「ソフト部分のチャレンジを期待していた…」君たちはどう生きるか tkさんの映画レビュー(感想・評価)
ソフト部分のチャレンジを期待していた…
7/14初日に都内で鑑賞、劇場の席は9割ほど埋まっていました。
今ネット上で様々な人達が書いている「意味分からない」「難しい」「エンタメではない」「本当に宮崎駿の作品?」「様々な考察」「言語化出来ないけどスゴイ」「これぞジブリ!」「圧巻のアニメーション!」「宮崎駿の原液」などなどどれもこの作品から人が受け得る感想・感情・印象の1つとして理解できる気がします。でも「クソ映画」「神映画」はどちらも当てはまらない気がします。この映画がクソならもはや表現方法が存在しないほど酷い映画はもっとあるしこの映画が神ならもはや表現方法が存在しないほど素晴らしい映画ももっとあります。
私がこの映画を観て感じたのは「またこれか…」です。
ゲームで言うならオープンワールドで明確なストーリー無し、自分で目的や解釈や楽しみ自体を見出し、その方法も結論もどれが正解・間違いなどなく、自分の中で味わい尽くせる形にできれば良いようなゲームです。私は映画でもこのタイプが大好きです。
でも…ジブリが宮崎駿がまさか今更この方向性で映画を一本作るとは思っていませんでした。。。ジブリなら宮崎駿ならアニメ映画界の次の新たなムーブを起こしてくれると期待してました。既存フォーマットの使い回しではなくまだ誰も経験したことない世界を体験させてくれると期待してました。10年ぶりの満を持しての新作ということもあって勝手にそのような期待を持ってしまっていました。ところが蓋を開けてみたらなんと既に出来上がっているセオリーに沿った小さめにまとまった思ったより優等生な作品でした。
もう古今の国内外の様々な監督の作品でこのジャンルがハマる人にはとことんハマるということは証明されている気がします。日本国内のアニメ映画なら庵野秀明がまさにこれを最大限活用してエヴァを巨大コンテンツまで育てましたし、押井守にとっては最も得意とする手法ではないでしょうか。しかしそれをあえて今、ジブリが宮崎駿がやることだったのか…。
なので「またこれか…」と感じてしまいました。
マーケティングに関しては新しいことへのチャレンジに感動しました。
宣伝無しの戦略です。世の中からの大きな期待がかかっている中、大きなプレッシャーの中、まだ世の中に多くの実績や正しいやり方が用意されていない手法に大きなリスクを抱え果敢にチャレンジしたことと、そしてこれを結果に結び付けたことに本当に感動しました。
この実績は今後の映画業界の形を変える可能性を秘めているとさえ感じます。今後この事例はビジネスの世界でも多くの方が参考にされ口にされることと思います。
マーケティング部分だけではなくコンテンツ・ソフトの部分でもこういった真の大きなチャレンジをしてほしかったものです…だって誰でもない宮崎駿ですよ?!それを期待していました。
最後に。もう多くの方が書かれていることではありますが念のためこの作品の特徴を書いてみます。
・単純明快な最大公約数の客が楽しめるタイプの作品ではない
・小さなお子さんには良くわからない可能性が高いかもしれない
・受動的な体験を期待している方にはちんぷんかんぷんな作品になるかもしれない
次回作も楽しみにしています!
**7/21追記**
書き忘れたので追記します。
私は絵と動きと色とカットと人・人以外を含めた生物の造形などに宮崎駿の魅力をあまり感じませんでした。宮崎駿のユニークなものではなくやはりこれも今世の中に溢れているアニメの一般的なフォーマットに近いものを感じました。
今作ではこれまでの宮崎駿作品と違い宮崎駿は絵コンテに集中し作画は作画監督に委ねたといった書き込みをネットで見かけました。この情報の真偽は分かりませんが適切な情報であるならそれに起因したものかもしれないと思っています。これまではアニメ制作の多くのパートに宮崎駿が監督として介入していたが今回はこの範囲を狭めたのかもしれないと、これは完全に私の妄想ではありますが、感じました。
とは言えアニメーションのクオリティは平均を大きく超えていると感じます。どんな観点であれこのアニメーション部分に何かしらの文句を付けるのは贅沢過ぎる素晴らしい品質であることは付け加えておきたいです。