「【”お前の手で、争いのない世を作れ。と大叔父は僕に言った。”不寛容で争いの絶えない現代社会に宮崎監督が問いかけた尊崇なメッセージが琴線に響く。ジブリの思想の集大成的な作品であると思った作品でもある。】」君たちはどう生きるか NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”お前の手で、争いのない世を作れ。と大叔父は僕に言った。”不寛容で争いの絶えない現代社会に宮崎監督が問いかけた尊崇なメッセージが琴線に響く。ジブリの思想の集大成的な作品であると思った作品でもある。】
■今作の主人公、マヒトは第二次世界大戦中に病院勤務していた母を失う。
そして、一年後母の妹と父が結ばれたのを機に、父の軍需工場がある田舎の
豪邸に引っ越す。そこには、母とそっくりの夏子が待っていた。
だが、マヒトは夏子を母と認める事には抵抗があるようだし、学校でも級友から”軍需工場”の金持の子とみなされているのか、疎外感を抱えている。
マヒトは、故に常にキッとした顔を崩さないが笑顔はない。
◆感想
・序盤は「風立ちぬ」の風合を感じさせつつ、田舎の豪邸に仕えるお婆さん達(含む、老いた”キリコ”)の表情は「ハウルの動く城」の荒れ地の魔女を思い出させる。
更に、アオサギやオウムたちとの絡みのシーンは宮崎監督の初期ファンタジックな作品群が脳裏を過るのである。
・今作は、マヒトが且つては頭が良く大量の読書をしていた大叔父が、世界の均衡を保つために空から落ちて来た”塔”の内部にある異世界で、若き”キリコ”や”ヒミ”と出会う辺りからシーンの切り替えが早くなり、時間軸も1944年ではないためやや戸惑うが、キチンと観ていれば混乱する事は無い。
・マヒトはある日忽然と消えた夏子を探すために、異世界に入り込み様々な経験をする。
それは”キリコ”と小舟で海に出て魚を取り、二人で捌いたり、人語を喋るアオサギに、自分で作ったアオサギの羽で作った弓矢を射て、アオサギの嘴に穴を開けたりする。
ー 私はこの一連のシーンから、過去の宮崎監督の諸作品を思い出したし、マヒトの成長譚であり、彼が世界の不条理、悪意を知って行く過程であろうと思いながら、観賞した。-
・マヒトは”キリコ””ヒミ”そして仲違いの溶けたアオサギの協力の元、妊娠した夏子が石に囲まれた産屋で臥せっている所を見つけ、初めて夏子を”母”と呼ぶが、マヒトが産屋に入ったこと自体が禁忌を犯した事とみなされ、”オウムの王”が率いるオウムたちに執拗に狙われる。
ー 産屋のシーン等は、”穢れ”を連想させるし、マヒトが自ら頭を傷つけ血を流した行為との関係性も脳裏に浮かぶ。ー
■マヒトは”オウムの王”が追う中、世界の均衡を保って来た大叔父と異世界で出会う。
大叔父はマヒトに、”自分の跡継ぎにならないか。”と問うが、マヒトはそれを拒否する。
大叔父は、
”お前の手で、争いのない世を作れ。”
と言い、マヒトと”キリコ”は1944年に戻り、自分の母である事が明らかになった”ヒミ”もマヒトを抱きしめた後に、元の世界に別の窓から戻る。
ー 大叔父が、□〇▽の”石”で辛うじて世界の均衡を保っていた事は、観ていて容易に分かる。だが、それを支えきれなくなっていたので、第二次世界大戦が勃発したのであろう。-
<今作は、一人の孤独なる少年が異世界で経験した数々の事により、世の不条理を学びつつ成長していく姿を描いた作品である。
元の世界に戻ったマヒトは、赤ちゃんを無事出産した夏子と父と共に”世界の不条理、悪意と対峙し、争いの無い世を作って行くのだろう。”と思いながら劇場を後にした。
今作は宮崎監督の集大成的な位置づけとして観ても良いし、現況下の世界の状況を鑑みながら観るのも良い、多様な見方を許容する作品であると思う。>
■追記 2023年7月17日
多くの方が今作に対して”分からない”という視点で困惑したレビューを上げられていますが、レビューを上げていない方から多くの共感を戴いている事に対し、感謝申し上げます。
今作は拙レビューにも記載した通り、多様な観方が出来る作品であり、尚且つ宮崎監督が現況下の世界情勢に警句を発した作品であると、私は思います。
更に言えば、宮崎監督の作品は常に、自然の類稀なる描写の中で、人間の善性を表した作品でありました。
私は、今作はその点についてはブレが無い作品だと思っています。
こんにちは。遅ればせながら「バービー」と本作観てきました。NOBUさんのレビュー通り、ブレのない宮崎作品と私も思いました。
細かなところにとらわれず本筋を見てれば、とてもわかりやすい作品だと思います。絵もとても綺麗でした。
インコ大王は人を殺して食べる悪意ある生き物です。そのような者が世界を牛耳っています。それを教えてくれています。
「悪意ある石」と言うキーワードが何度も映画の中で語られています。コレを読み解け無いと本質を理解するのは不可能でしょうね。
どこかのオタクさんがyoutubeで言っていましたが、この映画はアートを楽しむ映画だと言われてました。私はその言葉がしっくりきました。
宮崎さんの頭の中をちょっと覗かしてもらったような。
そのオリジナリティは脱帽です。👏
おはようございます。
〝不寛容で争いの絶えない現代社会への問いかけ〟〝人間の善性〟…
ブレの無い監督に対し真摯に受け止め敬意をきっちりと言葉にされるNOBUさんのレビューもいつも本当にブレがなく真っ直ぐにささります。梅雨からずっと「ど暑い!!」今年の夏、まだまだ観たい作品に追いついていないのですが、これは観れてよかった素晴らしい作品でした。
共感&コメントありがとうございます。
レビューを投稿していない方から共感してもらえるのは、
レビューとしてノブさんのレビューが素晴らしいという証だと思います。自信を持って良いことだと思います。
私のレビューを評価して頂き、ありがとうございます。
宮崎駿監督、スタジオジブリの意向を最大尊重して、作品内容はアウトラインのみに留め、事前情報ゼロの映画観賞、本作で宮崎駿監督が我々観客に何を伝えたいのかを主体にレビューを作成してみました。
では、また共感作で。
ー以上ー
こんばんは~
平日にも関わらず鑑賞客多かったですね!やはり駿ファン多いな!って私も感じました。
本作は私個人的には刺さらなかったけどNOBUさんのきっちり書かれたレビューは刺さってますよ!
明日も早いんで寝ます~
お疲れ様です🙇