君たちはどう生きるかのレビュー・感想・評価
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私たちはどう受け止めるか
興行的戦略なのか、フラットな状態での鑑賞を望んでのことなのか、一切の事前情報を伏せられていた本作。それでも、ジブリ作品で宮﨑駿監督となれば、いやが上にも期待値は高まり、そして迎えた公開当日。仕事を終えて、映画館に向かう途中で見たレビューサイトでは、投稿数がすでに100近い中で、評価はあろうことか3.4!これにはかなりの地雷臭を感じながらも、覚悟して鑑賞してきました。
ストーリーは、戦時中の空襲で母を亡くした少年・眞人が、疎開先で父の子を妊娠した継母であり、母の妹でもある夏子と生活することになるが、なぜか夏子が失踪してしまい、彼女を探してアオサギに導かれるように森の中の塔に足を踏み入れ、その先にある別の世界で不思議な体験をするというもの。
…とまとめてみたものの、正直言ってほぼほぼ理解できていません。終わってみれば、継母を受け入れ、家族も増え、新たな家族として前向きに再スタートできそうでよかったね、というラストシーンだけで得た小並感。これが今のところの精一杯の感想です。
そこに至るまでの過程が、塔の中での不思議体験なのだと思いますが、これが実に難解です。登場人物の語るセリフがどれも意味ありげなのですが、理解できないものが多く、それが疑問につながり、結果として作品のおもしろさを減じているように感じました。ある意味、現実の困難や不満を感じた主人公が、異世界の体験を経て成長し、元の世界に戻って力強く前に踏み出していくという王道展開だと思います。しかし、肝心の変容部分がわかりにくいのがとてももったいないです。わかる人にはわかる奥深さはもちろんあると思うのですが、世代を超えて愛されるジブリ作品には、もっとわかりやすく万人に受け入れられる作品であってほしいです。
とはいえ、いきいきと動き回るキャラクター、細部まで丁寧に描かれたファンタジックな情景は、紛れもなくジブリワールドで、ジブリ作品を観たという満足感は得られます。他のジブリ作品を彷彿させるシーンも多く、宮﨑駿監督の集大成としての意気込みも感じます。それだけに、監督の思いを受け止められなかったことが残念でなりません。今後の監督自身のコメントや他の方のレビューを読んで補完したいし、それでヒントがつかめたら改めて鑑賞してみたいと思います。
宮崎駿の自伝的物語・アニメーションの終焉
「千と千尋の神隠し」以降、ストーリーが迷走していてわかりにくかったが、今回は起承転結が明確、物語の構造も理解しやすい。
説教くさい部分はあるが、それも含めて私としてはとても面白かった!
表面的な解釈は置いておいて、個人的な裏の解釈は、、、
高畑勲の作り上げた夢の世界に入り込み、鈴木敏夫と共に冒険を繰り広げる宮崎駿の自伝的物語。
最後は積み木崩壊≒虚構のアニメーションの世界の終焉。虚構の世界に浸からず、苦しくても現実をしっかり生きろというメッセージ。
大叔父:高畑勲
…夢と幻想と狂気の世界(アニメーション)を作り上げる。
青鷺:鈴木敏夫
…夢世界の案内役。嘘と口車で煽動し世界を操る。
主人公:宮崎駿
…青鷺とともに夢の世界を冒険し、最後に虚構を破壊する。
ついでに…
キリコ:色彩設計の保田さん?
ペリカンの埋葬:高畑勲のお葬式?
を連想してしまいました。
(追記)
インコ(大王):ジブリの利権に群がる広告代理店?
「桃太郎」を観に行ったら桃太郎も鬼も出てこなかった話
2023年劇場鑑賞168本目。
10年以上前になりますかね、君たちはどう生きるかを漫画化したものが結構ヒットして、自分も読んだのですが、その後宮崎駿が映画化すると聞いてコペル君に会えるのを楽しみにしていました。
あれ?コペル君は?
一瞬、文字でコペル君と見えておお、となりましたが、それよりもなんであのおじさんとの会話で人生の真理を見つけようとする原作がこんなアグレッシブな体験になってしまうのか謎過ぎました。
まぁ千と千尋の神隠しみたいな不思議体験だと思えば独自ルールに基づいた冒険に巻き込まれるのはジブリだなぁと納得はできます。他の作品が明朗快活かといえばそうでもないですから。まぁ風立ちぬほど喫煙シーンなくて良かったです(笑)
何と評して良いやら・・・
戸惑いしかないと言うのが率直な意見。様々な読み込みが出来るのはいつも通りの宮崎アニメだが肝心のもっとも表面的な物語に一貫性がない。絵的にもキャラクター的にもあちこち意識が引っ張られる。明らかに引用であってこの物語におけるキャラクタターの統一性はない。そのために混乱する。一節によると宮崎は絵コンテによる演出のみで作画はスタッフ、つまりファミリーに任せたとの報もある。宮崎なきあとのジブリのスタッフたちに君たちこの後どう生きるの?と問うているようでもある。虫プロが大混乱の中、多くの自己限界を超えたスッタフたちが一本立ちの才能を見出したのに対し、ファミリーを形成し東映動画の火を継承しようとする試みなのだろうが、果たしてここから高畑、宮崎、大塚を凌ぐ才能が生まれるのだろうか?如何に外部から優秀なスタッフを注入できるか、その手腕が問われるエポックメイクの標(しるべ)にすぎない様な気がしている。
遺言
「あばよ…友達」
あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!
おれは劇場で「地獄の黙示録」を観ていたと思ったらいつのまにか宮崎駿メドレーを観ていた…
な…何を言ってるのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…
漱石だとかガウディだとかヘミングウェイだとかルイス・キャロルだとか江戸川乱歩だとかそんなもんじゃあ断じてねえ…
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
宮崎駿が今後引退宣言をすることはないだろう。
しかし、遺言はした。
いや、宮さんのことだからまた「作りたくなったから何か作る」と言い出しそうな気がしなくもないが、年齢を考えるとこれが最後の可能性が高く、本人もそれを強く意識していたようだ。
Twitterでも誰かが書き込んでいたが、今まで僕たちが観てきたものは宮崎駿ではなく「宮崎駿の水割り」でしかなかった。「風立ちぬ」(2013)でさえ彼の中では咬ませ犬だったのだ。あの時劇場で泣いたんだぞ?どうしてくれる?
何よりもまず、宮崎駿だからこそ成立し得たし公開が許された作品で、他の人間がこれをやろうものなら総スカンは免れず、業界からも相手にされなくなるだろう。
それくらい予習が必要な作品。事前予告一切なしだが、これまでのジブリ作品+「ルパン三世 カリオストロの城」を押さえたうえで、かつ仏教を齧らないと到底ついて行けない。初めて宮崎駿を観るならばこの作品から始めるのは絶対にやめろ。
残酷な言い方をするが、これは宮崎駿にしか描けない。少なくとも吾郎には絶対無理だ。
製作者が同じである以上、モチーフが重なるのは仕方ないとはいえ、自分が今までやってきたことを振り返るような作りになっていた。気持ち「もののけ姫」と「ハウルの動く城」色が強め。
これを観たら、ジブリに関しては後戻りはできない、そんな気がした。
追伸:事前予告一切なしだったので声を聴いたりエンドロールが流れた際には劇場でどよめきが起こりました。らしいと言えばらしいのですが。
本当に大切なこと
作中のストーリー展開を気にしていては、何も始まらないと思える作品でした。亡き母のあと、新しいお母さんになる夏子さんが突然森の中へ。その夏子さんの行方と亡き母が森で待っていると言う青鷺の言葉を受けて眞人も森へ。そこは生と死が隣り合わせの異次元の世界。でも、予想もつかない出来事って人生の中でも何度も突き当たる。右に行くか左に行くか?近道するか遠回りするか?前進するか後退するか?そんな選択の連続です。時には自分の意志とは真逆の行動を取ったりすることも。明日どうなるかもわからないこの世界の中で、その瞬間瞬間の判断を誤らずに大切な物を守って行く。みんなが生きて行ける、豊かで美しい世界を造っていく為に、本当に大切な物は何なのかを見極める心を持って生きて行って欲しい。だから、君たちはどう生きるか?って問われたのかなと僕はそう受け取りました。それを作中では夏子さんやヒミ、キリコ、青鷺、ペリカン、インコ大王、ワラワラらを通してジブリ作品らしく伝えてくれている。やはり宮崎駿監督作品。素晴らしい映画でした。
コナンカリ城をピークに面白くなくなり、これが遺作か。
個人の夢想世界のルール説明だけ。
黒澤の凡作「夢」同様、物語る事を捨てたこれは失敗以前に映画でないな。
無理に暗喩を読み解き面白がる気にもなれぬのは、全く面白くないから。
コナンカリ城をピークに面白くなくなり、これが遺作か。
撮らせた鈴木敏夫が悪いのだろう。
ある意味でもっとも宮崎駿らしい作品
宮崎駿といえば冒険譚、楽しい作品!というのは宮崎駿の望んだことではない、などと書いてしまうと誤解があるのだが、宮崎駿が「売れる作品」を作ることに対して一定の歯がゆさ、もどかしさを感じていたのはよく言われるでことで、それから脱却すべくポニョや風立ちぬが生まれたのは今更言うことではない。結局、どちらもうまく行かずに監督引退宣言を繰り返すことになったわけだが、本作は本当に引退を考えての内容となっており、売れる売れないをそもそも考えていない、宮崎駿が描きたいものだけを詰め込んだ作品になっている。
言ってしまえば宮崎駿の我儘につきあわされる数時間であり、その覚悟がないとなかなか厳しい内容となっている。
だが、黒澤明から続く名監督とは総じてそういったエゴの塊であり、我儘で自分の世界に周りを巻き込むものであり、だからこそ素晴らしい作品が作れるのだと思う。スポンサーや監修の言いなりになって簡単に脚本を変えるような人物は秀作は作れても名作は作れない。
本作は宮崎駿の、そんなエゴや我儘を大スクリーンで鑑賞するものである、くらいの気持ちで挑んでもらいたい。
本当の宮崎駿ファン向け作品
宮崎駿が本当に好きな人や映像が良ければ良いって人なら星5~4、そうでない人にとっては3~2って印象。
ナウシカから千尋までのような多くの人にとって楽しめる作品ではなく人を選ぶ作品です。
まぁ映像も声優も主題歌も良くて話も大枠は分かるしハッピーエンドで完結してるのでそれなりには楽しめるのかな?とは思います。ただ意味があるだろう設定や話の展開が多数出てきて作中で説明がないのでどうしても置いてきぼりになるし所見で100%この作品を楽しめる人はいないんじゃないのかな。
監督、作りたいものは作れましたか?
1日経って冷静になって、(まだ余韻は消えませんが)改めてレビューを書き直してみました。
正直強烈な体験をしたような感覚が消えなくて、
もう一度見た方が冷静になれる気もしますが、今の時点での振り返りをしてみます。
火事の場面。すでに謎に揺さぶられて泣きそうになっている自分がいました。
母親を亡くした主人公は、父と、再婚相手と暮らすことになるのですが、
受け入れて欲しい継母はわざとらしいまでに主人公に対して母親を演じます。しかし主人公は、礼儀正しく振る舞うものの、これを受け入れられないでいます。唯一の肉親である父親も、自身の地位を過信し、新しい環境となる息子の内面までは見えていません。
家でも学校でも疎外感を感じる主人公は、自傷行為に及びます。
そんな中、主人公の心を揺さぶる存在、アオサギが登場します。よくも悪くも、序盤で主人公が自身の感情を素直にぶつけられる唯一の相手がアオサギだったように思います。
心を開けない主人公は、寝込む継母に対して冷たい態度をとってしまいます。アオサギに固執する主人公は、弓矢を作るのですが、ここで母から送られた、タイトルと同名の著書を見つけます。これを読み、何かを感じる主人公。これは本を読んでから見に来た方が良かったか。
継母が行方不明になり探しに出るのですが、この時点では、継母への心配よりも、まだアオサギへの敵対心が原動力に見えました。
継母を探すため異世界へ迷いこみます。
生きるために命を奪う世界。それは自分だけでなく、相手もそうであると知ります。
そんな中でアオサギや出会った仲間達と協力し合い、ついに継母の所へたどり着きます。
そして、はじめて親子としてお互いの心をぶつけ合います。
主人公は、自らの意志を固めていきます。
新しい母とともに帰る、と。
大叔父は、世継ぎとして主人公を求めます。少しだけ、大叔父と監督を重ねて見えた気がしました。
主人公は出会った娘が自分の母だと気づきます。娘も、自分の息子だと気づきます。
そして、この少年を生めることに喜びを感じ、自身の世界で生きることを選びます。
主人公も、友と家族と共に生きていく事を選びます。
このあたりから、なんでかわかりませんが涙が止まらなくなりました。
理不尽ばかりの世の中だけど、
それでもこの世界は生きていくに値するのだと
監督に言われているような気がしました。
振り返りながらまた泣いてしまった。
見終わった時に周りを見ると、
退屈そうな人や、困惑してる人なと様々でした。
自分も、「めっちゃ良かったよ」ていう言葉は適切ではない気がするけど、それに代わる言葉も見つかりません。
意外と、大人が見ると難解な話かもしれませんが、子供達はすんなり受け取るんじゃないかな。
と思ってみたり。
最後になるかもしれないのかな。
この時代に生きていることに感謝。
監督が作りたいものが作れてたらいいな。
駄文長文失礼しました。
最後に
どこかの映画館で、自分と同じように
夢中になって、楽しくて、ドキドキして、
そして涙した方々へ
いい映画でしたね。
ボンボン
戦争が始まって3年目のプロローグに始まり、4年目に訪れた転機からの少年の成長と変化をみせる話。
千と千尋の神隠しの主人公を男の子に置き換えて、以降の抽象的なつくりのジブリ作品をミックスした様な感じですかね…。
正直私は千と千尋の面白さもそれ程良く解らないんです…。
それにしてもやっぱり俳優として上手い人が声優として上手いかは別だと改めて実感した。
ネタバレ表記にしておいてもあまりにもなネタバレは一応避けたいのでこの程度で。
シン・宮崎駿
事前の宣伝を殆どしないことが逆説的に話題になった宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」を、7月14日の公開当日に観に行ってきました。TOHOシネマズは軒並み完売になっていたので、清水の舞台から飛び降りる覚悟で109シネマズプレミアム新宿で4千円払って鑑賞。普通の映画館の2倍の金額設定であるにも関わらず、7割ほどの客入りでした。流石は宮崎アニメですね。
内容ですが、過去の宮崎アニメの要素がてんこ盛りになった感じで、宮崎アニメファンとしては眼福とも言えるものでした。「ルパン三世カリオストロの城」をはじめ、「風の谷のナウシカ」、「となりのトトロ」、「紅の豚」、「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」、「ハウルの動く城」、「風立ちぬ」と言った過去の名作を想起させるシーンや登場人物、小道具が満載。大げさに言えば宮崎アニメとともに歩んできたと言っても良い映画鑑賞人生が走馬灯のように思い起こされ、実に胸アツでした。そういう意味で、まさに「シン・宮崎駿」とも言うべき作品だったと思います。
ただストーリーの部分となると、何を言いたいのか、これまでの作品と比べると格段に難解な感じでした。戦時中に主人公の牧真人が火事で母を亡くすことから、初めは反戦映画かと思いましたが、話が進むとそんな要素は露ほども感じらません。形式的には、舞台が日本であり、子供が異世界を冒険する物語なので、トトロとか千と千尋に近い部分があるものの、単純な冒険活劇と言い切れない観客への問いかけ=まさに題名の「君たちはどう生きるか」というメッセージ性もあり、1度観ただけでは全部消化出来なかったというのが正直な感想です。過去の作品に引き摺られたせいか、初見である程度理解できる作品だと思っていたので、その点で意外と言うか、思ったほどの満足感が得られなかったのも事実でした。まあ過去の作品は何度も繰り返し観たので、本作も観るたびに新たな発見があるかも知れません。
いずれにしても、パンフレットですら後日発売となるという異例づくめの作品だけに、現状では★4の評価としますが、今後これが変動する可能性も大いにあるかなと思います。
私(宮﨑駿)はこう生きた。さて君たちは?
第81回ゴールデン・グローブ賞作品賞受賞作。
第47回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞受賞作。
通常スクリーンで鑑賞。
吉野源三郎氏の同題小説は既読。
なんの先入観も持たず映画を観たのって初めてかもしれません。前代未聞の宣伝手法を取った本作ですが、それは情報が氾濫する現代社会にひとつの楔を打ち込んだかの如く、世間の話題をかっさらっていたのがある意味痛快でした。ネームバリューだけで客を呼ぶことが出来るすごさも痛感させられました。
監督の自伝的要素を含みながら、主人公が世の中や己自身に向き合い成長していく、結構王道なストーリーが展開。
物語の前半と後半で印象が変わり、少々散漫な印象を受けたものの、ジブリらしさ全開の独創的なファンタジーでした。
内容について詳しくは語りませんが、監督のキャリアの集大成的作品であることは間違いなく、大変面白かったです。
「私はこう生きた。さて、君たちはこれからをどう生きるんだい?」と監督から問い掛けられているような気がしました。
一時代を築いた人物だけに、その問い掛けは真に迫って来ると云うか、とてつもない重みを伴っているな、と…
つまりそれは、ひとつの時代の終わりをも意味しているわけで(おそらく本作が本当の引退作)、大変寂しい。
[余談]
最高傑作、と云うわけではないかもしれないけれど、引退宣言を撤回して本作をつくろうとしたクリエイターとしての心意気がひしひしと伝わる力作なのは間違いありません。
本当に、お疲れ様でした。そしてありがとうございます。
[追記(2023/10/05)]
本作で監督は引退されると思っていたので上記余談のようなことを書きましたが、ご本人は全く引退する気が無いらしいと云うネットの記事を読み、衰えぬ創作意欲に感服すると共にまだ新作が観られるのかと云う喜びに震えています。
※修正(2024/03/09)
どうした宮崎駿
個人的に、宮崎駿の最も優れた能力は、思想やテーマ性を作品の裏側に盛り込みつつ、きちんと質の高いエンタメ作品に仕上げる能力だと思っている。
そういった意味で、今作には少しガッカリしたというのが本音である。
今作が私小説的な側面が強い作品で、宮崎駿の仕事の総決算として作られたものである事は分かるのだが、表層にあるストーリーが容易に理解できないのは如何なものだろうか。
これまで一貫して、子供に向けて作品づくりをしている旨を語ってきた宮崎駿。最終作とみられる今作が、考察好きな大人に向けた作品のように思えるのは残念でならない。
遊園地を期待して見るとがっかりかもしれないが美術館を期待するなら大満足
タイトル通りエンタメ性には欠けるがアート性はたっぷりの作品。見る人を選びます。
ややこしい話だったので自分用のメモ。
思い出のマーニー+千と千尋の神隠し+宮崎駿の創作観 といった感じ。
母親の喪失や新しい母親を受け入れることができない拒否感、また父親への不信感、環境の変化に対する疎外感。
それらから救い出してくれる物語の数々(母親からのメッセージ付きの原題の本もその一つ。実家にあった本を読みながら、親もこれを読んでいたんだなあと感じる経験は少なくない人にあるのでは?)
塔は物語の世界そのもの。
その中に入り込んで自分と向き合い、自分のルーツを知る。世界の理不尽や循環を知る。
そうして成長する。
現実逃避のように異世界にのめり込み自分の先祖やルーツを知り、現実に向き合い直すといった構成は思い出のマーニーに既視感を感じる(宮崎駿の作品ではないが)
異世界に迷い込み世界の理不尽を知る。またその異世界のアニメーションの奇妙さや目の離せなさは千と千尋の神隠しを感じる。
喪失やそこから逃避した先にある幻想的な世界という構成は村上春樹の作品群に類似しているところもあって、個人的には好みの構成。
今回、上の単純なストーリーをややこしくさせているのは、このストーリーに重ねるようにして描かれた大叔父のエピソード。
マザコンみ溢れる主人公に宮崎駿は自身を重ねているのかと思いきや、宮崎駿自身はどちらかというと大叔父にこそ自分を重ねているよう。
ある日突然現れて自分を魅了した物語の世界。
そこにのめり込み、自分で世界を作る側になった。
数々ある物語から真に納得する悪意のない13個の積み木は自分のこれまでの作品のこと?
それが崩れて世界が壊れるのは自身の引退を意味しており、宮崎駿自身は後継者を望んでいる。
しかし主人公すら後継者にはなり得ない。ただ主人公は自分で別の積み木を見つけて持ち帰った。
我を学ぶ者は死す:自分の真似をしているようではインコやペリカンのような何も生み出せない、人を食うだけの、群れをなすだけの人間になってしまうぞ?という意味?(ここはいまいち違う解釈がありそうな気がする。)
ジブリという塔が崩れて、現実世界に戻り、そこで主人公は自分の道を生きる。
まるでシンエヴァのエンディングを見ているよう。また映画館から帰る鑑賞者自身にも重なるよう。
青鷺はおそらく青い鳥にかけているように思う。
幸福の青い鳥なんて言われているが、それは全部嘘なのでは?物語なんて虚構なのでは?
それを承知で友達になれたら良いよねって感じの。
主人公は無事友達になった。
まだまだ完全には咀嚼できないような気がします。また金曜ロードショーとかでやってたら見ます。
正直やり放題すぎて鑑賞者を置いてけぼりにしていると思います。あくまで鑑賞者ってのは黙って座っておけば楽しませてもらえるもの、なんて楽チンなものではないんだなあと痛感して、それはそれで気持ちいいですねー。
追記
・インコは人間のマネをすることから模倣者のイメージ?
・どれだけ考えてもなぜ夏子が塔に入って行ったのかを説明することは不可能に思える。あくまで主人公の動機付けとして物語を駆動するための都合の良さを感じてしまう。
・千と千尋の湯屋は、風俗やスタジオジブリ、また八百万の神を癒す場としてのイメージを融合させていた。それと同様に今回の君たち〜の塔は、物語の世界(宮崎駿のこれまでの作品群)と、現実逃避先としての居場所と、出産から死までの循環、といった複数イメージをシームレスに融合させたはっきりとした輪郭を持たない存在として出来上がっている。
これは一対一対応で教科書的にメタファーを作り上げているディズニー作品とは根本的に違う仕様。
・宮崎駿が自分自身を曝け出した結果、母親は子を産むことを最大の幸福とするべきである、とまで思わせてくる様な狂気的な女性の神格化があるように思う。昨今の映画や社会の流れに逆らっているようなキモさがあるが、これをどう評価するべきか難しいところ。フェリーニの8 1/2とかも個人的には大好きなので、キモさも全て受け入れて評価したいところだが、世界的な評価は果たしてどうなるんでしょうか?気になる
おじいちゃん謹製。良く解らない、だがソレがイイ。(ンな訳ない)
宮崎駿氏、御年82歳。満を持しての公開に際し、PVもチラシも前情報皆無で14日金曜の公開まで、まさに蓋を開けなければ何もワカラナイ状況で観賞の時を迎えました。唯一の情報はタイトル『君たちはどう生きるか』は、1937年の吉野源三郎の小説から用いたとの事で、中身とタイトルの関係性を探るテーマでしょうか。
まず作品を観て思った事は、正直あまーり良好には思えません。生命の誕生と終焉のネイチャーファンタジーと解釈でき、いわゆる宮崎駿式『はたらく細胞』とでも言いましょうか。(←※追書きに訂正あり)
ただソコは題材にしただけで、ソコが解らなくても『お話』としての理解だけで充分事足りる筈です。当然ながら「根本までシッカリ味わうべき」と創り手や取り巻きが圧力をかけるのはNG、受け手の理解と感想に委ねるべきです。
ですので、説教全開・解らない観客が悪いのだ!的な創作者エゴ丸出しの作品を、自分は全否定してます。本作品はサスガにそんなお高い作品ではないので、自分の感想はそう云う訳で★3です。
一番ダメに思ったのはダレ気味のストーリー展開、設定。主要キャラの魅力もイマイチ、一昔前の古臭さすら感じます。真人は昭和の若造風情で、ヒロイン不在?ながらも中盤登場の『火娘』は微妙‥‥
そして相変わらずの婆ぁサン好きときたら。氏が昭和の御仁だから致し方ないとしても、原作を別の作家の良好なストーリーを扱った方が良かったかも知れません。
で、氏の声優嫌いは今更ですので『丸太上等』覚悟の上です。あの父親がキムタク? キャストの発表すらなかったので鑑賞中誰が誰やらですが、ソレこそが氏の狙いで、個人的には一番受け入れがたい、偏屈の最たる部分です。
そうは言うものの、アニメーターとしての動かす力・感性の鋭さ・芸の細かさは衰え知らずで、CGではない手描きの動きの自然さ・細やかさ・キレイさの演技には魅せられます。この辺りはまだまだ一目置かれる『職人魂』で、動画だけは刮目に値すると思います。
そして随所に、ジブリ・宮崎アニメならではのカオス『ワラワラ』感が展開されるほか、趣味の飛行機ネタ・船ネタ・軍や車ネタなど。加えて脇役のスットボケキャラは絵面をヒョウキンに盛り上げています。あとチョイグロも少々。しつこくてウザい演出が1点ありましたがソレは無視します。
結局、これぞまさに『ジャパニメという文化芸術』の真骨頂と言えるでしょう。
しかしながら肝心のお話がアレ‥‥ ハードほぼ満点、ソフト赤点スレスレ、でしょうか。
(パヤオサン、アニメで実写を追求したかったのかなぁ。。。)
以下余談ですが、氏は観賞者の満足や好評を一切期待してないかも知れません。観たきゃ観れば良い、別に観なくても良い、観客の評価なんて知らん、興行成績なんかドーでも良い、世間には興味ない、なーんて斜に構えてそうな。
加えて興行作品と言う認識も薄そうで、制作に7年もかけた事から自身の哲学を可視化したに過ぎないとか。息をする様にアニメを創った、意味も理由も目的もなく本能的に、縁側で茶をすするかの如く‥‥
ソレを『鑑賞者は○○しなければならない』的な内側の圧力を感じるならば、いわゆる信者サン以外には比較的敷居が高い作品です。
年齢的に次作は期待できませんし今度こそ名実ともに完全引退かと思います。ただしその際は自身の初期の原作のアニメ化を、庵野監督に託してはいかがかと‥‥w
【追書き】他のレビュアーさんの多くに『アニメとジブリと私(駿氏自身)』の解釈があり、目からウロコが取れました。でもアニメ業界・ジブリにとってもソレは生命活動の輪廻のレールに乗ったものだと思います。
全1983件中、1701~1720件目を表示