他方で、かれの魅力はその軽薄な時代背景に拠るところも大きい。原作が連載されていた1985年~1991年はいわゆるバブル景気に沸いていた時代であり、浮足立っていた新宿に冴羽獠はしっくりきた。
翻って、失われた30年とコロナ禍を経た現在の新宿に果たして冴羽獠の居場所はあるのだろうかと少し訝っていたものの、東横キッズやSNSいいね社会は、当時とは異なるものの、相変わらず空虚さを醸し出しており、やはり冴羽獠がしっくりくるのであった。「なぜ今さら実写化を?」の問いに十分答え得る出来栄えだ。
憑依型としてのポジションを確立した鈴木亮平はもちろん、香を演じた森田望智がとても良かった。屋上で独白するシーンは本作の山場のひとつであろう。槙村を演じた安藤政信はやはり天才だとしみじみ感じた。わずかな出演時間で、槙村の人となりを見事に印象付けて美しく去った。残念だったのはエンディングの宇都宮隆がおじいちゃんの声になっていて弱々しかったことくらい。
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