君たちはどう生きるかのレビュー・感想・評価
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一族の私的な大冒険
先週公開された映画「君たちはどう生きるか」を鑑賞した。10年前に引退した宮崎駿が82歳になって製作した本作は、宣伝を一切行わないという宣伝を行ったため、自分は吉野源三郎の同名小説が原作と勘違いしていた。
吉野源三郎の小説は中学1年の時、地元の学習塾で小説家崩れの講師からプレゼントされ、夢中で読んだ記憶がある。あれから間も無く40年。映画はコペル君と叔父さんの交換日記ではなく、監督お得意の冒険ファンタジーだった。
宮崎駿が人生の最晩年に何を考え何を表現するのか、それはそれで興味深い。年寄りばかりが登場し躍動する本作は、過去の作品のオマージュと言うかパロディと言うか、集大成的な構成ではあるものの、次世代へバトンを託す意欲は感じられた。
また、舞台を戦中に設定しているが政治的・社会的な問題には踏み込まず、広大な宇宙空間や生命の死と再生を描きつつも、一族の私的な大冒険が最終的には子孫繁栄に収斂されているのも印象的である。
映画の評判は芳しくないようで「訳が分からない」とのコメントが目立つ。確かに訳が分からない。しかし、理解の容易な作品が好まれる昨今、あえて突っ込み所が多く、多角的で自由勝手な解釈を可能にしつつも、言わんとしている事は伝わる。
だから、自分は楽しめた。そして、これで終わりじゃないだろう。
宮崎駿の期待に応えられなかった我々
悲しい。ごめん。私たちは間違っていた。
宮崎駿は、人の良心というか、悪意に犯されていない意志があることを信じていたし、愛し慈しんでいた。けれど奪いあい貶めあう酷すぎる社会、ますます酷くなっていくこの社会にあって、絶望の底にいる。
空から突如として飛来し、誕生した塔。その中は全く別の時空間となっており、天国、地獄、あの世、彼岸、ニライカナイ、何とでも呼んでいい場所で、死んだ人も生まれる前の命もいる。何より、この酷すぎる現世とは異なる、ここではないどこかである。大叔父様として登場する宮崎駿は、そこが尊い場所であると悟り、すぐに保護した。そして現世を見限った宮崎駿は、広い集めたほんの少しのきれいな石=悪意に犯されてはいない石を積み上げ、世界とした。現世とは関わりを断った場所で積み木をして何十年、年老いた自分に代わり積み木をしてくれる(美しい心だけの世界を継続していってくれる)人を見出だし、あとを託そうとした。
しかし若き眞人は、自分は悪意を知っている、自分はあとを継ぐことはできない、と断る。墓石を墓石と見分けられるような目を持った君ならできる、と食い下がるが、結局短期なインコの王の癇癪によってジブリは、間違えた、異世界は崩壊してしまう。そしてそれが戦前の話であり、宮崎駿が青年期以降生きた戦後から今の時代は、実はすでに素晴らしきもの=美しい心の世界は崩壊していたんだ…
宮崎駿の孤独を埋められるような、同じ世界で会話ができるような人間はついに現れませんでした。彼は伝統とも血統とも何の関係もなく、落雷のように飛来して、美しい心を慈しむという活動を続けてきた。彼の世界を構成するエネルギーは、宇宙からやってきた謎の高エネルギー岩石。結局誰とも繋がれず、後にも遺せず、宮崎駿の活動はいずれ喪われていくのでしょう。
現世のシーンなんて、ホントにちょっとでしたね。酷くて醜いだけのこの世界なんて見たくも描きたくもないのかも知れない。
不甲斐なくてみっともない我々に怒ってくれていた時代もあったんでしょうが、今はただ空しい悲しみとともに死を思っているのでしょうか。
彼に希望や期待を持たせて送ることはできそうにもない。ごめん。ほんとにごめんなさい。宮崎駿。
面白い!ぜひ見るべき!
最初からわかってる
冒頭のシーンで「これは子供に向けた作りではないのかな」と感じました。
映画のタイトルがあの本と同じなので、子供や若者向けのメッセージ性のあるものなのかなと思っていたから意外でした。
宮崎作品にしては戦争の描き方が凄惨だったので。
なので大人に向けたファンタジーなのだと思います。
賛否両論なのはファンタジーの種類にそれぞれ好みがあるからかなと。
ファンタジーでありつつ、細部の設定や人間感情がリアリティであるものが好みか、
前後の脈絡がなく、寝ている時に見る繋がりのない夢のような世界観のファンタジーが好きか。
本作は完全に後者ですね。
私自身は守り人シリーズのような細部まで作り込んでいる設定のファンタジーが大好きですが、
本作にいたってはずっと夢を見ているような感覚で「夢で見る…あの感じ…」という世界観が非常に心地よかったです。
ストーリーで考えると初っ端から、
お父さんデリカシーもモラルもなさすぎ~
という感じですが、本作の伝えたいことはそこではないのでしょう。
この映画をどういう視点で見て、どう感じるか
全てこちらに委ねた作品の印象でした。
幅広く楽しめる作品ではないと最初から分かっているから公開まで宣伝しなかったのかな?
私にとっては初めから終わりまで楽しめる作品でした。
確かに宮崎駿の原液、そして意味深長
自分は好きだが 他人に勧めることが難しい作品
トータルで言えば個人的には好きなタイプの映画だったのですが、
万人受けはしない映画だと感じました。
話は詩的で哲学的で若干分かりにくく
特に子供は下手したら序盤に飽きてしまうだろうと思いました。
序盤劇的に派手な場面もなく主人公の言葉数も少ないため、
こちらで感情や空気を汲み取らなければならない場面も多いです。
ただジブリですから無駄なシーンや余白はなく
表情や場面表現で大体読み取れます。
個人的には言葉にできない言葉や感情があり
作品の空気から感じる世界観が好きなため
多弁すぎる作品より寧ろ好感は高かったのですが
通常アクションやコメディ等パッとメリハリがある
娯楽向けの作品を好む方には受け入れ難い部分もあるかと思いました。
感覚的に言うのであれば
普段漫画しか読まない友人に面白いから古典文学作品を勧めるような気分になります。
決してこの映画が悪いのではなく
見る順番・時期を考えたほうがいい映画だと思いました。
正直ジブリのことを知らず初めて見るジブリ作品がコレというのは遠慮したいです。
いくつかジブリ作品を見たうえで
ある程度大人になってから鑑賞するか
欲を言えば小さい頃チラッと見た記憶があって大人になって見直すことをしたい作品です。
その為単品の作品で考えたときは
ものすごく評価がしにくい作品だと感じたので
見るかどうかは評価の星の数は気にせず
自分に合うか考慮して考え欲しいと思いました。
宮崎駿の老いを、どうしょうもなく感じた
ジブリの詰め合わせ?面白かった!
大荒れ確定な枠ではあるのだけど、どう採点するかすら悩む…。
今年239本目(合計890本目/今月(2023年7月度)25本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))。
まず、本映画自体、かなり最近になって唐突に放映が決まったのか告知されたのか、ほとんど何の告知もないまま始まったという特殊な事情は考慮する必要はあります。
この手の映画で同じ趣旨なのはスラムダンクですが、この映画は内容の判断はあれどう考えてもバスケ映画としか解釈しようがなく(いきなり野球をするとかという判断はちょっと無理)、「それでも内容はだいたいこうなのだろう」という推測はできました。
一方でこちらの作品は本当に情報がなく、そもそも鳥のイラストがいきなり出てくるだけでそもそも「アニメなのか何なのか」すらわからないまま多くの方が予約されて見に行かれたのではなかろうかと思うのですが、当方が見に行ったときには最後までいた方が5割くらい(つまり、半分くらいの方が脱落していた)だったのが印象的なところです。
趣旨的にテーマが何なのか…ということを積極的に書きづらく、一方で、この監督さんの過去作品からすると、主にお子さんをターゲットにした作品が多いように思えますが、本作品に限って言うと、一般的なお子さんでは理解がかなり難しいのではなかろうか…というところです。リアル固有名詞こそあまり出ないものの、実際に参照されている事象に関してはそこそこの知識が要求されて、そこに映画独自のファンタジー要素が絡んでくるため、理解の難易度というか、「要求される深さ、幅」が読みづらく、またかつ、このタイプの映画の一般的な放映時間よりも2割増し程度で長いため、一回で理解しづらいという方も2度3度見るか…というと難しいところもあり(映画の鑑賞料金もあがりましたよね…)、こりゃどうか…というところです。
ただ、さすが有名監督さんということもあり、ビジュアル面に関してはとてもきれいだし(劇場版ヴァイオレット~を彷彿とさせる)、「大人であれば」趣旨はある程度(8割くらいか?)理解できるというところはあり、積極的な減点幅までは見出せないところです。
これまで考慮して以下のようにしています。
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(減点0.3/映画のチョイスの際に支障をきたす)
・ 多くの映画館は3日前予約(一部例があり)という事情もあり、特に今週(7月2週)は3連休という事情もあり、どこも映画館は混んでいる状況で予約も結構競争率が激しかったのですが、その中で、「あまりにもシークレット要素が多すぎる」映画は、映画のマーケッティング的には理解はできますが、映画のチョイス・予約の際に支障をきたしますので、最低限の情報は出してほしかった、というところです。
※ これが極端にひどすぎて「採点不能」等大荒れになったのが「それがいる森」「大怪獣のあとしまつ」だった。
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宣伝しないというネタかな
この作品は正直な所 私は何も感じない
退屈な作品だと思うが
何かを感じる人もいるのだと思う
印象的には 「テネット」を観た時と同じ感覚
なにか難しく作ってやれば理解しようと
面白がるみたいな感じ
もしかしたら2回観たら印象は変わるかも
しれないが…
特に説教臭事もなく、何かを生み出す事もなく
負けず嫌いが興行成績を取り返す為に
事前情報を流さず、広告を打たないという事で
話題にさせて足を運ばせよう
内容を一方向ではなく、切り取られたものを
時間軸をズラして分かり辛くしよう!
そうすれは何度も足を運んでくれるだろう!
みたいな作戦な気がします…
結論は退屈な作品 だと思う
テネットの時も
俺はセンスあるから理解できるんだぜ!
みたいなのがわんさか湧いたけど
今回もそれな気がします
何となく過去のオマージュなのか
そんな無駄な妙に動く動画が意味不明で
作品や人物には関係なく俺こんな動画出来るんだぜ!
なだけで余計に意味不明にしている感がある
年寄りの年寄りによる、昔は昭和はこんな感じに
作っていたんだ! みたいなアナログな感覚で
力のかけ方や編集が今に合ってない
そして言えるのは、
いつも映画を観に来る層ではないので
マナーは最悪だという事だね
開始して15分は経とうとしても
平気でワラワラまだ入場してくるし
家で映画でも観てるかの様に席を立つのが
わらわら居るし…
タイトル通りの作品でした
宮崎駿監督らしさ全開でしたな。
そして、のっけからすごい作画。
堪能、堪能。
自分には「いい引退作」「宮崎さんの集大成」に思えました。
これまでやってきたすべてが入っている気がしました。
ラーメンなら、トッピング全部盛りみたいな。
(ゆえに人によっては、手癖の連発、セルフオマージュの嵐であり、過去作のつぎはぎと焼き直しとしか感じないかもしれません)
物語としてはシンプル。
行って帰ってだけの異世界彷徨譚。
ずっと前を向こうとあがく、主人公の少年の眼差しはよかった。
思い付きとご都合主義のラッシュなのに、そうと思わせない画作り。
レイアウト、コンテ、キャラの動き、あらゆる演出と物語の力なんだろうなぁ、きっと。
どこか30代の拗らせた文芸映画青年の匂いすらする若さがあって、説教臭さがない。
本当に80代なのか?
また再来年あたりもう1本作ってないか?
というエネルギーも同時に感じました。
(本田雄さんはじめ、作画陣の尽力が大きいのでしょうが)
主人公の心理状況や、時間軸に関する設定は、大人には理解可能ながら、20代以下には難解と捉えられてしまう気も。
というのは、今の20代以下って「我々50代~60代が幼少時に読んできた、妙にSFチックな児童文学やジュブナイルSFの洗礼を受けてないんじゃないか」という推測からきています。
まぁ(別の作家さんの作品ですが)『かがみの孤城』の子どもの気持ちや、時間軸の仕掛けとかが理解できる読解力・理解力があれば、全然問題ないんですけど。
個人的には、本作は(幼児は無理かもだが)小学校高学年、いや、中学生以上には観てもらいたい印象。
あと、少年の前向きな心を忘れつつある、心のくたびれた大人にも。
タイトル通りの作品でした。
(でも、デートには微妙かも)
音と絵を味わうには、Dolby Cinemaが一番向いていそう。
大きめスクリーンのDolby Atmosスクリーンや、IMAXレーザーの選択もありだと思います。
ゲップが出る内容
ネタバレなしで書くと
監督の頭の中の内容を全て映像にしたイメージかな。
あちこちのシーンで過去の監督の作品らしいシーンを
彷彿とさせる映像が沢山出てくる。
それだけではなく、
影響された映画のシーンのオマージュらしき
映像もあった。
映像は凄まじいと形容したくなる出来栄え。
スタジオを一度閉鎖して
新たにフルディジタル?で作成したのか
美しさと複雑さが相まった新しい映像となっている。
この感想はプロのアニメーターに
解説してもらいたいと思う。
ストーリーは混沌としている。
この辺は監督らしいと言える。
カオスそのもの、
終わってみればそれが何なんだ、
と言うツッコミを入れられる・・・・
そのようにも捉えられる。
(ハウルやポニョのように)
でもこれが宮崎駿監督なんだろう、
と納得できるできばえだと思う。
映像の美しさだけでも堪能できる、
色々な楽しみ方を何度も楽しめる、
そう言う映画なのだと思う。
零号試写でどう宣伝すれば良いのかを
悩む鈴木プロデューサーの顔が浮かぶ。
相当悩んだのではないかと思う。
観て損はない。
観る人を試す映画なのではないだろうか。
ストーリーはおまけ…かも?
IMAXで視聴。
ぽかーんとしてます。
悪く言えば今までのジブリ作品のセルフオマージュ。
ストーリーも、色々なジブリ作品を繋ぎ合わせたような…夢をそのまま映像作品にしたそんな映画でした。
しかし、胸にズシンと残るものがある…。
これはなんだろう…?
ストーリーは上記のようなものだし、一個の作品としては正直言ってまとまってない。
わからん!という人も、さもありなんと思います。
色々考えたのですが、私はこの作品はすべてのクリエイターに対して「俺等(ジブリ作品)の真似をせず、自分の物語を創作(つく)っていって欲しい」との願いを込めた作品だと強く感じました。
俺達はこう創作(いき)きたぞ、お前たちはどう創作(いき)るんだ?と。
何かを創作する人には、とても強く刺さる作品だと思います。
宮崎駿はどう生きたか
乱暴な言い方ですが、もう充分に老いたギリギリのじいさんの戯言です。
ただ遂に宮崎駿の数々の鮮烈なイメージは誰からも脅かされる事はありませんでした。
御大のおそらくは最後の作品。
ハウルの頃からすでに起承転結は手放していますし、内容はあってないようなものです。
純文学を読んでたのに、挿絵が増えていって、散文詩と絵本で終わった。そんな感じです。
さらに動きも舞台も背景も設定も世界観も全て、彼の全盛期を知っている我々からすると悲しい程に衰えている。
ですが、凄みはあります。
具体性の塊であるアニメにおいて、凄みだけがある、というのは異常な状態です。
それだけで劇場で映画を観る価値はあります。
そして本作を観て、彼がどう生きたか、もうすでに彼の映画作品達から受け取っている事に気付きました。
君たちはどう生きるか、という問いは、俺はこう生きてきた、という晩年の叫びと表裏一体なのでは、と思いました。
そして更なる次回作を、期待しております。
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