「紫夏編どうにかならんかったか?」キングダム 運命の炎 裸のチェーホフさんの映画レビュー(感想・評価)
紫夏編どうにかならんかったか?
ある人の映画評論によると映画はTVドラマとは違って面白さを追求するところではなく、すごい映像が撮れる事が至上命題とのこと。だとすれば構図や迫力といった映像面なら邦画の最高峰といってもいいかもしれない。
そしてドラマ、物語といった面からいうと残念な邦画のお手本。
気になったのが構成と演出。
導入、メインキャストが信の消息を気にする→主人公信の活躍シーン無し、部下と二人で丘?に登って「終わったな」と言うだけ(ギャグか?)。
趙の大軍の侵攻→趙軍すごいの戦闘シーンとか怖いの残虐シーン無く、何故か町の外に住民を並べて将軍たちがお喋り(メイン悪役たちの登場と紹介シーンだろうけどエピソードも何もなく役者に丸投げ)。
軍議シーン、呂不韋と昌文君の丁々発止の掛け合いや宮廷闘争が全く盛り上がらない。役者は悪くない、相手の目論見を潰して読み合いに勝利したという描写が演出にノープランだっただけ(細かく説明しろとは言わないがここが見せ場と分かるメリハリ演出はしてくれよ)。
返答次第では帰るって態度の王騎を見事説得する大王のシーン、のはずが王騎は最初からやる気はありそうだし大王の話に感銘を受けた様子も微塵もない(これは二人の演技力に問題があるのではなく、王騎がそもそも内心の窺えないキャラだから演技ではどうにもならない、撮り方や会話で説明や補足を脚本に加えなければ不可能)。
その後の紫夏編にしても決戦シーンにしても、漫画を映像にするならそれなりに足し引きしなければ説得力やリアリティが足りなくなるし、変な間や無駄な会話が生まれる。(矢が刺さった時などもっと緊迫感を演出すべきだった、勧進帳で言えば弁慶が牛若を打擲して白紙の勧進帳を読み上げるクライマックスシーンじゃないんか?面白くする努力が一切見えない)
その次に気になったのが、感動や驚愕をそれっぽいでかい音楽を流して観客に強要してくるところ。昔のドリフのように笑ってほしい場面で笑い声の音声を流してきたり、ワイドショーで番組側がディスりたい話題の時に不安を煽るような音楽を流してみたり。人の感情をコントロールする手段としては初歩的であり映画では欠かせない手法ではあるが、肝心のシーン事態が感動できない場合に感動曲をかけると、ギャグにしか見えなくなる。音響担当は自分の仕事をしているだけで悪くない。問題は泣けるシーンを泣けるように演出できないスタッフの問題。
原作未読なので、これが原作からそうなのか、映画がひどいのかはわからないが、エンドロール流れ始めた時に真っ先に思ったのは「良かった!前後編で」生まれて初めて劇場から逃げ出すとこだった。
お金返せとは言わん、役者もほとんどのスタッフも充分な仕事を果たしているのを感じるので★2つ。