劇場公開日 2023年7月14日

「なぜか亡父のことを思い出して涙が出た。「死」がテーマだから?」君たちはどう生きるか 山川夏子さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5なぜか亡父のことを思い出して涙が出た。「死」がテーマだから?

2024年2月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

日本アニメ界の巨匠・宮﨑駿さん。
私も10代のころから、たくさんの宮崎駿さんの作品を観ながら、大人になって、今は50代です。宮崎さんの手掛けるアニメとともに大人になって、年を重ねてきたなあという実感があります。日本は地震国で、いつどこで、自分の命が終わるか分かりません。今年は能登半島大地震が発生したり、命の大切さ、はかなさを考えさせられます。

『君たちはどう生きるか』という有名な本がありますが、私はあの本をアニメ化したのかな…程度に思っていたので、全然違う話でした。

この作品は戦時中のお話でした。冒頭の部分は、なんとなく色彩も暗めで、その暗さが『ほたるの墓』とも違う感じで(昭和20年前後はきっとこれぐらい、電灯が少なくて、灯りや光は、きっとこんな感じだったんだろうなあ)と想像できるリアルな暗さだったのが印象的でした。

子供の情操に配慮したこれまでのジブリ作品とは違って、戦争を体験した世代で80年も生きている宮﨑さんの「素」、個人的体験を反映させている作品で、子供向けではないような気がしました。

登場してくるアイテムや生き物が過去のジブリ作品を思い出せる描き方だったりは面白いのですが、謎のアイテムや生き物も多くて(なんでこれが今、ここで、コレなんだろう?これは何?)と想像しても想像が追い付きません。私が特に謎に感じたのは「インコ」ですが、宮﨑さんにとっては重要な意味を持つものなんだろうなと、深追いして考えるのはやめました。いつか意味が分かると思うし。

宮﨑さんの実体験が反映されてるストーリーというのはちらっとどこかで見たので、ジブリ作品ファンとして、宮崎さんの創作の源泉を垣間見ることを楽しむ、そこに徹して楽しむだけでもいいかなあと思いました。

映画館の外に出たら、映画館の外で公園の鳩が飛んで私の目の前に着地するのを観た瞬間、真人は私が知らない戦争中に思いつめた気持ちで生きていた少年時代の父の姿だったような気がして、ポロポロ泣いてしまいました。

私はあのアオサギ嫌いです。
でも、アオサギが救いに繋がるのかもね。

山川夏子