「宮崎駿の天邪鬼加減。」君たちはどう生きるか 侍味さんの映画レビュー(感想・評価)
宮崎駿の天邪鬼加減。
途中で登場する白いふわふわした生物の存在は個人的にまっくろくろすけやコダマに続くゆるふわキャラのつもりだったのでしょうが、僕は毎回この媚びてくるストーリーに大して重要性の無いキャラクターが苦手でそこはマイナス評価です。
それ以外、ジブリスタジオを解散して物理的に作品を作れなくして筆を折ったはずの宮崎駿の久々の復活。
映画としてはウェルメイドに仕上がっており、解散したスタッフも何人かは戻ってこられた?のかいつものジブリクオリティになっていたのは流石としかいえないと思います。
劇伴も円熟味を増す久石譲が新しい風を吹き込もうと良い音楽で呼応してくれています。
久々にジブリ作品を観たなと言う感想。
ストーリー自体は他で言われている様にスケールが小さく思えます。が、少年がトラウマを克服して新しい人生に踏み込むという主人公目線で見れば激動の一日であったのであろう事も想像できるかと思います。
この映画を観ながら、ふと思い出したのがテリー・ギリアムのバンデットQ。
11歳の少年が不思議な世界に紛れ込み…と言う流れが似ていて、描き方のタッチの差はあれど僕は2つの作品に似た何かを感じました。
どちらもその世界の創造主が出てきます。
バンデットQは最後のオチが強烈ですが。
今作、での僕なりの評価ポイントがラストの扉の選択での母親との別れ。
実にあっさり描かれていて、それだけに母親の愛情の深さを感じる事が出来、続く過ごした屋敷との別れのシーンも余韻が心地良い。
ストーリーテラーとしての宮崎駿なりの天邪鬼加減も堪能しつつ、今の日本のアニメ産業の技を集結し、これだけの作品を作り上げたと言う事実は素晴らしいと思います。
PS.この映画を一緒に鑑賞する約束をしていた女性とバレンタインデー1週間後に別れてしまい、僕はどう生きるのか今だに模索中です。