「西洋絵画的」君たちはどう生きるか キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
西洋絵画的
予約初期の時点ではガラガラだったが、当日はさすがにほぼ満席。
上映開始と同時に、場内のどこかで「ビポ」というスマホ特有の電子音が。
(…誰か、動画撮ってやがる。)
そんな嫌な気分で鑑賞スタート。
噂のあった、声のキャストに関する以外は事前情報がほぼ無いということで、まず「どのジャンルの映画なのか」が分からないと、どう観て良いかも分からない。
冒頭の数分は、これまであまり見なかった動画表現を含んでいて「お!」と目を引かれた分、こういった戦時を描いた人間ドラマかと思わせておいて、時間をずらして少しずつファンタジーであることが提示されていく。
動画も目を見張ったのは結局この冒頭のみ。
セルフオマージュってことではないんだろうけど、いわゆる「宮崎アニメ的なアレコレ」が満載で、過去作を思い出すシーンは多い。
ただ、身も蓋もなく言えば、『千と千尋の…』以降の「結局さぁ…何なの?」という一連の宮崎ファンタジーに新たな一作が加わったという感じ。
「分からない」にも程度があるけど、本作はかなり早い段階から「何のために何をしているか」「誰が何をしたいか」「どうしたらどうなるのか」がほとんど分からないまま話が進んでいく。
宮崎さんの頭の中、夢の中を覗き見る感じ、っていうのが一番ピッタリかも。
それでも最後まで観れてしまうのはやはり宮崎アニメってことなんだろうけど。
それはやっぱり「絵」の力なんだろう。
前作の『風立ちぬ』でも多少そんな感じはあったけど、今回はいわゆる「絵画的」な表現がすごく多かった様に感じた。
印象派を中心とするヨーロッパの名画をイメージさせる構図が散見された気がする。
あと、このエンディング曲…要る?
歌詞もメロディもビンと来なかった。
結果、宮崎アニメだから我々ファンはいろいろ積極的に読み取ろうとしてるけど、そうでなかったら多分「ワケの分からないファンタジー」ってだけで終わってると思う。
そういう「観客に依存する」作品はやはり評価できないなぁ。
ということで★は3つ。
でも、80歳を越えたお年で、これだけのエネルギーと感情と生命力を感じるアニメ作品を生み出すっていう力には心から敬意を表したい。