「そんなに深い示唆があるわけじゃない」君たちはどう生きるか 夜行さんの映画レビュー(感想・評価)
そんなに深い示唆があるわけじゃない
映像はきれいですね。画面展開もさすが。その辺はジブリ作品というところでしょうか。しかし、肝心のストーリーはというと、まずなぜこのタイトルなのかがしっくりこない。正直言ってこのタイトルは全くこの映画のストーリーとリンクしているものではなく、ただのアイテムの一つに過ぎないというのが印象。同名の原作(正確には原作ではないですが)ではもがき苦しみながら生き方を模索する主人公を描いているが、この映画ではすねた金持ちのボンボンが冒険を通して少し大人になるというもので関連性は全く見出せない。主人公が『どう生きるか』という答えを探すストーリーではなくて、自分の出自つまり『どう生まれたか』を探す謎解きがメインテーマになっているということ。また、アオサギも意味ありげだった割にはどう生きるかということに対して影響を与えているものではない。もちろんストーリーの中で重要な役割を果たしてはいるが、ロード・オブ・ザ・リングのゴラム的な役割に過ぎない。
正直なところ宮崎駿監督は、ファンタジーに徹していれば面白いものが作れるので、この映画も端からその路線で行けばよかった。なまじ最後の映画で集大成だから、後世にメッセージを残すというような大上段に振りかぶったタイトルにしたりアナウンスをしてしまったがために、逆に支離滅裂なものにしてしまった。言わんとしていることは理解できるけれど、「ふーん、そういうことね。だから?」としかならない。自分が読み取れないだけなのかもしれないけれど。映画そのものはそこそこの出来だけにもったいないの一言。
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