「VFXチーム の頑張りがよくわかります」キングダム 運命の炎 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
VFXチーム の頑張りがよくわかります
キングダム 運命の炎
2023年公開
キングダムシリーズ第3作
不朽の名作グラディエーター第1作の冒頭のゲルマニアの平原でのローマ軍団と蛮族の戦いシーンにもそれほどひけを取らないスケールと迫力の合戦シーンでした
ローマ軍団の方陣と秦の軍団の方陣
本作はVFX ですが、チャチなことはなくそれなりのクォリティがあります
その千人ほどの方陣がいくつも行進して動く様は、戦場全体を俯瞰するために本作のものは少し遠目気味ですが人間の集団が一人一人個々に動いているように見える程度には作り上げられています
欲を言えばその中の一人をアップで追いかけ、カメラを引いていって大軍団全体を見せる、またその逆があればさらに良かったと思います
特に気にいったのは、両軍の激突シーンです
防備側は最前線の兵士が号令一下、丸い盾を二段に重ねて、その背後に隠れつつ、盾の隙間から槍や、長剣を突きだしつつ激突の衝撃に備えるシーンの描写です
グラディエーターでは単なる激突にすぎず、戦術的に考証するとどうなるのか?それまでの弓矢、カタパルトの組織だった投射シーンの綿密な考証に比較するとおざなりで不満だったところを本作ではこう表現すればよいでしょうと良い解答例を示してくれていて嬉しくなりました
もっともグラディエーターでは防備側は蛮族なのでそのような戦術を持ち合わせないという表現だったのかもしれません
更にグラディエーターでは、その直後、敵の後背の森林に伏せていた騎馬隊が敵の背後から突撃して
蛮族を浮き足立たせ、背後から撫斬りにしてしまいあとはもう無秩序な乱戦のみという表現でした
本作では、両軍が常に集団で機動しているように表現されていて、乱戦になっても斬り合っているのは少数で、大多数はサッカーのように縦横に走りまわって集団でより優位な位置につこうとする様子を映像表現しようと工夫されていました
そこに古代の大軍団同士の戦いに大変リアルさを感じました
この戦いは、大将軍同士の知能戦であるという本作のテーマ表現にもなっているわけです
アクションシーンはアクションチームに丸投げするのではなく、監督の意図がそこまで徹底されているのが見て取れてさすがだと思いました
とはいえエンタメ的なシーンはエンタメに十分に振り切っています
敵将への直撃シーンや、闇商人の馬車の西部劇を思わせる爆走と弓矢射シーンがそれで、大いに楽しめました
VFXチーム の頑張りがよくわかります
ことに城郭の巨大さ、材質感の表現が素晴らしく、周囲の映像とのシームレスな一体感が際立っていて感嘆しました
ことに空気遠近法の表現が巧みでした
VFXスーパーバイザー:小坂一順、神谷誠とあります
自分は神谷誠さんの名前に注目したいと思います
彼は東宝の特撮の川北紘一さんの弟子になります
川北紘一さんは昭和ゴジラ、平成ゴジラシリーズの特撮を担った方です
つまり、円谷英二、中野昭慶、川北紘一という特撮の正統なる系譜に連なる人です
いわば東宝特撮の王統の出
えいせいのような人です
1965年生まれ
ゴジラ-1.0 の山崎貴監督は1964年生まれ、シン・ゴジラの樋口真嗣監特撮督は同い年です
これからもさらに素晴らしいVFX を見せてくれるに違いありません
キングダムシリーズのVFX もますます良くなって私達を驚かせ、楽しませてくれることでしょう
今話題の吉沢亮さん
さすがの二枚目
男でも見とれます
王としての風格も表現できていました