「なんこれ?」君たちはどう生きるか トロントさんの映画レビュー(感想・評価)
なんこれ?
「風立ちぬ」以来10年ぶりの宮崎駿監督最新作。正直「風立ちぬ」自体がだいぶ私に合わなかったため今回もあまり期待はしていなかったが、逆の意味で想像を超えてきた。まじで意味が分からない。
映画冒頭は作画がすごく、宮崎駿気合入ってんなーと少し期待したが、そこからは退屈な日常パートが体感1時間弱続く。意外と普通で拍子抜けだなと思っていたら後半からは怒涛のワニワニパニック。伏線をばらまきつつ整合性の取れないストーリーを展開し、最終的にほとんどの伏線を回収することなくおわり。
ぽけーっとした状態のままシアターを出てしばらくして我に返り、すぐにネットで解説を漁った。あれは宮崎駿の人生で、墓の主は宮崎駿自身で「我を学ぶものは死す」みたいなやつの意味は私を真似てアニメを作るのは失敗するぞって意味だ。13個の積み木は今まで彼が作ってきた作品で誰かに引き継いでほしいけどいない。ジブリ(石の世界?)はここで終わりって意味だ。みたいな解説を見て、なるほどあれは宮崎駿の内面を描いた映画なのか、と自分の中で何となく理解は出来た。でもそんなの映画にして観客に見せちゃいかんでしょ。そういう「このシーンにはストーリーにおける意味とは別にこういう別の意味があって~」みたいなのは元のストーリーがちゃんと成り立っているからこそ成立するのであって、元のストーリーぐちゃぐちゃにして自分の内面を映像にしてペタペタつなぎ合わせていったのを映画と呼んでいいの?なんかこの映画はアートだから感じるんだ!みたいな意見もあるけど、アートなら映画館じゃなくて美術館でやってもらわなきゃ。
映画はジャンルはなんであれその究極の目的は人を楽しませること、つまりエンタメにあるはずだ。私はそう思う。今回の映画を作るにあたって監督はそのことを少しでも考えて作ったのだろうか。なんとなく今回の映画の意味が分かったうえでも、これは監督の自己満足のために作られた映画としか思えない。肯定的な意見を述べている人も、この映画をジブリや宮崎駿監督と切り離して、単純に一つの映画として見せても(絵的に即バレだろうけど)同じ感想を抱くのだろうか。とても気になる。どんなにその映画に含意されている内容、メッセージが素晴らしいと言っても、映画自体が面白くなかったらそれは駄作だろう。少なくとも本作は映画館で大勢の人に見てもらう映画ではない。
期待していなかったと言いつつも、やはりジブリには大好きで思い入れのある作品も多い分、やはり心の底では楽しみにしている気持ちもが自分の中では強く、久しぶりにジブリ映画を映画館で見れた満足感はあった。それだけに私的には本作の出来は非常に残念だった。