「コジラ映画として期待すると損。その点、ゴジラなんて気にしないキングゴングのファンなら満足できそうですね。」ゴジラ×コング 新たなる帝国 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
コジラ映画として期待すると損。その点、ゴジラなんて気にしないキングゴングのファンなら満足できそうですね。
『ゴジラ』と『キングコング』のリブート映画『ゴジラvsコング』の続編で、ハリウッドと東宝が提携して仕掛けるモンスター・ヴァースの第5作。監督のアダム・ウィンガードや脚本のテリー・ロッシオ、キャストのレベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、カイリー・ホットルは前作から続投しています。すでに全米で大ヒットを記録している話題の大作となっていて、その作風を一言で評するなら、観客に思考停止をもたらす問答無用のノンストップ・アクション作品です。
●ストーリー
ゴジラとコングによる壮絶な死闘に決着が着いてから3年後、ゴジラは地上の怪獣たちの脅威を抑え込み、コングは本来の故郷である地下空洞で暮らしていた。しかしコングは、未だ同族の存在を確認できず、孤独を募らせていました。
そんな中、地下空洞から謎の波長の電波信号が感知され、ジアもそれを独自にイメージとして受け取っていたのです。バーニー(ブライアン・タイリー・ヘンリー)の調査で、それが地下空洞から怪獣たちに発信されている救援信号の可能性が浮上し、アイリーン(レベッカ・ホール)、ジア(カイリー・ホットル)、バーニー、トラッパー(ダン・スティーヴンス)達が調査のため地下空洞へ乗り出します。
一方でコングは、地下空洞で発見した新たな土地で、遂に同族と巡り合うも襲撃を受け、これを撃退します。その一頭である幼体・スーコに案内してもらった先で、無数の同族達を奴隷同然に支配するスカーキングと、その配下・シーモと対峙するのです。
●解説
山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」を体験したばかりですが、あの東宝純正版とはハッキリと別物です。21年のシリーズ前作からも一転、思いもよらぬ展開となります。両者を本質的に隔てるものは、1954年の「ゴジラ」第1作を意識した緊張感があるかないかということ。庵野秀明と樋口真嗣による「シン・ゴジラ」にしろ、また「モンスター・ヴァース」の起点となったギャレス・エドワーズ監督の「GODZILLA ゴジラ」にしろ、いずれも反核や反戦の象徴としてのゴジラというオリジナルの主題を真摯に踏まえていました。
対してウィンガード監督は、まぁなんとあっけらかん!その緊張感とは無縁でいて、ローマのコロッセオを寝床にしているゴジラと、地下空洞から再び地上にやってきたコングが大暴れする展開を怪獣プロレスのような感覚で演出していくのです。本作の評価軸としては、ローランド・エメリッヒ監督による98年版 「GODZTILLA」からの距離感で、どれだけ進化と洗練を遂げたのかを測るのが適切かもしれません。
ともあれこれだけド派手で能天気なゴジラ映画を楽しめるのは、フランチャイズ契約によるハリウッド版ならではと言えそうです。表面的なキャラクター消費として否定するか、痛快無比な活劇として歓迎するかは、映画を観る者の立ち位置によって意見が分かれるところでしょう。
●感想
コジラとキングゴングが激突したCGを駆使した迫力満点の怪獣プロレスで楽しませようとする色合いが強い一方、ドラマ性は薄いのです。ただ終盤のアイリーンとジアの疑似親子関係とふたりの絆の強さには、ホロリとさせられました。
一番の疑問点は、コングとは敵対関係にあったゴジラが共闘するという設定。いくらモスラの仲介があったにせよ、これまでの激しい両者のバトルを見せられたものとしては、やはり疑問に感じます。
とにかくコジラ映画として期待すると損をしそうだし、なんでこんな作品のコマーシャルにノコノコと山崎監督がコメントを寄せるのかとコジラファンとしては腹立たしい限りです。その点、ゴジラなんて気にしないキングゴングのファンなら満足できそうですね。