「次に観たときに何を感じるだろう」君たちはどう生きるか くーさんの映画レビュー(感想・評価)
次に観たときに何を感じるだろう
ジブリ作品が好きで、宮崎駿監督最後の作品になるのか?と思い期待して鑑賞。
義母となる人がいきなり「弟か妹よ」と自分の腹に触らせるのに嫌悪感を持ってしまい、その感覚に左右されて純粋に作品にのめり込まなかった気がし、他の方のレビューを見て、深く味わわないまま観終えてしまったようで、もったいないことしたのかなと思った。
なんとなく、ジブリならではの美しい景色や、希望が持てるストーリーを期待してしまっていた。
花や空、草原、水面、そういうきれいなものを観て、さすが集大成と思いたかった。
でも、宮崎駿が描きたいのはアレだったのだ。
戦争を経験した人にとって戦争は、何十年経とうと、一生涯刻み込まれた強烈なネガティブでしかない出来事なんだなと改めて思わされた。
過去の作品も、初見では良さがわからずに「絵は綺麗だったけど…」と思って、2回目3回目にこんな良い話だったのかと思えたことがあったから、この作品もそうなるのかな。
同名小説は題を借りただけ、だと思ってたからまさか登場するとは思ってなくて、もう一度読みたいと思った。
わらわら、かわいいんだけど、もののけ姫のこだまみたいにオリジナリティーが感じられたらよかったのにと思ったが、生命のもとと考えたらあれくらいシンプルなかたちになるのかな。
声優さんが誰一人違和感感じず観られたのが良かった。
木村拓哉さんと小林薫さん以外は誰だかわからず、エンドロールを楽しみに見た。
火野正平さんは誰の声だったんだろう?大叔父さん?
宮崎駿監督作品でなければ、つまんなかったよくわからなかったと決めつけて、二度と観ないんだろうから、そういう意味でも、これまで宮崎駿監督が作り上げてきたもののすごさを感じる。
あの眞人と夏子さんの出会いの場面は、その前の父親の「そっくりだろ?」みたいな発言の後で、追い打ちをかけるような残酷な印象を受けますよね。母親を失った眞人の気持ちに共感してそこまで観てきたら、かなり嫌悪感を持つし、それも計算されているシーンだと思います。でも今回の映画はきちんと父や夏子さんの人間としての姿も描かれていたと私は感じたので、あの夏子さんの言動はむしろ勇敢な人に映りました。まだ自分の子育ても経験していない(しかもこれから始まろうとしている)若い女性が、姉の忘れ形見とも言える多感な年頃の少年の母親になる、それがどんなに不安でしんどいか、私も子を持つ母親として想像した時、「あなたの新しいお母さんよ」と宣言する彼女は宮崎ヒロインぐらい勇敢かも(笑)でも、今回は人が描かれているので、悪阻のしんどさに様々なプレッシャーが重なり、見舞いに来た眞人に「お姉さんに申し訳がない」という発言になり(ここで「姉への義理で預かる子供」という少し逃げ腰な本音を覗かせていることが意味深いし、だからこそあの魂の世界に夏子さんが行かなくてはならなくなっていることを啓示しているように思う)、そして、助けに来た眞人をはっきり拒絶するシーンへとつながる。夏子さんの魂はきちんと自分のしんどさに向き合うことを求めたのであり、あそこで夏子さんが簡単に受け入れてハッピーエンドとなるなら、この作品は、大変安直なお話になることでしょう。父親が眞人を取り戻そうとやってきているのをわざわざ扉を開けて眞人が目撃するシーンにもとても意味があるし、魚のお腹をさばくのも、ヒミの作った物をお腹いっぱい食べるのも、「あなたはいい子」とヒミに抱きしめられるのも、込められている意味や暗示がよくわかるので、普通に感動しました。夏子という人の成長物語も汲み取れるところがあの2時間で描かれているあたりはさすがだと思います。でも、親切に解説してくれているような映画ではないから、何度も観て感じることも多いのではないでしょうか?私も一度ではわからなかったことがあるかと思います。