「心躍る映画でした。」君たちはどう生きるか 小中大吉さんの映画レビュー(感想・評価)
心躍る映画でした。
ネタバレありますのでご容赦ください。
ジブリの映画では、今まであまり取り上げられなかった母親への恋慕と女性への目覚めを少年を通して描かれていたと思いました。
なんと言っても今までのジブリに無い艶っぽいキャラクターが今回のヒロイン?のポジションに存在感満々で描かれています。
そこにまず心躍る人は多かったかもです。
でも、少年も観客もその性的存在感に気がつかないと言う演出や構成がされている。
だから、わかりにくい。
宮崎さんは、自分の母への想いや性的な表現があからさまにバレる事を恥ずかしく思っていたと思います。だから今まで取り上げてこなかった。
今回そこに挑戦したように思います。
だから、いろいろ心ざわつくのに、心躍るのにそれがどこから来るのか見た人はよくわからない。そこが86才の巨匠の狙いだった。
人間の生きる動機は、ラブとエロなんですね。それが同化しているのが人間です。
でも自我を優先すると必ず軋轢が起きる。想いは叶わない。死別もあれば失恋もある。望まない出会いや邪な欲望も起きる。
それが国レベルになると、発展や成長にもなり、戦争や抑圧にも拡大する。
なんと、個人も人類も罪深い存在である事をジブリ映画は、破壊と再生、喪失と希望を織り交ぜて表現してきました。
でもその根源的な、欲望の中心にある、性的な自我を描く事を避けて来た。
そこを、少年にも気づかれず、観客にも気づかれず、この作品で描いてしまった宮崎駿のエネルギーはどこから来るのだろうかと驚きます。
二人の女性と少年で、恋心から世界の誕生まで描いてしまうのには恐れいりました。
さらに、欲望を昇華して、成長や生産に向かうとはどういう事なのかも、語っています。でもそこをわかりやすくすると、説教じみてしまうので、そこも選択枝で表現されているのでわかりにくい。
見て、よくわからないけど、こころざわついた方は、宮崎駿の術中にハマったと言うところです。