「この映画をどうみるべきか」君たちはどう生きるか 猿田猿太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
この映画をどうみるべきか
一切の宣伝もせず情報封鎖されていたのは、とても良かったと思う。
果たしてどんな映画なのか。導入で、リアリズムのある空襲の激しいシーンから始まり、果たしてこの映画は、高畑勲監督の火垂るの墓よろしく、戦時中のリアリズムのあるリアルなドラマへ展開するのか、宮崎駿監督ならではのファンタジーへと突入するのか。
ファンタジーかと思いきや、「はい、夢でした」と目覚める主人公。でも、現実であったというサインをチラチラ。映画「コンタクト」にあったような幻覚とも言い切れないような顛末にするのだろうか。そんな微妙なラインを歩いて行くかのような展開だからこそ、どこぞの解説者のコメントを聞かずに鑑賞出来たのはとても良かったと思う。
ファンタジーといっても色々あるのですが、作中に同じタイトル「君たちはどう生きるべきか」という本を読むシーンがあっただけに、子供の頃に読んだ本に出てきたような、なんだか懐かしさを感じるファンタジーでした。
実の母親と死に別れ、新しい継母と出会い、妊婦のお腹を通して新しい兄弟と出会い、新しい生活空間、新しい学校で新しい級友からイジメにあい、それでも頑なに表情を崩さない主人公。
いやいや、その心中は千々に乱れているはず。その鬱屈が爆発したのが自ら作った眉間の傷。そんな主人公の思いを解きほぐしたのが母の残した本から広がるファンタジーの世界。そんな理解で良いのでしょうか。現実か夢の世界かは判らないけど、ラストで大人びた主人公へと繋がる冒険譚であったのかと解釈します。
それにしても、木村拓哉さんのお声がハウルに比べて重みを増しましたね。好演でした。米津玄師さんのエンディングテーマも素晴らしかった。いつもながら、宮崎駿監督の歌選びも楽しみの一つです。