君たちはどう生きるかのレビュー・感想・評価
全1987件中、1781~1800件目を表示
タイトルに恥じない傲慢な映画
アレハンドロ・ホドロフスキーのようなシュールレアリスティックな画面構成とフェデリコ・フェリーニ『8 1/2』のような祝祭性。キャリア終盤の巨匠に好き勝手やらせるとやはりこういうものが出来上がるのか。物語は登場人物たちの溢れ出る生命力によって織り上げられたものというよりは、あらかじめ緻密に構想された一枚の巨大な寓意画を端から端まで徐々に読み込んでいくプロセスのような感じ。『君たちはどう生きるか』というタイトルに恥じない、いつも以上に傲慢な映画だった。登場人物たちの動機に焦点を絞って鑑賞するとひたすら不愉快な気持ちで劇場を後にすることになると思う。
異世界で眞人が出会うさまざまなものごとはどれもが悪夢のように薄気味が悪い。ペリカンの群れと荒野に立った金色の扉とか、天に昇っていくフワフワした生命体とか、人語を喋る巨大なインコとか。変におどろおどろしかったりものものしかったりしないあたりが逆に気持ち悪い。こういう気味の悪い描写や造形に関してはやはり宮崎駿は天才的だと思う。ただ、彼自身本作をキャリアの集大成的なものと見なして制作しているところがあり、それが過去のアーカイブの安易な再奏という形で露呈してしまっているのは正直どうなんだろうと思った。過去作のどこかで見かけたようなオブジェクト、生命体、風景。確かに「あっこれ『もののけ姫』のアレだ!」とか思うけど、それが何か新たな意味や意義を振り出しているとは思えなかった。おい爺さん、この期に及んで安っぽいファンサービスなんかせんでもええんですよ。とはいえ第二次世界大戦開戦直後という時代設定が前作『風立ちぬ』の自己模倣と見せかけて実はきちんと劇中での必然性として機能しているというミスリードは見事だったと思う。
世界の秩序を司る大叔父は眞人を自分の後継者に指名するが、眞人はそれを辞退する。世界を自分の思うがままに作り変えられる特権より、彼は「あんまり好きじゃない」はずの現実世界(母親は死に、継母とはギクシャクし、父親はややマッチョ気味で、世界は今まさに戦火に包まれている)に帰ることを望む。眞人のこの選択が庵野秀明『シン・エヴァンゲリオン』の着地点と相似であることは言うまでもない。ゴー・バック・リアル。セカイ系ってやっぱもうダメなんすよね。セカイはボクだけのものじゃない。名もなき無数の他者がいっぱいいる。庵野秀明もそう言ってるし、新海誠や村上春樹もそう言ってるし、遂には宮崎駿までそう言い出してしまった。本日をもってセカイ系は正式に営業を終了させていただきます。誠にありがとうございました。
これ何の話?
結局、観てて単純に面白いのか面白くないのかと訊かれれば、言うまでもなく面白い。撮影も演出も凝りに凝られているのだから観ていて視覚的に飽きることはまずない。よしんば終盤30分の抽象的で不可解な物語展開に振り落とされたとしても、青空に浮かんだ岩やうねる廊下、水面に点々と並ぶ石畳、あるいはヒミの美しい寝顔に見惚れていればあっという間に終幕する。何か一つのトピックに乗れずとも、他に無数の経路が提示されているのが宮崎駿作品のいいところだと思う。苦手な作品は多いがクソつまらなかったなと思ったことはない。作り込まれてるよなあ。もう一本くらい撮ってくれたら嬉しいな。
P.S.劇中で一番可愛かった鳥は屋敷の庭先でエサ啄んでたヒヨコ
私たちは何を観たのか??
と、この映画を見た多くの人が思ったのではないか?
などと予想します。
善しも悪しも、正直にいって分かりません。
半分もこの作品の世界の意味を、
理解出来なかったように思いますので。
ただ、途中から何だか凄く笑えてきました。
この映画作ってる監督のジイさん、
本当に天才だな、と感じたからです。
何でこんなにも、天才的で独創的で、
ワケのわからない映画を、宮崎駿は作ったんだろう、
と考えたくなる謎のオンパレードで、
最後の最後まで不思議すぎたのです。
どういう構造でこの映画を作ったのだろう。
分からない。
生まれて来てよかった。生きろ。生きねば。
【『失われたものたちの本』について追記】
2023.7.27
宮﨑駿監督が映画化したいと切望した物語。
それはアイルランド生まれのジョン◦コナリーの書いた『失われたものたちの本』
映画の理解に役立つかもしれないので、一部を概説します。
第二次大戦下のイギリス。12歳の少年デイヴィッド。愛する母親を亡くした直後、こちらの世界ではカササギの姿で現れる〝ねじくれ男〟にこう声をかけられます。
「わしらは待っておりますぞ。ようこそ、陛下。新たなる王に幸あらんことを!」
ドイツ軍の爆撃機墜落をきっかけに、デイヴィッドはねじくれ男の待つ異世界に入り込み、冒険が始まります。
冒険と言っても一般的なファンタジーと違いこの世界は暴力と血とブラックユーモアに塗れています。赤ずきんと狼の間に生まれた人狼と闘い、太った大食いの白雪姫に抑圧された小人は権利を主張したり。ダークファンタジーというだけでは収まらないほど少しのエロとたくさんのグロに溢れています。
少年デイヴィッドも盗賊相手とはいえ、正当防衛の域を超えて人を殺します。
デイヴィッドが、新しい母親(妹ではなく、亡くなった母親の看護施設の人)から生まれるこどもを憎む感情は、父親を奪われたと思う少年にとってはある意味、無邪気とも言える素直な嫉妬だが、異世界のねじくれ男は、このような少年少女の負の感情を糧に生きながらえているのです。
デイヴィッドに母親の声を聞かせて異世界に誘い込んだのもそのためです。
この異世界にも王が存在します。ねじくれ男は、ある思惑により、この玉座をデイヴィッドに継がせようとするのですが、この物語の核心はここにあります。デイヴィッドが少年から大人になるための闘い。
亡くなった母親が少年に伝えたこと。
『物語は読んで欲しがっているのよ。読んでもらわなくちゃいけないの。だから物語は、自分たちの世界から人の世界へとやってくるのよ。私たちに、命を与えてもらいにやってくるの。』
ねじくれ男の人間観の一端を表すセリフ。
『お前は誰かに邪悪な行いをさせられたのではないぞ。そんなことは誰にもできやせん。己の内に飼う邪悪に、お前が溺れただけのことさ。人間とは常に、自らの持つ邪悪に溺れるものだからな』
異世界に現れる怪物や凶悪な敵。
理性など働かない少年少女時代の邪悪な動機によってもたらされる不幸。
その不幸を招いた責任を負わせることで少年少女を支配するねじくれ男。
以上は、ほんの一部ではありますが、宮﨑駿監督に、引退を撤回してでもまた映画を作りたい、と思わせた要素のいくつかであることは間違いありません。
想像できるものは、なにもかも現実である。
ーパブロ◦ピカソー
【悪意の石について】2023.7.29 補記
こんなシーンがありました。
「あと一日は保つ」といった後だったと思うのですが、大叔父が手のひらに乗せた3個の石を示しながら、
「眞人、この石をお前が積み上げるのだ」
「いえ、その石には、墓石と同じ悪意があります」
と拒否した眞人。
あの墓を構成している石は、大叔父にこの異界を作らせた石の一部であり、この世界の悪意でもある。或いは、墓石自体に悪意を封じ込めてあるのか。
もしかしたら、〝パンドラの墓〟的なものなのか。
この映画における悪意とは、個人的な受け止めとしては、〝支配〟と〝抑圧〟。
支配とは、国家や帰属集団の統治システムのことでもあれば、子にとっての親という場合もある。
抑圧とは、支配する側の意図的な情報遮断により、その世界の仕組みや実相を知らずに生きている人たちであり、息苦しさを肌で感じている場合もあれば、始めからそういうものだと刷り込まれている場合もある。
石との契約で条件をつけられていた大叔父も、抑圧されている側のひとりとも言える。
『わたし(悪意)を学ぶものは死す』
これが、なんらかの教訓を含む言辞なのか、支配するものからの牽制なのかは、わかりません。
石との契約で成り立つ世界には、〝死〟が多いとキリコも言ってたのは、そういうことと無関係ではないと思います。
この世界の支配を続けるものは血縁(たぶん男子限定)でなければならないのは、この世界の永続性を弱めるための仕組み?
眞人のように、こちらの世界に飛び込んでくる子孫がいなければ、その時の支配者の寿命とともにこの悪意の世界は消え去るようにできている?
ということなのかどうか、まだまだ分からないことがたくさんありますが、そのぶん繰り返し見たくなります。
【二度目の鑑賞後の追記】2023.7.18
①積み木の数について(もし、監督に何らかの意図があると仮定した場合)の穿った考察。
初めの積み木の数は9個(数え間違いでなければ)。「これであと1日は保つ」と言ってた場面です。
スタジオジブリ、ではなく宮﨑駿監督作品という括りで並べると、こうなります。
カリオストロの城
風の谷のナウシカ
天空の城ラピュタ
となりのトトロ
魔女の宅急便
紅の豚
ON YOUR MARK
もののけ姫
千と千尋の神隠し
当時の日本映画史上最大のヒット(304億円)、かつアカデミー受賞。この節目の作品でちょうど9作品。
積み木とは言っても、素材は石、それも悪意ある石。
ここで言う〝悪意〟とは邪悪な悪という意味ではなく、『確信犯的に自分の意図を込めてるよ』というほどの意味なのだと思います。法律用語で何も知らないまま、関わってしまった人のことを〝善意の〟第三者と呼ぶのと対をなす意味合いで。
ハウルの動く城
崖の上のポニョ
風立ちぬ
君たちはどう生きるか
以降の4作品を加えると、9+4=13!
インコ大王が積み上げたと同時に崩れた積み木の数は13でした。が、大叔父が、はじめの9個とは別に各地で拾い集めた無垢で悪意のない石だ、と言ってましたから、監督作品の数と同一視するには無理があります。
はじめの9個はこの13個の中には含まれないはずです。
単なる遊び心でちょい数合わせしてみた。そんなことならあったのかもしれませんね。
宮﨑駿監督は、紅の豚の制作中に湾岸戦争が勃発すると、「こんな時に能天気なものは作れない」と発言してるし、ハウルの時は、「今日性のある、作るに値する作品」にする、とやはり言ってます。いつでも、その時見る人たちの感性、世界情勢の影響も受けているに違いない人たちに寄り添う作品を生み出そうともがいています。
ポニョの時には、「少年少女、愛と責任、海と生命、これら初源に属するものをためらわずに描いて、神経症と不安の時代に立ち向かおうというものである』とも書いてます。
最後に大叔父が、真人やヒミや夏子に向かって、それぞれの時代に帰れ❗️と叫んでいたのは、我々観客に向かって、それぞれの世代で、なすべきことをしなさい‼️
そう言ってるように聞こえました。
一部で言われているような家族や周辺のアニメーターその他関係者のことを主要テーマとして描こうとしたら、そんなつまらないことでは、そもそもスタッフが着いてきません。チームでやる仕事ってそういうものです。
だから、ジブリ或いは宮﨑駿監督の作品として発表できるほどの仕上がりにはならなくて、頓挫したと思います。
②なぜ鳥なのか、なぜ夏子は入り込んだのか
神社には、鳥居があります⛩
異界との結界という意味合いなのだと思います。
それを知ってる夏子は、だから弓矢を持っているし、使えもする。
真人が、鳥🦅の影響で、異界に連れ込まれるのを阻止しようと自ら結界を超えた。そんなふうに見えたし、産屋(うぶや)での剣幕もその思いから発せられたのではないでしょうか。
(ここまで追記)
(以下は、はじめのレビュー)
正直、SF的設定の部分は、一回見ただけではよく分からず、家に帰ってからも頭を整理しきれず、取り敢えずもう一度見ることにしました。
でも、宮﨑駿監督がこれまで示し続けた、若者への一貫した応援メッセージだと思って見ると、テーマ性みたいなものは意外とスッキリと腑に落ちるように思えます。
他ならぬ我々日本人がしでかしたあの酷い戦争、やっと平和かと思ったら、経済成長という名の下に環境を破壊、バブルは弾けたけれど経済格差は厳然と残り、戦後いつまで経っても、若者が生きづらい世の中であることだけは不変。ネットには悪意が満ち、コロナ禍やウクライナのような外部からの影響もますます閉塞感を強めている。
6月21日に発売されたばかりの『スタジオジブリ物語』(集英社新書)の帯にはこんなコピーが刷られています。
4歳と14歳で生きようと思った。
「生きる力」を呼び醒ませ❗️
生まれてきてよかった。
生きろ。
生きねば。
(火垂るの墓、千と千尋の神隠し、崖の上のポニョ、もののけ姫、風立ちぬ。)
以下は、同書からの要約(一部引用)。
・宮﨑は、引退宣言後も月に3〜5冊の児童文学を読んでいて、ある時、「読んでみてください」と鈴木に渡した本があった。それはアイルランド人が書いた児童文学←この原作のままでは映画にならない、というとことで、最終的には宮﨑駿監督のオリジナル脚本、監督となった。
・その企画書を宮﨑が鈴木に渡したのは、2016年7月。
2013年に引退宣言をした宮崎が〝晩節を汚す〟ことになりはしないか、と危惧する鈴木に、「絵コンテを20分ぶんだけ描くから、それで判断して欲しい」
・絵コンテは本当に面白かったのだが、鈴木は迷い続けたままであった。そうこうしてるうちに返事をする日が来てしまい、宮崎のアトリエを訪ねたところ、宮崎はいつになくニコニコしていて機嫌がよく「お茶飲む?」などとコーヒーのお湯を沸かし始めた。
・鈴木はそんな宮崎の様子を見てると、「なんかもう、やるしかないのかな」と心を決め、「やりますか」と話しかけた。絵コンテ面白かったですよ、と声をかけても、跳び上がらんばかりに喜んでいる宮崎はもう聞いちゃいなかった。(笑)
本当は、絵コンテを描く、と言い始めた時点で、すでに抑えが効かなくなっていたのだ。
・今回は、共同製作となる出資会社もなくスタジオジブリの単独出資。とことん思うように作りたい、その責任もすべて負うという覚悟をもって制作。
・作画インから足かけ7年に及ぶ制作期間中、コロナ禍だけでなく、高畑勲ほか関係の深い何人かのアニメーターも亡くなるなど、悲しい出来事も多かった。
82歳の宮﨑駿監督の挑戦。
時空を超えたファンタジー、アメコミヒーローのパラレルワールド、スズメの戸締まり。
宮﨑駿監督流の『俺ならこうする』
それが、あの設定だったのだとも感じてます。
新海誠監督の考える扉は、あちら側が悪で、こちら側の世界に災厄をもたらすことになってましたが(本当はもう少し複雑でしたけど)、宮﨑駿監督の扉は、善悪の境目ではなく、どう生きるか、どういう世界にしたいのか、の選択肢のようでもあった。
劣悪な環境の社会ならば、そもそもペリカンに食われて生まれ落ちることも出来なかったかもしれません。
どんなに悲惨な世界であっても、生まれてしまったからには生きろ❗️そして、扉を開けて戻ってきた以上は、生きねば‼️
私にはそれらの叫びが、とても力強く響いてきました。
the宮崎駿、そして宮崎駿の最後感
当然のことながら、ネタバレ注意です。
面白いか面白くないかを口にすること自体がネタバレになりますよね(笑)
私個人としては、満員御礼の映画館で、あ、今自分は宮崎駿のジブリを、映画館で観ている!という感動を覚えました。
まず、冒頭から、第二次世界大戦、東京大空襲から始まり、母親の入院する病院が焼かれ、設定と描写にものすごい勢いで映画に入り込まされました。
そのあとはというと、盛り上がるまでが、若干長いなーと思いましたが、ここでいっぱい情報収集しとかないと、この後の展開が全くわからなくなるので、集中する時間ですね。
作品の中盤初めくらいまで何もかもが謎すぎるので、負けないでください。
訳がわからない、設定はどういうこと?というのを、セリフや作画から読み取ったり、考えないとわからないと思います。それが、義理の母が森へ失踪するまで続きます。映画の中盤くらいかな?とにかく負けないで!
(宮崎駿っぽくて私大好きです。ワクワクします。)
個人的な思いですが、
今までのジブリ作品を思い出させる描写がたくさんあって、個人的にはあーまたあれみたい!これも見直したい!見直さないと考える材料がない!と思える作品でした。
キャラクターたち、場所、設定などを、宮崎駿の周りの、人々、ジブリという会社、取り巻く環境などにも例えてると思いました。(例えばどこがどうとか、何が何の例えなのかは、何回か見て自分なりに自信を持ってこれだと思う!と言いたい気持ちです。)
機械たくさん出てくるかな?と思ったけど、全然出てこず、
ましてや主人公は地に足をつけて武器に弓矢を使っているのは、きっと理由があるはず、、と思いました。
けど、一回見ただけでは、自分はそこまでの結論には辿り着けませんでした。(個人的に宮崎駿の描くメカが大好きなので、全然出てこなかったのはちょっと悲しかったです
今まで宮崎駿と作品を作ってきた人への想いがメインで込められてる作品でもあり、
私たち観客への考え続けろという最大級の宿題みたいなのが出されたような作品だと思いました。
80歳のおじいちゃんが作ったとは思えない内容のどっさり詰まった作品です。
千と千尋や、もののけ姫みたいに、もう一度覚めやまぬ興奮のために映画館で観に行く気になるか、と言われると、うーんという感じですが、、笑
考え過ぎてすごい疲れちゃうんで(笑)
あと子供はちょっと怖いかも。(私は千と千尋が怖くて高校生まで見れなかったのですが、そのときの恐怖と同じようなものがあるので、お子様といくならちょっと気にしてあげた方がいいかも、、?)
個人的には、もっと宮崎駿作品、ジブリ作品を見直して、また映画館に行きたいと思います。
再認識させられるジブリの凄さ
超ジブリ。めっちゃジブリ。古き良きジブリ。
もし原作やベースにした物がないとしたら、
これだけの世界観を創り、それを映像化出来るのはやはり宮崎駿しか居ないのだろう。
キャラクター全てが印象に残るくらい一人一人の細かい仕草で愛着が湧く。このような所に気を配れるかどうかで作品としての説得力が増す。
セリフで説明しなくても動きで性格や背景が分かってしまう。
まるで昔から誰でも知っているかの様に当たり前にやってのけてしまう。
何か懐かしいものを感じ、2023年になっても観れた事に感謝をしたい。
僕たちはどう生きようか?
映画を観た自分なりの解釈を。
主人公は現実の世界で、母親の死や父親の再婚など自分の思い通りにはいかない人生に苦しさを感じている。
いじめられた後に自分を大袈裟に傷つけ同情を誘う、そんな卑しさや小ささも持っている。
現実は苦しくて目を背けたくなることばかりだ。
そんな主人公は青鷺に誘われ、現実から離れた「大叔父の創った世界」へと入っていく。
そこで生と死、冒険や友情に触れる。
そして最後にこの世界の創造主である大叔父に問われる。
まだ志半ばだが、さまざまな世界を見て積み上げた悪意のない13個の作品たち。
その上に君の作品を作って足し、この世界を継いでくれないかと。
大叔父はアニメに出会い、のめり込み、この大きな世界を創ってきた。
だからこの世界の中には、彼の創ってきた世界の痕跡が垣間見える。
だが彼の世界はもう時を経てバランスを崩し、崩壊寸前まで来ている。
彼の世界でたくさんの作品に触れ成長した主人公は自分の卑しい嘘に、小さな自分に向き合う。
そして彼の後を継ぐのではなく、苦しくても現実に戻り自分の世界を創っていく選択をする。
彼の世界で得た一つのカケラと共に。
宮崎駿は思うように生きた。
僕の作品に触れた君たちはどう生きる?
この世界でどんな新しい世界を作っていく?
僕の後を継ぐのではなく、君たちの世界を作ってほしい。
何かを創っている人やこれからの世代に向けたメッセージのような映画でした。
眞人は視聴者自身で、だから意志も感じづらく感情移入はしにくいのかなと。
何かを創ってる人間として「君たちはどう生きる?」という作品を作れる、作ることができる立場にいられることはとても羨ましいなと感じました。
これから皆さんはどう生きますか?
本当にありがとうございました
宮崎駿監督が最初から最後まで、その全部を自分の好きなように作ったような作品。それがもの凄い出てました。
そう、これは監督の自叙伝なのでしょうね。
何度も現れる彼の作った作品のパーツ達と、そこを一緒に通り抜けた仲間達。
特に高畑勲氏へ向けたであろう部分を多く感じました。
積木が13個なのも「パンダコパンダ」を含めた自身の13作品なのでしょう。
そして大叔父を通して託したかった、アニメーションの未来。
僕達はこう生きた、君はどう生きるんだ?
そう問いかけ、筆を置いたような作品でした。
数々の作品と感動と思い出、本当にありがとうございました。
宮崎駿監督の全て。
「君たちはどう生きるか」は宮崎駿監督の映画人生全部が描かれ主人公は宮崎駿さんでした。
今までの作品全て網羅されていて、
“僕はこう生きてきた。君たちはどう生きるのか。”
と見せつけられた自叙伝という映画でした。
タイトルは嘘?本当?
自分の作った閉じたバーチャル世界の王となるのか破滅に進んで行くと分かっていてもリアルな世界を生きるのか?
理想の世界のようで実は直系子孫のみしか継承出来ない不寛容さはネットコミュニティの排他的な居心地の悪さに似ている。
自分の思う穢れなき正義がどれくらい危ういバランスで成り立っているのか自分勝手な理論を積み上げて破綻する。
君の考えで世界は変わるのだから自分が傷つかない世界にいても良いし、リアルな世界を変えても良い。君たちはどう生きる?嘘(バーチャル)?本当(リアル)
タイトル通りの映画でした!
様々な解釈をして、多方面から楽しめる作品でした。
鑑賞した人はきっと誰かと話し込みたくなるはずです。(このサイトのレビューやコメントも含めて…)
パンフレットが(情報管理のため)販売されていませんでした。発売時期は未定だそうです。
売り切れではございませんのでご安心くださいませ。
パンフレットを買いにいくときにもう一回映画を見直してみようと思います。
ああ、ジブリの鈴木プロデューサーの高笑いが聞こえるようです。
補足:
パンフレットを買いました。
内容は巷で語られている通りでした。
でもこれはパンフレットの体裁をとった『絵本』だと思います。一緒に映画を観に行った人同士がこれを見ながら話し込む(とくに子供たちと一緒に)ものではないかなと勝手な想像してみました。なので声優がどうとかは絵本であればあまり関係がないのでしょう。
お値段も割りと抑えられているようですしこれはこれで『あり』だと思います。
細かいところが気になる方は『ジブリの教科書(っていうシリーズだったと記憶します)』が発売されるのを待ちましょう。
次回作の公開まではまだまだ遠いですからね。せっかちにならず。
ありがとう宮崎駿
もうすごい、アクセル全開!
宮崎駿の頭のなかをいまの最高のアニメ技術を駆使して再現しましたという映画でした。
序盤は丁寧に丁寧に物語が進んでいくんです。風景も美しいし、一人ひとりの所作がきめ細かく作られている。じわりじわり異変が起きる。
途中から不可思議な世界に突入して、訳分からない展開が続き、どんどん要素が足し算されて、もう観客置きざりです笑
わけがわからない。
だけど、それでいいんだと思います。だれかを感動させようとか、伝えたいメッセージがあるんだとか、そういうことじゃない。創作しながら産み出されたものがすべて。いまの宮崎駿、そしてホントに最後の作品だと覚悟した宮崎駿のすべてが詰まってます。こんな作品、商業映画じゃ止められる、きっと。だけど、日本最高のクリエイターが晩年に思い切りエゴでわがままで、整合性が取れてないだろう作品を作ってもいいじゃない。むしろそんな作品を見せてくれてありがたいと思えた。
上映前からドキドキが止まらなくて、またジブリの新作が観れるなんて夢みたいで。奇跡だなと。
映像はめちゃくちゃハイクオリティ。この10年でアニメのレベルはバカみたいに上がっていて、心配はあったものの、杞憂だった。ジブリのほうがすごいじゃんと思っていたら、エンドロールでびっくり。アニメ制作会社やアニメクリエイターのトップオブトップや集結しているんですね。
これは宮崎駿の集大成であるとともに、日本アニメの集大成なんだなと。
とにかく完成させてくれたことに感謝。宮崎駿という存在に感謝。これから何度も観る映画を残してくれてありがとう。
映像は楽しめる
これまでの作品のオマージュを感じたなぁ。あの演出、あのキャラはあの作品のあの場面に似てる!っていう面白さ。作画は凄いし躍動感もあって映像そのものは十分楽しめた。でもストーリーはファンタジーに突入してから「どうゆうこと?」と思うところがたくさん笑
お母さんが死んで、その妹が新たに母親になり(あの時代ってそういうのよくあったの?)、眞人はなかなかそれを受け入れられない様子で、夏子もそれを察してるかのよう。でもお父さんはそこが分かってなさそう笑
ファンタジーの世界を通して成長して自分と向き合い、他者を受け入れ戻ってくる感じ、千と千尋みたい。
あとヒミの描き方を見て、駿のマザコンぶりを感じた。
まぁあまりタイトルに引っ張られないで観ることをオススメします
いろんな人の考察も楽しみたい。
一周回れば世にウケるかも
ここのレビューを見るまでは本当にちんぷんかんぷんで何を伝えたかったか…観ながらにして考えてはいたが全く思い浮かばず、何かを比喩してるのだろうとは思っていたが、自伝的作品というのをレビューで見た瞬間に繋がる感覚があった。
数々の過去作品オマージュや大叔父の積み木、そして崩壊していく塔。考え、思い返すほどにもう一度見たくなる。
一周回れば世にウケる可能性はある。
スタジオジブリだけではなく、宮崎駿から見た、感じてきたアニメーション業界が反映されているものなので宮崎駿自身に興味がある人は見るべきかな。
ここまで書いたが捉え方は人の数だけあるので他のレビューや感想を見て、この作品に対する考察を自分で練るのが面白い。まだ初日、そういう楽しみ方をできる段階。
最後の宮崎駿作品を楽しもう。
あの頃、好きだった女性を、今見ない方が良いと言われているような作品だった。
「君たちはどう生きるか」を見てきた。
学生時代、ナウシカのロードショーの初日に見に行った。当時はアニメは子供の見るものだったので、午前中と言うこともあり大人は僕一人だった。ガリバー状態と言うか、巨神兵状態だった。
そして今日、上記の映画をロードショー初日に見に行った。
あの頃、好きだった女性を、今見ない方が良いと言われているような作品だった。
例えるなら、黒澤明の「夢」のような、
井上陽水のUNITED COVER2のような、
スターウォーズepi1のような、
あなたの青春は終わったんだよ!と告げられているような作品だった。
そうだよ、僕も歳を取ったんだよ。永遠の巨人なんかは存在しないんだよ。黒澤明と同年代の人は同じ感情を味わったのだろう。
彼も、老いる普通の人だったんだ。
僕はこの事実を受け止めるにはもう少し時間がいる。
宮崎家の貴種流離譚
アートして鑑賞するだけで、見たまま、感じたままをそのまま受け取るだけで、こんなに面白く感じるとは思わなかった。
もちろん2回目ということもあるし、岡田斗司夫ゼミのプレミア解説まで聞いているということもある。一番参考になったのは、村上隆が示したヒント。ベックリンの「死の島」。この絵をしばらく眺めているうちに、無性にもう一度見たくなった。「死の島」の意味は、漠然としかわからなかったが、宮崎駿の絵の力に引き込まれただけでよしとしよう。
評価は爆上がりです。
以下は、寝落ちしてしまった1回目の感想です。
あっけないラストにポカーン。エンディングで流れる米津玄師の曲を聞きながら思った。
これは、内省的な自伝的物語ではなく、宮崎家の貴種流離譚じゃないの。なんか鼻につく。
主人公の家庭は、戦時中にも関わらず、転校先の学校にダットサンで乗り付けるくらい裕福で、家には何人もの使用人がいる。嫌味なくらいのお金持ちの息子が、心抉られるくらいのどん底に落ちてしまう物語であれば、自然と感情移入もできる。
それがまた、苦難には程遠く、ほどよい試練の連続なんだよね。なんか、お伽噺を聞かされているようで、後半は何度か寝落ち。
期待したゆえに、不満を先にこぼしてしまいましたが、アニメーションに関しては文句なし。宮崎監督お得意の、サスペンションの動きを使って、車に演技させるシーンは絶品だし、アオサギの七変化やペリカンの大群は、大スクリーンで見ないともったいない。
物語としては、いただけませんが、すばらしい映像と芸達者な声優の演技を体感できるので、是非劇場でご覧になってください。
追記
2回目の鑑賞ポイント。
①ベックリン『死の島』との関連性
②キリコの部屋のワンピース。高そうでオシャレなワンピースが2種類ある。
③ワンピースの隣に掲げられているトルメキアの旗。
④菅田将暉の青鷺。七色の声。
⑤インコのフンまみれ=金まみれ
⑥大叔父=アインシュタイン=科学の負の側面
⑦ラノベ異世界ハーレム構造(夏子、キリコ、ヒミ)
⑧あっさりすぎるラス
⑨とんでもない迫力の冒頭シークエンス
全1987件中、1781~1800件目を表示