「衒学と人間讃歌の元、スタジオジブリはどう生きるか」君たちはどう生きるか 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
衒学と人間讃歌の元、スタジオジブリはどう生きるか
何かと話題の宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」を観てきました。
宮崎駿監督の作品としては約10年ぶり。スタジオジブリとしては約2年ぶりの新作で事前のセールスプロモーションを全くやらない。事前情報も無しと言う前代未聞のプロモーションが逆に話題となっていましたが公開から作品の内容に対しても賛否両論。
その真偽と言うか意見も観ないと分からないとあって、鑑賞をした訳ですが、で、感想はと言うと…個人的な一意見ですが、面白く無い訳ではないが、面白い訳でないw
一言言えば複雑だし、必要以上に難しくこねくりまわしている感がある。
ジャンルとしては冒険活劇ファンタジーらしいけど、正直それだけでは括れない難解さがあると思うし、また説明が不十分な点が多く、哲学的と言うか文学的な側面がある。
吉野源三郎原作で1937年発表の「君たちはどう生きるか」に感銘を受け、直接の原作ではなく、タイトルとして引用されているらしいが観る限りにはやはりその影響は多分にあると思う。
観る側の器量を試されるというか、実験的な作りは嫌いでは無いんですが、まあジブリっぽくはないんですよね。
長年ジブリ作品を観てきた者にすれば老若男女が楽しめる、ある程度明快な作品がジブリの信条かなと思うんですが、人間讃歌と言うテーマは変わっていないと思います。ただいろんな部分が挑戦的で観る側に突き詰めると言う感じ。
その兆候は「風立ちぬ」で庵野秀明監督を主人公の声優に起用された時にもあった訳ですが今回はもう全部がそうなっていて“どうしたこうなった?”と言うよりも”うるせえ〜どうせもう何作も作らないし作れないんだから、たまには好き勝手に作らせろ!”と言う開き直りな感じなんですよねw
いろんな不足点を埋めるように観る側の思考が錯誤するんですが、これって庵野監督が得意とする手法で「エヴァ:Q」でも観られた「衒学」(げんがく)かなと。
衒学とは知識がある事を自慢する事であり、知ったかぶりという言葉が一番近い。
何か裏がありそうな雰囲気を出すための演出であっても実際に裏は存在せず、観る側に衒学を漂わせると言うか。
まあ「お金を出して観る人が好き勝手に解釈していいよ」と言う答えだと思うし、だからこそ一切のプロモーションをしないのがプロモーションとなっている訳ですが、事前のプロモーションをやらないのは今までのジブリブランドがあればこそな訳で、これが普通の作品ならもう大爆死ですよw
作品としては「千と千尋の神隠し」「もののけ姫」「ハウルの動く城」的な感じもあり、今までのジブリ作品のセルフオマージュも多分にありなので観る側にいろんな問い掛けが仕掛けられている。
かと言って今までのジブリ作品のイメージで思い込むと手痛い目に合うので、一切のイメージを捨てて、全くの新作で観るのが正解かと。
それでもなかなか難解な作品ですが、声優キャストは結構ツボにハマるキャスティングでアオサギ役の菅田将暉さん。ヒミ役のあいみょん。ばあやのキリコ役の柴咲コウさんはかなり上手い。特に菅田将暉さんは熱演です。
宮崎駿監督は今後作品を作るのかは不明ですが年齢的な事を考えるとかなり難しく、スタジオジブリとしても新作が出来るのかは不明。2014年公開の「思い出のマーニー」で映画制作部門を解体し、一度アニメ制作から撤退しているので主要スタッフが抜けている分、「無為自然」的な流れになっている。
勿論、ジブリ作品が新しく作られるのは嬉しいし、勿論観に行こうとは思う。
だけど、ある程度のイメージの構築は仕方ない分、スカされた感は残念ではあります。
宮崎駿=スタジオジブリのイメージから結局脱却しきれなかったのは今更言っても仕方ないけど、スタジオジブリのブランドはやはり残して欲しいかなと。
もし、もう一回だけ作ると言うのであれば…庵野秀明監督で「風の谷のナウシカ」の続品を作るのであれば、個人的にはもう大歓迎ですw
大吉さん
コメント有難うございます。
ナウシカは続編の話が定期的に出ますが、宮崎駿監督は多分出来ないしやらないと思うので、かなり飛び技ですが庵野監督はワンチャンあるかもですし、やれば観たいですよね。
こういう事をワチャワチャ言うのって飲み屋トークみたいで面白いです。
また、お時間がありましたら、覗きに来てくださいね♪