「みんなの祖父の想いのアトリエ」君たちはどう生きるか コイのぼりさんの映画レビュー(感想・評価)
みんなの祖父の想いのアトリエ
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小学生の頃、渋谷パンテオンに同級生たちと
「魔女の宅急便」を観に行った日のことを覚えている。
シネコンの無い時代、立ち見の出る満員の劇場で
壁にもたれるように背伸びをしながら。
キキの一挙手一投足を沢山の人たちが見つめる様子が印象的だった。
深く濃い緑が描写する日本の風景。
眞人がまぶたを開く様子、走る姿、眠る姿。
ひとつ一つに見覚えがあって、懐かしい生命感が宿っている。
そこにアシタカやナウシカ、キキやメイが息づいているのを感じた。
前半は「失う予感」に満ち、今までに無い
ホラー映画的な緊張感と死の臭いがする。
後半からは、日本ながらの風景に加え、
色鮮やかな「動く西洋絵画」の世界が広がる。
走馬灯のような物語りに
人ひとりが生きてきた時代、思い描いた理想、
現実を生きる上で助けとなる想像の世界、
そして、後悔とバトンが映し出される。
小津監督のようでもあり、黒澤監督のようでもあり、
そのどれとも異なる宮崎監督の私小説を観る映画。
美しくザラザラとしていて、禍々しく儚い。
夏休み。
たくさんの絵が並び、画材と古い木材の臭いがする
祖父のアトリエを訪れたような映画だった。
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